【SANNOエグゼクティブマガジン】アベノミクス第4の矢(東京五輪2020)に乗ずる方法 ~「リセット力」で変革型リー ダーを萌芽・実践・成果創出仮説~ 社会動向から世の中を見る

アベノミクス1の矢、2の矢、3の矢そして第4の矢

アベノミクス「3本の矢(図表1)」が放たれ、株価は上昇し、為替は落ち着き、個人消費、設備投資が活発になってきました。さらに、9月7日には、第4の矢と呼ばれる「2020年東京五輪開催決定」というビッグニュースも飛び込んできました。まさに、アベノミクス第3の矢「民間投資を喚起する成長戦略(日本再興戦略)」実現の起爆剤となりそうです。
しかし、矢が何本放たれ戦略が次々と実現しようと、多くの企業人は「職場のヒトは増えず、俺の・私の仕事は増える一方、実入りも増えず、上は詰まって、先行きも見えず…」と感じているように思えます。業界、職種、世代によって様々とは思いますが、これからの時代を切り開いてほしい中堅世代からそうした閉塞感を強く感じます。

本稿では、アベノミクス第4の矢に乗ずる施策を探索します。特に、中堅世代の「リセット力」という観点からアプローチし、変革型リーダー萌芽・実践・成果創出仮説を提案します。

リセット力とは

筆者は、研修やコンサルティング現場に長年携わってきました。そうした中、時代はどうあれ、苦境下でもたくましく這い上がってくるヒト、ドン底でも夢と希望を持ち、周囲を巻き込み復活を遂げるヒトを数多く見てきました。そして、そのヒトたち共通の魂のようなものを見てきました。

本稿では、それらの魂を「リセット力」と呼びます。リセット力とは、「八方塞がりの状況下でも自分の中の強みに自信を持ち、プライドを捨て、夢を信じ、這い上がり、やり直す力」と定義します。

図表2のとおり、リセット力は、3つのモジュールでできています。3つのモジュールは、自分の中の強みに自信を持ち、夢を信じ、這い上がり、やり直す力の源泉となります。どのモジュールも、仕事を通じ獲得していきます。基盤であるOS部分は、ポジティブ心理学診断ツール「VIA-IS[ⅰ]」から導き出す、自分の中の強みです。中間のミドルウェアは、知識、スキル、経験知、資格などの保有能力です。そしてアプリケーション部分は、変革リーダースキル「五輪の書」です。「五輪の書」は、変革型リーダー萌芽の肝となるモジュールなので、以下で簡単にご案内しますが、詳細は、拙著『「リセット力」で今からの脱出』(産業能率大学出版部2013年9月30日出版)でご確認ください。
[ⅰ] ポジティブ心理学の第一人者であるセリグマン博士らが開発した強み診断ツール。好奇心や創造性といった、24の特性に基づく強みを明らかにすることができる。ペンシルバニア大学の公式ウェブサイト(http://www.authentichappiness.sas.upenn.edu/Default.aspx )において無料で受講することが可能

変革型リーダースキル「五輪の書」

① 夢を描き、夢を語ること

組織や社会に変革をもたらすリーダーは、組織の3年~5年後のあるべき姿やありたい状態を言葉や記号で知らしめ、メンバーや関係者を巻き込みやり遂げる。

② トップ(またはトップ層)ときっちりにぎり信頼関係を強固にすること

トップ(またはトップ層)と強固な信頼関係を構築するには、日々の地道な活動が積立貯金となる。「高い志をもったゴマスリ」を行うことで、部下の満足度を高める。

③ 業務命令と義理人情を状況に応じて使い分けること

状況(部下の習熟度)を見極めて、それに応じてリーダーシップのスタイルを使い分ける。SL理論®(ハーシー&ブランチャード『行動科学の展開』日本生産性本部 1978年)で言うところの参加的スタイル「支持・支援」は、成熟度高めのメンバーに効果的。

④ 3ニンの精神(任、認、忍)でいくこと

コアメンバーの能力を最大限に発揮させるには、コミュニケーションの“質”が重要である。「任せる、認める、耐え忍ぶ」を粘り強く実行することが肝要。

⑤ 外部支援者とのゆるい関係をフル活用すること

優秀なナレッジワーカーが最も頼りにするものは、個人的なネットワークの仲間である。なぜなら、弱い結びつきには、質の高い情報の強さがあるからである。

変革型リーダーを萌芽・実践・成果創出させるには

今、閉塞感を強く感じているのは、中堅世代、特に1975年~1979年生まれの「真性団塊ジュニア世代」(三浦展 『下流社会 新たな階層集団の出現』 光文社新書2005年)だと思います。彼らは、若い時にはマイルーム世代、レア感世代などとマスコミから注目され、IT業界においてイノベーター(ミクシィ笠原氏[1975年生]、はてな近藤氏[1975年生]、グリー田中氏[1977年生]など)を数多く排出しています。女性はコギャル文化やお姉系などの新しい文化を形成し、概ね1990年代後半から2000年代においての若者文化の担い手となる世代でした。

しかし、社会人になると、就職氷河期から15年続いたデフレを味わい、組織の人口ピラミッドにおいて上位のポジションが詰まりに詰まっているため、従来型のキャリアプランが立たないという現実を味わいました。さらに、入社してくる若手の減少と、価値観の相違が、閉塞感に拍車をかけていました。つまり、組織人として「ポストに就ける、集団をリードできる、部下を育てる」という機会に恵まれないという現実に直面している世代なのです。

よって、磨けば光る、イノベーター埋蔵世代にリセット力を萌芽させ、大幅な権限委譲によって起こるビッグウエーブに乗ずる変革リーダーとして先頭に立たせる施策こそ、アベノミクス第4の矢(東京五輪2020)に乗ずる方法だと考えます。