【事例紹介】カゴメ株式会社 グローバル化を推進する ⼈材育成制度の改⾰と通信教育の普及施策

はじめに

2013年度から3か年の中期経営計画「Next50」を推進しているカゴメ株式会社。
⽇本のナショナルブランドからグローバルブランドへの⾶躍を目指して、⼤きな変⾰をおこなっています。

世界で通⽤するマーケットバリューの⾼い⼈材を育成するために、⼈事部の役割や教育のあり⽅について、執⾏役員 ⼈事部⻑の有沢正⼈⽒と⼈事部 ⼈事グループの齋藤周⼀⽒にお話をうかがいました。
(左)執⾏役員 ⼈事部⻑ 有沢正⼈ 様 /
(右)⼈事部 ⼈事グループ 齋藤周⼀ 様

  • 本編は2014年11⽉25⽇の学校法⼈産業能率⼤学主催「〜カゴメ株式会社様に学ぶ!⾃ら学ぶ風⼟の醸成に向けた⼈材育成制度の構築について〜」フォーラムにてご講演いただいた内容を編集したものです。

カゴメ株式会社 プロフィール

創 業 1899年(明治32年)
本 社 〒460-0003 愛知県名古屋市中区錦3丁目14番15号
代表者 代表取締役社⻑ 寺⽥ 直⾏
資本⾦ 19,985百万円
事業内容 調味⾷品、保存⾷品、飲料、その他の⾷品の製造・販売
種苗、⻘果物の仕⼊れ・⽣産・販売
販売、サービスを⾏う総合エレクトロニクスメーカー
売上⾼ 193,004百万円(連結)
従業員数 2,349⼈(連結)

(2014年3⽉31⽇現在)

「愛知」から「⽇本」。そして「世界」へ

1899年に創業した当社は、1963年に「愛知トマト株式会社」から「カゴメ株式会社」に社名変更しました。
これは単に社名を変えたわけではなく、愛知県という1地⽅から⽇本全国への事業展開を⾒据えておこなったものです。それから50年が経ち、ナショナルブランドとしての地位を築けてきたのではないかと考えています。

そして2013年、次の50年でナショナルブランドからグローバルブランドへの転換を目指して、中期経営計画「Next50」をスタートさせました。より広く、世界中の⼈たちへカゴメ価値を広めようと活動を展開しております。

海外拠点としてはアメリカやポルトガル、オーストラリアに、各地域の中⼼的な役割を担う⼦会社を持っています。また、中国や台湾、タイやインドなどアジア諸国にも進出していますので、グローバル企業としての組織体制は整いつつあると思います。

「求⼼⼒」を⼤切に、「遠⼼⼒」を推進する

「Next50」にて、目指すべき10年後のカゴメ像を「遠⼼⼒で広がるカゴメ」「求⼼⼒でまとまるカゴメ」と掲げています。

「遠⼼⼒」とは広がっていくための⼒です。
今まではカゴメのコーポレートブランドに依存している傾向がありましたが、海外事業や新規事業を始めるためには、過去の延⻑線上で物事を進めるだけでは戦っていけません。
グローバル尺度で測れるマーケットアビリティを持った⼈材が必要になっているのです。

「求⼼⼒」とは、カゴメとして変わらないものであり、変えてはいけないもの。
例えば、「感謝 ⾃然 開かれた企業」という企業理念や110年をこえる歴史。あるいはカゴメの特⻑ともいえるチームワークの良さなど、カゴメ⼈として持つべき共通の価値観とも呼べるものです。

非常に難しいことですが、「遠⼼⼒」と「求⼼⼒」の両⽴、すなわち、今までのカゴメにある⼤切なことを持ちつつ、今までになかった新しいことへ取り組んでいかなければ、グローバル企業としての未来は開かれないと考えています。

この実現のために目指すべき⼈材像を以下としています。
従業員は、⾃⾝の強みや弱みを理解したうえで、それぞれに合った形で能動的に学び、カゴメ⼈として必要な知識スキルを⾝につけ、⾃⾝の責任でキャリアをつくっていくこと。
⼈事部はこの環境をつくるためのサポートに徹すること。これを進めることで、「マーケットで戦える⼈材集団」を構築できると考えています。

「テーラーメイド型⼈材育成」を実現する6つの施策

教育については、以前は会社が決めたキャリアプランに基づく新⼊社員研修や管理職研修など、受動的な教育が多かったのですが、「Next50」を受け、各⾃の強みや弱みをフォローし、能⼒や希望に合わせておこなう「テーラーメイド型の⼈材育成」に改めました。
それを実現するために始めた6つの施策をご紹介します。

(1)選択型ビジネススキル研修

「学びたい⼈が、学びたいことを、学びたいだけ学べる」研修の場として、2014年度から始めた完全公募型の研修で、「論理的思考」や「リーダーシップ」などのビジネスリテラシーを取り扱っています。2014年度は半年間で8回おこない、その合計定員218名に対して申込みは223名にもなりました。従業員の学ぶ意欲の⾼まりを実感しています。

(2)⾃⼰啓発

⾃⼰啓発として通信教育受講⽀援、資格取得⽀援、⾃⼰啓発研修受講⽀援の各施策をおこなっています。カフェテリアプランとの連動などをおこない、より学びやすくするための環境づくりに取り組んでいます(通信教育は後述)。

(3)ストーブMTG・公開講座

「カゴメらしさ」を能動的に学べる場として、⾃部門の事業部⻑や部⻑と膝を突き合わせるミーティング、「ストーブMTG」をおこなっています。
また、新たな視点の理解や気づきを与えることを目的に、他部門の事業部⻑や部⻑が全国の事業所を訪れ講話をおこなう「公開講座」も実施しています。
ストーブMTGの様⼦

(4)⼊社3年次までの基礎教育

⼊社間もない若⼿社員は⾃分でキャリアをつくることはできません。⼊社3年目までは会社主導で、継続的に学ぶ⼟台づくりのための基礎教育を充実させています。

(5)アセスメント

総合職の昇格審査は、以前は論⽂と⾯接のみで、取り組み姿勢やマインドは測れても、その等級にふさわしい能⼒を保持しているかどうかは測れていませんでした。
2014年度から外部講師によるアセスメントを導⼊し、その等級にふさわしい能⼒を持っているかどうかを客観的視点で評価しています。

(6)昇格要件

昇格にあたっては、アセスメントに加えてスキルポイント制度を導⼊しています。
上位等級に昇格するために必要なスキルや知識をポイント化することで、能動的な学びを促しています。必須科目と選択科目があり、その割合は等級が⾼くなるほど選択科目が増えるよう設定しています。
上位等級の⼈は⾃⾝のキャリアを考え、スキルや知識を深めてもらえればと考えています。

従業員の通信教育受講をサポートする4つの取り組み

上記でご説明した(2)⾃⼰啓発と(6)昇格要件において、通信教育を利⽤しています。

⾃⼰啓発では、カフェテリアポイントの福利厚⽣制度と連動し、財産形成⽀援や健康管理⽀援などの中に⾃⼰啓発⽀援というカテゴリーを設け、通信教育補助という項目をつくっています。能動的な学びの⽀援になりますので、他の⽀援制度よりもポイント還元率を少し⾼くしています。

昇格要件となる対象者必須受講については、それぞれの等級に在籍している間にいくつかの科目の修了を必須昇格要件としていますが、その中に通信教育を盛り込んでいます。

数年前までは通信教育の受講を必須としている等級もありましたが、より⾃律的に学ぶ風⼟への変⾰の中で、現在は個⼈に選択の幅を持たせ、通信教育や選択型研修、資格取得などから選べる形で運⽤しています。

当社の通信教育の受講者数は下図となります。

2014年度は11⽉までの試算となりますが、昨年度までと⽐べて、通信教育の受講者数は⼤きく上回ることができました。直近1、2年でおこなった通信教育に関しての取り組みをご紹介します。

(1)特集テーマの選定

通信教育ガイドブックの巻頭ページに、今社会的に求められていることや、⼈事部の取り組みなどと連動した特集テーマを掲載しています。
2014年度はグローバル化推進コースと、管理職向けにおこなっている360度サーベイについて取り上げました。
グローバル化推進コースについては、東南アジアや中国⽂化についてのコース、異⽂化ギャップを埋めるコース、語学のフォローをしているコースなどを取り上げ、紹介しています。

もう1つの360度サーベイは、各ディメンションに弱みが出ている場合はこういったコースを受けてはいかがでしょう、といった内容を紹介しています。

(2)コース体系の再編

従来は昇格要件の必須としていたこともあって、そのコースをガイドブックの目次の最初に掲載し、その後に⾃⼰啓発で受けてほしいコースを掲載していました。
昇格の対象者には分かりやすいのですが、直接関係ない⼈たちには、同じ分野のものが前と後ろに分かれている、といったことになり、分かりづらいという課題がありました。
⼈事制度の変更に伴うものですが、現在は各カテゴリー別に整理して並べることができています。

(3)ガイドブック表紙の改訂

2012年度までは毎年、⽩地に野菜の写真が貼ってある表紙で、どれが最新版か分かりづらかったこともあり、2013年度に⼤きく改訂をおこないました。
変わったことをアピールしたかったことが⼀番の目的ですが、デザイン的にも良いと評判をいただいています。

(4)イントラネットへの掲⽰

従来の通信教育の告知はガイドブックを配って終わりでしたが、少しでも従業員の目に触れる回数を増やすことを目的に、イントラネットにPDFを掲⽰するようにしました。
たとえガイドブックが⼿元にない場合でも、常に従業員が確認できるようになったと思います。

2014年度の通信教育の受講率は、昨年度の同⽉対⽐+56⼈、20%以上のアップとなっています。

本当にこれらの取り組みだけでここまで増えるのか、というご指摘もあるかもしれません。
⼈事部としても、2014年度からは公募型の選択型ビジネススキル研修も始めていますから、受講率は減ってしまうのではと危惧していました。

しかし実際はこのように受講⼈数、中でも⾃⼰啓発受講が増えるという結果になっています。これは、通信教育に関しての取り組みだけでなく、「テーラーメイド型の⼈材育成」を進めた結果だと考えています。

今後も「Next50」の実現に向けてマーケットで戦える⼈材集団を目指し、継続的に努⼒を続けて参ります。

(2014年11⽉25⽇公開、所属・肩書きは公開当時)