外国人スタッフと働く-職場で押さえておきたい気配りポイント- 【第2回】

ここでは、前回に引き続き、「外国人スタッフと働く 職場で押さえておきたい気配りポイント」をご紹介します。

その3 外国人スタッフと日本人スタッフの交流方法

新入社員を迎える4月のイベントと言えば「歓迎会」です。
ただ、日本文化に慣れていない外国人スタッフと交流を深めるのであれば、もう少し簡単な交流から初めてみるとよいかもしれません。
ここでは、外国人スタッフとの交流を手軽にできる方法として、アメリカでよく行われる「お昼を利用したプチ交流会」をご紹介します。
多文化共生のアメリカでは、社内のランチを食べる場所が大事な交流の場所です。
会社に出社してから帰社するまで、昼食などの休憩時間を交流の場として考えるのは日本と同じです。
ここで参考になるのが、交流方法です。参加者が食べ物や飲み物を持ち寄る「ポットラックパーティー」と呼ばれる習慣があります。スタッフの誕生日などにお昼の時間帯を使った、お弁当や甘いものを持ち寄るなどの「プチポットラックパーティー」が頻繁に行われます。
また、私が以前に訪問したニューヨークの企業では、休憩や昼食など自由に利用できるキッチンスペースの一角に各自が持ち寄った果物やホームメイドクッキーなど「おすそわけコーナー」がありました。
日本から来た外国人の私に「今朝、収穫してきた桃はいかが?」「日本と比べて味はどう?」。全く知らない同士の異文化交流が自然と始まり、「ホテル滞在で野菜不足なの」と話した次の日には、「あなたのために」のメッセージと共にさまざまな種類の「朝採りトマト」が用意されていました。そして「時差で眠れなかった」と話した次の日には、「ミントティーを!」のメッセージと自家製ミントハーブのブーケが置いてあるではありませんか。
私もお礼に日本の「かりんとう」を置いたところ、大好評でした。

このように、ランチを持ち寄る「ポットラックパーティー」や、持ち寄ったお菓子のおすそわけコーナーなどのお昼を利用した「プチ交流会」はいかがでしょうか。
日本の企業事情として大きなスペースが取れないにしても、ちょっとの工夫で楽しい異文化交流の場ができそうです。胃袋をつかむことは異文化理解の基本と言っても過言ではありません。
外国人スタッフと日本人スタッフの交流は「案ずるより生むがやすし」。個人的な食べ物の好みは別として、まずは自然な交流ができる場所をつくってみましょう。

その4 日本独特の「酒席の文化」を知る

オフィスでの多国籍化が進む中、気がつけば、「忘年会」「新年会」のシーズンを迎え、外国人スタッフにも一緒に参加してもらい、社内のコミュニケーションを図りたいとお考えの方も多いのではないでしょうか。
日本人なら経験のある「忘年会」「新年会」ですが、世界的に見ると日本独特の「酒席文化」です。多国籍な職場の「忘年会」では、外国の方に対して、何に気をつければよいのか考えてみましょう。

まず、スタッフ間のコミュニケーションを図ることを大事だと考えるのは、外国でも同じです。

例えば、欧米でも日本のように「アフター5」(仕事終わり)に付き合いで飲むことがあります。
ただし、家族との時間を大切にする方も多く、「ハッピィアワー」といわれる2時間程度で切り上げることが多いようです。
また、年度の節目のイベントとして会社主催の「パーティー」を実施することもあります。
多くの場合、夫婦同伴が原則です。日本の「忘年会」に誘われた外国人スタッフが、ドレスアップした妻を連れてくるといった誤解がないようにしたいものです。

「忘年会」や「新年会」は、日本の職場のコミュニケーションの中で重要なイベントであり、外国人スタッフが日本の「酒席文化」を知るよい機会でもあります。ぜひこの機会を活用しましょう。

また、外国の方が戸惑う日本の「酒席文化」に「仕事と酒席での態度の違い」「お酌、二次会、はしご酒」などが挙げられます。
宗教上の理由でお酒を飲めない場合もあります。相手の意思を無視して、日本の習慣を無理強いすると、相手の感情を害することもあり、職場での人間関係に影響しかねません。

そこで、外国人スタッフを交えた楽しい「忘年会」開催のため、気をつけるポイントは以下の3つです。

1.相手の文化との違いを理解すること。
2.「忘年会」など日本の習慣について説明し、事前に理解してもらうこと。
3.日本の文化の無理強いをしないこと。2次会、3次会と終電ぎりぎりまでならないように、早めに切り上げることが、相手への思いやりと考えてみてはいかがでしょうか。

相手への気遣いを忘れずに、楽しい酒席の場を心がけましょう。

産業能率大学 経営学部 准教授 池田 るり子