【事例紹介】パナソニック メディコムネットワークス株式会社 お客様満⾜の向上や業務改善アイデアが創出される 通信教育を起点にした学ぶ風⼟づくり

はじめに

パナソニック メディコムネットワークス様が本格的に通信教育を導⼊してから約7年。受講率は約2%から約50%にまで向上しています。
その効果は、学んだ知識やスキルの直接的な発揮だけでなく、お客様満⾜度の向上や業務改善につながるような施策を、社員が⾃発的に提案する風⼟の醸成にも繋がっていると⾔います。

管理部 ⼈事・総務課の三須敦史様に、通信教育が組み込まれている⼈事制度や導⼊にあたって留意した点、具体的な好事例について、お話をうかがいました。
パナソニック メディコムネットワークス株式会社 管理部 ⼈事・総務課 三須 敦史 様

  • 本編は2014年12⽉2⽇の学校法⼈産業能率⼤学主催「組織で取り組む!通信研修の効果的活⽤⽅法とは」フォーラムにてご講演いただいた内容を編集したものです。

パナソニック メディコムネットワークス株式会社 プロフィール

創 業 1994年
本 社 〒110-0005 東京都台東区上野1-4-8 上野フジタエステートビル 1F
代表者 代表取締役社⻑ ⼭本剛史
資本⾦ 3,000万円
事業内容 医療情報システム等(電⼦カルテ、電⼦薬歴、レセプトコンピュータ等)の販売及び保守、機器操作・医療事務等に関する指導、新規開業・開局⽀援
売上⾼ 102億8,298万円
従業員数 433名 ※2014年4⽉期

(2014年3⽉期)

お客様のさまざまな課題に応え、お客様を⽀える「プロ集団」

当社は医療機関や調剤薬局に、医療事務のコンピュータや電⼦カルテ、保険調剤薬局コンピュータなどを販売している会社です。営業体制は、システムの初期設定や操作指導、電話対応などをおこなうインストラクター、定期点検やトラブル対応・リプレース提案をおこなうメンテナンス、主に新規営業をおこなう営業と、3つの職種にて構成されています。

販売後のサポート⼒を強みに、お客様がかかえるさまざまな課題に応える「プロ集団」として、全国で事業を展開して参りました。

お客様から寄せられる相談の中には、商品に関わるものだけではなく、「データのバックアップを録りたい」「マナー研修をお願いしたい」「事務員さんを増やしたい」などといろいろですが、「何でも解決しましょう」という顧客本位の姿勢で、お客様の課題解決に取り組んでいます。
したがって、当社の社員には、商品知識や医療事務の知識だけではなく、常に新しい知識を⾝につけることが求められています。

目標管理と能⼒アセスメントに基づく「ステージ制⼈事制度」

当社の⼈事制度は、社員を役割と能⼒要件に応じたステージを設け、目標達成度と⽇常業務に対する評価によって、社員の成⻑と会社の業績向上につながる「ステージ制⼈事制度」を採⽤しています。

この制度は、⾃ら目標を設定し、その結果を評価する「個⼈目標管理制度」と、⽇常業務に対する取り組みを評価する「能⼒アセスメント制度」からなっており、6か⽉の評価期間を設定して、運⽤しています。

● 個⼈目標管理制度

個⼈目標管理制度の核となるのは、全社員がおこなっている仕事を整理して作成した職種・ステージ別の役割・能⼒要件です。目標はこの役割・能⼒要件に基づいて、「現状から何を前進するか。どう前進するか」を考え設定します。
設定にあたっては「目標管理シート」を社員に配布しています。このシートには、具体的な⾏動を促すために「何を、いつまでに、どのように、どこまで、どうするか」と細かく設定できるようになっています。
また、シートの中にはスキルアップという項目を全ステージに設け、学ぶことの⼤切さを社員に伝えています。具体的な学習⽅法として通信教育を推奨しています。

● 能⼒アセスメント制度

能⼒アセスメント制度は、⽇常業務に対する取り組み姿勢の評価です。良かった⾏動、改善が必要な⾏動について、具体的な事実に基づいて評価します。この制度で重要な点は「評価期間内の事実のみで評価される」ことです。
たとえ評価期間より前に失敗したことがあったとしても、それを引きずって評価しないことを徹底しています。
また、事実に基づかなければいけませんから、上⻑は普段から部下とコミュニケーションを取って、取り組み状況を正確に把握する必要があります。
評価にあたっては「部下指導シート」を運⽤し、具体的な⾏動を上⻑に記録させています。

教育においても、目標管理制度と同じく、ステージや職種毎に求めるスキルや必要な知識を定め、その内容に対応する職種別研修や階層別研修などを実施しています。
どの階層になっても勉強をしつづける社員であってほしい、というメッセージを込めて、研修体系図(下図)を社員と共有しています。この中でも、近年⼒を⼊れて、社員への浸透を図ってきたものが、ビジネススキル習得に活⽤している通信教育です。

通信教育導⼊の目的と運⽤課題

ビジネススキルの習得にあたっては、以前は集合研修を実施していました。しかし、全国の事業所から対象者を1か所に集めて実施するため、講師の費⽤だけでなく、交通費や宿泊費なども含め、膨⼤な費⽤がかかっていました。
そこで、全国どこでも均等な質で教育できる⽅法を模索していたところ、通信教育のご提案をいただき本格的に導⼊をすることになりました。

また、当時の教育施策はインセンティブの付与や社員旅⾏など、外発的な動機づけが多かったこともあって、「⾃分で能⼒を向上させたい」という内発的な動機づけのきっかけづくりを模索していたことも理由です。

導⼊と運⽤にあたっては、3つの課題がありました。

1つ目は、合併した会社への浸透です。
当社にはいろいろな会社との合併を繰り返して、現在の全国各地に拠点を持つ組織となってきた歴史があります。合併相⼿が通信教育を導⼊していることはほとんどありませんでしたので、学ぶことの⼤切さや、通信教育の特⻑について、さまざまな場⾯で説明を繰り返しました。
すでに受講している社員の意⾒や、実際の受講に基づく実感などもあって、約2年かけて浸透し軌道に載せることができました。

2つ目は、新⼊社員への意識づけです。
本来通信教育は内発的な動機づけとして始めたのですが、新⼊社員は本格的に業務には携わっていませんので、学習に対する動機づけの弱さを感じていました。そのため、通信教育受講を含めた⾃⼰啓発目標をつくり、その目標をクリアすることで社員旅⾏に参加できるという外発的動機づけを⽤いて、新⼊社員に⾃⼰学習を根付かせています。

3つ目は、通信教育講座の受講を取りまとめる担当社員の業務負荷です。通信教育の幹事教育団体が産能⼤でなかったときは、1名の社員が受講を希望する全ての社員の窓⼝となり、メールでのやり取りをおこない、受講状況を確認し、目標管理シートのチェックをしていました。
しかし受講率の⾼まりとともに、この業務は膨⼤な量となり、煩雑になっていました。そこで産能⼤に相談し、新たにWebシステムを導⼊しました。
メールのやり取りを簡略化できただけでなく、Web上で全社員の受講状況の確認ができるようになり、目標管理評価の正確性も向上しました。

通信教育導⼊を起点に⽣まれた3つのアイデア

前述のような3つの課題への対応に加えて、顔写真つきの社⻑メッセージや目標管理制度の概要を通信教育講座パンフレットに掲載するなど、通信教育の浸透を図った結果、受講意欲が⾼まっていきました。
2013年度には、受講者数が延べ372名、受講率は50%にまで向上し、内発的な動機づけに伴う学習風⼟が少しずつできてきていると実感しています。

通信教育導⼊後、直接的な知識やスキルの習得だけではなく、社員が積極的にいろいろな業務改善案を考えるように変化したと感じています。お客様満⾜の向上や業務改善に向けて社員が提案し具現化された、代表的な3つのアイデアをご紹介いたします。

1.医療機関の機器配置図写真のDB化

インストラクターが担当しているトラブルに関する電話対応は、お客様からの話をもとに、その内容を想像したうえで対処⽅法をナビゲートするという、非常に難易度の⾼いものでした。そこで、お客様の機器配置図などの写真を撮り、データベース化をおこないました。その結果、電話を受けたときに写真を⾒ながらナビゲートすることができるようになり、サポート⼒の向上に繋がったと感じています。

2.開業⽀援室の設置

当社のお客様はいろいろな課題を持っています。中でも「開業⽤地はどうすればよいのか」「事務員はどのように採⽤すればよいのか」などの開業に関する質問は多く寄せられます。そこで、実際に当社製品の医療事務コンピュータに触れることができ、また、採⽤⾯談のシミュレーションなどもおこなえる開業⽀援室を社内に設置し、お客様にご利⽤いただいています。

3.簡易マニュアルの配布

お客様からご連絡をいただけることはとても良いことなのですが、電話対応に割かなければいけない時間が多く、別の業務へ時間を使うことができずに困っている社員がいました。その対応として、システムに組み込まれているプリンターのインク交換⽅法や配線のチェックに⾄るまで、トラブルの際にチェックしてほしい項目をまとめたきめ細やかなマニュアルを新たに作成し、お客様への配布をおこないました。
これによって問合せの電話も減り、お客様からも助かっているとの声を頂戴することができました。

このように、社員が⾃発的にいろいろなアイデアを出すようになり、業務へ好影響を与えるようになりました。それも⼿伝って、役員も全社朝会などの機会に「勉強しなさい。通信教育しなさい」と、トップダウンのメッセージとして学ぶことの⼤切を伝えてくれるようになりましたから、さらに良い⽅向に進むのではと期待しています。

⼈事としては「通信教育を導⼊しただけ」であったのですが、結果としてこのような成果が出てきたことは、会社にとって、とても⼤きな財産になると考えています。

今後の課題

ステージ制⼈事制度や評価制度、通信教育の導⼊は⼀定の成果が出ている⼀⽅で、会社を次の「ステージ」に上げるためにはたくさんの課題があります。

まず1つ目は階層別教育の進化です。当社の風⼟は、まだまだ部下や後輩を育成する意識が弱いと感じています。新⼊社員に対して⾃⼰学習や⼈を育てることの⼤切さは伝えていますが、新⼊社員が先輩になったとき、⾃⾝が先輩から教えてもらっていないこともあるため、教えることができないケースも散⾒されます。
この「負の連鎖」を断ち切るために、階層別教育を強化したいと考えています。

2つ目は、通信教育についてです。受講率は年々⾼まっているのですが、導⼊から時間も経ち、少しずつマンネリ感が社員に表れていることを感じています。それを払拭するために、受講後の仕掛けを検討していきたいと思います。

3つ目は、各ステージにふさわしい役割の理解と知識をインプットするための仕組みづくりです。
1つ目の課題とも連動しますが、特にマネジメント層への教育が必要だと考えています。通信教育もマネジメント講座の受講者数は決して多くありません。次世代のマネジメントを担う層からの育成も含め、マネジメント⼒の強化を今後の⼈材開発の重点目標としています。

最後の4つ目は、評価制度のブラッシュアップです。目標管理と能⼒アセスメントだけで本当に適切な評価ができているのか、経営層や現場と相談をしながら、考えていきたいと思っています。

(2014年12⽉2⽇公開、所属・肩書きは公開当時)