グローバル対応教育における通信研修活用のポイント (第2回)

若手ビジネスパーソンの意識

昨年本学が実施した「新入社員のグローバル意識調査(※)」によれば、「日本企業はグローバル化(海外進出)を一層進めるべきか?」との質問に対して、約8割の人が「そう思う」「どちらかと言えばそう思う」と、企業のグローバル化を肯定的に捉え、不可避なことだと考えている反面、「今後海外で働きたいですか?」との問いに対しては、約6割の人が「働きたいとは思わない」と答えている。
新入社員に限定した調査ではあるが、概ね「グローバル化の重要性については理解するが、海外に出たいとまでは思わない」というのが今の若いビジネスパーソンの平均的な姿なのだろうか。
 
では、海外で働きたくない理由としては、どのようなものが挙げられていたのか。
同調査によれば、7割近くのビジネスパーソンが「自分の語学力に自信がないから」、約3割の人が「自分の仕事の能力に自信がないから」という能力面の不安を理由として挙げている(図表1)。
こうした声に企業が応えるとすれば、やはり、地道にビジネスパーソンの能力開発を継続し、組織的に支援するという当たり前のことを実践するしかないという結論に落ち着く。
ただし、前回のコラムで触れたように、これからは一部の限られた「グローバル要員」だけではなく、より多くの従業員にそうした支援を行って、ビジネスパーソン全体の底上げを図ることが求められていくだろう。
 
「グローバル予備軍」とも言うべき、若手ビジネスパーソンへの教育支援という視点では、動機づけや基本的な知識・スキルの習得が期待できる通信研修プログラムは活用しやすいツールではないだろうか。


※2013年6月実施。インターネットで2013年度に新卒入社した新入社員(18歳~26歳)のビジネスパーソン約793名(男性380人、女性413人)に対してアンケートを実施した。

グローバル対応教育としての通信研修

これまで、「グローバル対応」という言葉を使ってきたが、そもそも「グローバル対応教育」とはどのようなものと考えればよいのだろうか。
いろいろな捉え方があるが、通信研修の範疇では、概ね「グローバルにおける共通言語」の習得と捉えて良いだろう。ここでいう共通言語とは、語学だけでなく、異文化対応、マネジメント、論理思考や交渉といったビジネススキルまで、汎用的に、幅広くグローバルで通用する能力を指す。企業としては、こうした能力を従業員が体系的に身につけていくことができるような支援を積極的に行っていくことが必要である。

ビジネスパーソンのグローバル対応支援には、こうした動機づけを含めた新しい知識やスキルの習得を目指す側面(インプット中心)と、これらを実践し内省する側面(アウトプット中心)とがある。
前者は「知る」「わかる」ことに重点を置いたもので、後者は「やってみる」「できる」ことに重点を置いた、実践を通じた経験学習とも言うべきものである。ワークショップなどの集合研修や短期海外派遣プログラムといったものは後者に相当する。通信研修は言うまでもなく、前者の知識・スキル習得型プログラムである。

「グローバル対応」であっても、インプットをねらいとしたものについては、若手に限らず、あらゆるビジネスパーソンに対して有効であり、こうした通信研修の特徴を生かすことが可能である。
通信研修がカバーできる領域としては、前述した語学力、異文化対応能力、経営管理知識、思考・分析力、コミュニケーションスキル、マネジメントスキルといったところがメインになるだろう(図表2)。こうして見てみると、グローバル対応教育といっても何ら特別なものではないことが、おわかりいただけるだろう。
次回は、こうした通信研修の活用と組織支援のポイントについて述べる。


(産業能率大学 総合研究所 セルフラーニングシステム開発部 教材開発センター 教材開発担当課長
グローバルマネジメント研究所 所員 岡山 真司)