ボイスとは【第1回 リーダーシップ「第8の習慣(R)」~いま、求められるリーダーシップとは?】
第1回 ボイスとは
その人にしか果たすことができない「意義ある貢献」
この「人を奮起させる」の「人」とはチームのメンバー全員のことで、すべての人がボイスを表現する必要があるということです。そしてそれは、メンバーのボイスを発見するように導く前に、リーダー個人として、自らのボイスを発見する必要があるということでもあります。
では、その「ボイス」とは、どのようなものでしょうか?
ボイスについて、コヴィー博士は、「個としてのかけがえのない意義の現れ」と語っています。
つまり、『周囲の人々一人ひとりの異なるニーズを理解し、それに対して行う、その人にしか果たすことができない「意義ある貢献」』のことを、「ボイス」と言っているのです。
あなたの才能を生かし、情熱に火をつけてくれるような仕事に取り組むとき、しかもその仕事が、あなたの周囲の人を含めた社会のニーズに応えることができ、そしてその仕事を成し遂げることがあなたの良心にかなうとき、そこにあなたの使命、魂の規範とも言える「ボイス」が響いています。
私たちは誰でも、人生の中で自分のボイスを見出したいと心の底では願っています。
それは言葉にできないほど強い切望です。
具体的に例を挙げてみましょう。
貧しい人々に無担保小額融資(マイクロクレジット)を行って自立を支援する銀行のグラミン銀行を創設したバングラディッシュの経済学者ムハマド・ユヌス氏の場合、竹製品を作っている貧しい女性の話を直接聞いたことがきっかけでした。材料の仕入れ費用のわずかな代金が都合つけられず、お金を借りた代償として業者に言いなりの安い価格で作った竹製品を卸さざるを得なかった彼女たちのために、ユヌス氏は銀行に融資の仲介を行いましたが断られ、そこからいろいろな経緯があって、自ら小額融資を専門に行う銀行を設立するに至ったのです。 彼のボイスは、「貧しい人々の声に耳を傾け、その人々のためにできることを実行する」ことで、これがユヌス氏を立ち上がらせ、マイクロクレジットの世界を切り開いた原動力となったのです。このようなソーシャル・ビジネスの先駆となった活動により、ユヌス氏は2006年にノーベル平和賞を受賞しています。
グラミン銀行で小額融資を受けた人々の中には、自分の仕事に未来を見出し、自分のボイスをそれぞれ発見できるように奮起した人も多かったでしょう。
私たちはユヌス氏のようにはなれないかもしれませんが、彼が自分のボイスを発見したプロセスは、参考になります。これが、ボイス、そして第8の習慣のイメージです。
3つの天賦(てんぷ)の才とは
天賦の才とは、誰にでも与えられている下記の3つの才能で、これらを自覚することによって、自ら率先力を発揮し、身の周りのニーズやチャンスを的確に認識することができるようになります。
第一の天賦の才:選択する自由と能力
人は、本来、遺伝や環境に左右されるのではなく、自分自身で自らの行動を選択することによって、主体的な生き方をすることができます。
第二の天賦の才:自然の法則・原則
その場しのぎではなく、原則、つまり自然の法則に従って生きることです
第三の天賦の才:4つのインテリジェンス・潜在能力
人間は、元来4つの側面(肉体、知性、情緒、精神)を持っており、その4つの側面をバランスよく磨くことが重要ですが、すでにこの4つの側面にそれぞれ対応する潜在能力―インテリジェンス(知力)を備えています。
1.知的インテリジェンス(IQ):
いわゆるIQ のことですが、知識ばかりでなく、自分を見つめる力や学習能力なども含みます。
2.肉体的インテリジェンス(PQ):
文字通り肉体が持つ能力を指しています。私たちの肉体は、医学的にも驚くようなメカニズムを持っており、まさしく肉体が持つインテリジェンスと言えるでしょう。
3.情緒的インテリジェンス(EQ):
感情のコントロール、社会性やコミュニケーション能力など、主に自制心や人間関係に関する能力です。
4.精神的インテリジェンス(SQ):
原則に基づいた価値観、良心、人生の目的意識や内面の強さを指します。
自分のボイスを見出したあなたが影響力を押し広げ、いっそうの貢献をするためには、何をすればよいでしょうか。それは、周囲の人々を奮起させて、それぞれのボイスを発見するよう促すという道を選ぶことです。
同様に、組織が生産性向上や革新などを実現し、さらに上を目指していくためには、「組織のメンバー全員がそれぞれのボイスを表現しきること」が、その条件となります。
※「第8の習慣」「7つの習慣」等は、フランクリン・コヴィー・ジャパン株式会社の登録商標です。