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「日中韓3か国企業調査」から考える「女性活躍」の今とこれから 前編(2/2)【第6回 企業と社会、そして人~『これからの経営』を考える~】

前編 「日中韓3か国企業調査」から考える「女性活躍」の今とこれから
~自由が丘産能短期大学 石塚浩美教授に聞く~

本橋

3か国のデータを集めるだけでも大変なお仕事だったと思いますし、また多くの貴重な情報が得られたこと思います。その中で特に際立った、特徴的な結果として先生が着目された点について、いくつかお聞かせいただけますでしょうか。

    石塚

    まず、この3か国で比較したときに、日本における女性の労働力率は低くない、ということがいえると思います(図2)。
    ただし、この凹んでいるところ、これは出産・育児によって一時的に仕事から離れている時期を意味しますが、この左と右では働き方と待遇が違っていることに注意する必要があります。
    左、出産前は正規社員として、右、育児後は非正規社員として仕事をするケースが非常に多い。これは、育児をする時期以降はその前に比べて待遇が非常に悪くなることを意味します。
    海外では必ずしも「非正規=待遇悪化」とはいえないケースもあるのですが、日本の場合には待遇が大きく異なると見て差し支えないでしょう。私はこの待遇の違いを解消していった方がよいと考えています。

      本橋

      金銭的な待遇の違いもそうですが、一度仕事を辞めて非正規の職に就くということは、多くの場合、それまでのキャリアがそこで一度切れてしまうことも意味すると思います。
      さらには、仕事そのものへの満足や成長・労働意欲などの面からも、大きなリスクや問題を含む「転換」ではないでしょうか。
      正規社員であればより責任ある仕事を任される機会や可能性があったものが、失われてしまうわけですから。
      責任ある仕事をするということは、しんどいこともあるけれども、より深い満足や成長のためには欠かせない要素だとも思うんです。
      こうしたものを得られなくなるという損失も、同時に無視できない問題だと思います。

        図2 日中韓における労働力率(年齢階級別)(%)

        石塚

        次に、中国はかなり、若い女性を管理職に登用している、といえます。
        中国は、1949年から78年まで計画経済でしたし、それ自体がクオータ制(割り当て制)を取り入れたようなものでもありましたから、そもそも女性が働くということへの土壌があったと思います。たとえば係長クラスでは、男性と女性の比率は半々です。

        一方、日本は一般的に「遅い昇進」といわれますが、今回の結果もまさにそうで、部長が40代、課長・係長で30代後半と、この年齢まで働いていないとそもそも管理職の候補にならない、ということが明らかです。
        中国では20代で、韓国では30代前半で係長になっていますので、「日本では、長い時間をかけて人を育てて管理職にする」という傾向が、今回の調査結果からも再確認されました。
        この結果は女性に限らず男性も含めてのものですが、ここから、長期勤続がしにくい女性にとっては、管理職への昇進が難しいという現実があらためて浮き彫りになったように思います。

          本橋

          いわゆる「日本的経営」の特徴、あるいは強さの要因として、かつては「年功序列、終身雇用、企業別労働組合」が「三種の神器」といわれていました。
          このうち、他の2つはともかくとして、「終身雇用」は企業内においても社会システムにおいてもまだなお、ある程度の前提として存在し続けているといわれます。
          これによって、企業と従業員の信頼関係がより強固になるとか、長期的な視点で業務や人材育成を考えることができるとか、多くのメリットがもたらされるとも思いますが、その負の側面としてこうした問題が出てきているとすれば、根本的な解決のためには多くの難しいジレンマを克服していかなければならないと思います。

            石塚

            日本でもこうした課題を解決するために複数の省庁がさまざまな政策を掲げ取り組んでいますが、今回の調査では、韓国において、国として近年取り組んできた「アファーマティブアクション(積極的雇用改善措置)」の成果が現れてきたのは印象的です。
            具体的には、女性の雇用者比率や管理職比率が少しずつですが上がっていることから、こうした傾向を読み取ることができます。
            同様の政策について日本では「ポジティブアクション」という呼称が用いられますが、意味するところは同じと考えて差し支えないです。

              本橋

              韓国でとられた「アファーマティブアクション」とは、どのようなものだったのでしょうか。

                石塚

                導入されたのは2006年だったのですが、まず、1年がかりで、業種別・企業規模別に、女性の就業率や管理職比率の平均値を出します。
                そして、その平均値の60%に達していない企業に対しては計画書を提出させ、1年以上経った頃のきりのいい時点で、それを達成したかどうかという報告をさせる、というものです。
                これは、現実的なやり方だと思いますし、成果が出ていることが明らかです。日本でいう男女雇用機会均等法にあたる法律として、韓国では男女雇用平等法が制定されていて、先のアファーマティブアクションもこの法律に基づく措置として実施されています。

                  本橋

                  企業の側の反応は、どうだったのでしょうか。

                    石塚

                    最初は、企業も官公庁も猛反対だったそうです。
                    しかし、時の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が非常に積極的で、しかも盧武鉉大統領の主要な支持団体として市民の存在が大きく、女性団体の賛同や世論の裏づけもある政策ということで、大統領制の強いリーダーシップの下で導入、推進されていったと聞いています。

                      この「アファーマティブアクション」で「基準値の60%に達していない」とされた企業が、提出した計画を最終的に達成しなくても罰則はないのですが、そうした企業は3つの文書、報告書を提出しなければならないことになっています。
                      「現状報告書」「計画書」「結果報告書」の3つなのですが、このうちの1つでも出せないと過怠金があって、企業名も公表されてしまうことにはなります。

                        自由が丘産能短期大学 石塚浩美教授

                        本橋

                        報告書を提出すればいいのであれば、それほど強い罰則であるとも思えないのですが。

                          石塚

                          そうはいっても、報告書ではきちんと理由を述べなければならなかったり、数値目標が設定されていたりするので、そう「ぬるくはない」と思います。
                          この数値目標も「その業種・企業規模群の中での60%以内」でいいので、それほど高すぎるわけではないですし、報告書を3本も作成するとなればそれなりに手間やコストもかかってきますから、「それならば目標を達成しよう」という方向に動いている、ということなのではないでしょうか。

                            (後半に続く)

                            石塚 浩美(いしづか・ひろみ)
                            自由が丘産能短期大学教授。東京都立大学(現・首都大学東京)大学院社会科学研究科経済政策専攻博士課程修了。社会科学博士(お茶の水女子大学大学院)、経済学修士。
                            専門分野・主な研究領域は、労働経済学、男女の就業と経済・社会システムの実証分析、ワーク・ライフ・バランス、ダイバーシティ。
                            主な著作に『中国労働市場のジェンダー分析 -経済・社会システムからみる都市部就業者-』(勁草書房、2010年)「二重労働市場論に基づく若年層の新しい初期キャリア形成の提示」(『産能短期大学紀要』第45号、2012年)など。

                            (学校法人産業能率大学 総合研究所 本橋 潤子)

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