ビジョン、自制心、情熱そして良心【第2回 リーダーシップ「第8の習慣(R)」~いま、求められるリーダーシップとは?】

第2回 ビジョン、自制心、情熱そして良心

全人格的パラダイム

人は誰でも、知性、肉体、情緒、精神という4つの側面を持っていることは前回で述べましたが、それぞれの側面について次のような深いニーズを持っています。

知性:学ぶこと、 肉体:生きること、 情緒:愛すること、 精神:貢献すること、



まずは、このような人間に対するパラダイム(全人格的パラダイム)を理解することが重要です。
全人格型パラダイムとは、『すべての側面においてこの4つの深いニーズを持つ存在』として見るということです。

例えば、ごく機械的で単純な仕事だけしか与えられなかったら、「学ぶこと」という知性面でのニーズが満たされることはないでしょう。また、約束通りの給与が払われていないとすれば、これはこの人の「生きること」という肉体的なニーズを満たしていないことになります。好きではない仕事を権力だけで強要されているのなら、この人はその仕事に対して「愛すること」という情緒的なニーズを満たすことはないでしょう。与えられた仕事が明らかにコンプライアンスに反している部分があったとしたら、「貢献する」という精神面でのニーズを満たすこともありません。

このように、人が何かに取り組むときに、4つの側面やそれに対応した4つのニーズのうちどれが欠けても、心からコミットしたり、情熱を持って取り組んだりすることは望めません。
逆にいえば、リーダーであるあなたは、チームメンバー全員の4つのニーズを満たすことで、彼らの才能を最大限に発揮させることができるようになるのです。

4つの属性-ビジョン、自制心、情熱、良心

また、4つの側面に対応した各インテリジェンスを別の形で表現すると、次の4つの属性になります。

知的インテリジェンスからは、人の持つ想像力を発揮することよる「ビジョン」が、自己管理が必要とされる肉体的インテリジェンスからは「自制心」が、情緒的インテリジェンスからは人間関係における深い相互理解によって「情熱」が育ち、そして精神的インテリジェンスという心からの声によって「良心」が育まれます。

「ビジョン」とは
人、仕事・プロジェクト、目的、大義などの中で、何ができるかという可能性を知性の目で見極めることです。知性によって周囲が望むニーズと自分たちが持つ可能性を結びつけると、そこにビジョンが生まれます。


「自制心」とは
目的のために自分の感情や欲望を抑えることであり、ビジョンを実現するために犠牲を払うことを意味します。目の前の現実を見つめ、厳しくて複雑な問題に真正面から取り組み、労を惜しまずに取り組むことです。


「情熱」とは
内面の炎であり欲求であり、確信に基づく力です。そしてビジョンを実現するために自制心を維持させてくれる原動力です。自分が持つニーズと持って生まれた才能が出会うと、そこに情熱が生まれます。


「良心」とは
何が正しく何が正しくないかを知る本質的な道徳観念のことです。それは意味あるものへ、そして貢献へと人を駆り立てます。



「ビジョン」、「自制心」、「情熱」が、「良心」に導かれていない場合は、リーダーシップは永続せず、そのリーダーシップによって生み出された制度なども長続きはしません。つまり道徳的権威のない形式的権威は挫折するのです。

ヒトラーはビジョンも自制心も情熱も持ち合わせていましたが、エゴに駆り立てられており、良心が欠けていたことが彼の敗因でした。一方、ガンジーのビジョン、自制心、そして情熱は良心に突き動かされていました。したがって、大義に身を捧げることができ、インドの人々に奉仕することができたのです。ガンジーは形式的権威(公的な地位など)を持ちませんでしたが、道徳的権威があり、世界で2番目に大きな国家の建国の父となりました。

「ビジョン」、「自制心」、そして「情熱」が「良心」のもとで発揮されるとき、永続的なリーダーシップが可能となり、良き変革をもたらすことができるのです。



※「第8の習慣」「7つの習慣」等は、フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社の登録商標です。