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  3. 【企業事例】個人の学びを、組織の力へチームで育て、チームで支える人財育成と主体的な学びの支援(高速道路トールテクノロジー株式会社様)

事例・コラム

プロフィール

  • 岩田 恵司 氏

    岩田 恵司 氏

    1994年入社。研修運営施設システムセンターの研修担当部門を統括する立場で、研修運営全般の取りまとめに従事。
  • 山下 耕平 氏

    山下 耕平 氏

    2011年入社。保守業務やメーカー出向を経て、人事部ダイバーシティ推進課※で全社研修の企画・採用業務を担当。

    ※所属名は取材当時の名称です。現在は「人事部人財開発課」です。

  • 石﨑 司 氏

    石﨑 司 氏

    2012年入社。保守・工事業務を経て、現在はシステムセンターで研修担当として研修運営業務に従事。

高速道路の料金システムを支える高速道路トールテクノロジー株式会社では、現場で培う技術力と、組織で学びを支える仕組みの両立を重視しています。
全国から受講者が集まる研修施設、若手育成を支えるテクニカルアドバイザー、評価制度と連動した研修、そして通信教育の活用。個人任せにしない育成とチームで解決する風土づくりについて、人事・研修に携わる岩田氏、山下氏、石﨑氏にお話を伺いました。

高速道路トールテクノロジー株式会社様 概要

1966年設立の高速道路トールテクノロジー株式会社は、NEXCOグループの一員として、高速道路の料金システムに関する開発・保守・運用・施工を担う専門会社。全国に事業所を展開し、安全・安心で快適な高速道路利用を技術・運用面から支えている。

全国の高速道路を支える料金システムの専門会社

――まず、貴社の事業内容について教えてください。

岩田氏イメージ

当社は、高速道路の料金システムに関する開発、保守、運用、施工を担う会社です。お客さまに安全・安心・快適に高速道路をご利用いただくため、料金システムを支え、社会インフラの安定運用に貢献しています。

また、NEXCOグループの一員として、当社は全国に拠点を展開しています。料金システムの保守を担う事務所だけでも40か所を超え、工事部門などを含めると、拠点は全国に60か所以上あります。料金システムに関する専門技術を一手に担っている点が特徴です。

――経営理念や行動指針は、どのように浸透させていますか。

岩田氏イメージ

当社は、経営理念のもと、安全・品質・コンプライアンスを重視しながら、信頼される仕事を積み重ねています。その理念については、昇格者研修で、役員が行動指針と併せて昇格者に直接説明しています。会社としてどうあるべきか、社員に何を期待しているのかを役員の言葉で伝えることで、目指す方向への理解を深めています。

山下氏イメージ

加えて、年に1回、役員が各地の現場に出向く「ダイレクトコミュニケーション」を実施しています。全社員が参加する意見交換の場で、全国約20か所に分けて行っています。コロナ禍にはオンラインで実施した時期もありましたが、ここ2年ほどは対面に戻しています。

岩田氏イメージ

特に若手社員にとっては緊張する場でもありますが、経営理念や行動指針、会社が目指す方向についても改めて確認し、理解を深める機会となっています。

全国から集まる研修施設が縦と横のつながりを育む

――貴社の研修体制について教えてください。

山下氏イメージ

当社では、人事部ダイバーシティ推進課※(本社・東京)が研修全体の企画などを担い、システムセンター(横浜)が受講案内や研修運営など、研修実施に関する実務を担っています。企画部門と実施部門が分かれている点は、他社にはあまりない特徴かもしれません。

※ 部署名は取材当時の名称です。現在は「人事部人財開発課」です。

システムセンター

システムセンター

――貴社の研修には、どのような特徴がありますか。

山下氏イメージ

全国各地の事業所に配属された社員が、ここシステムセンターに集まって一緒に学ぶことは、当社の研修の特徴の一つです。知識や技術を身につけるだけでなく、配属先を超えた縦や横のつながりが生まれます。研修が重なる時期には、自部署以外の先輩と顔を合わせることもあり、社員同士の交流の場にもなっています。特に長期研修では一緒に過ごす時間も長いため、関係が深まりやすいですね。

岩田氏イメージ

中堅層向けには、1か月程度の技術研修もあります。システムセンターで集中的に学ぶことで複雑な料金システムを理解し、メンテナンスできるレベルまで技術を高めていきます。施設には宿泊室や浴室も備えていますので、研修期間中は現場を離れて学習に専念できる環境を整えています。

石﨑氏イメージ

1年目から3年目までの社員には必修研修があり、同期が集まる機会にもなっています。知識や技術を身につけるだけでなく、情報交換をしたり、親交を深めたりできるため、研修は社員同士の交流の場としても大きな役割を果たしています。

――長期間現場を離れて研修に参加する場合、送り出す側の理解も必要になりそうです。

岩田氏イメージ

その点は、仕組みとして整えています。年1回、行動評価目標や業績評価目標を設定するなかで、本人に不足しているスキルや、今後強化したい点について上司と話し合います。そのうえで、業務上必要なスキルや本人の成長目標に応じて、受講する研修を検討していきます。

山下氏イメージ

また、すべての研修では、受講前に「研修受講指示書」を作成し、上司が受講者に期待することと、それに対する本人の意気込みを記入しています。受講後にも「受講報告書」を作成し、研修で学んだことや、今後の業務への活かし方をまとめます。これにより、目的と成果を、本人と上司の双方で確認できる仕組みとなっています。

岩田氏イメージ

一方、現場から見れば、1か月間人が抜けることは簡単ではありません。そのため、四半期ごとに各事務所の年間計画や人員状況を全国で共有し、どの時期に、どの職場で人手が必要になるかを確認しています。人員が不足する場合には、複数の事務所で構成される地区単位で人員を補い合う仕組みがあります。また、誰がどの研修を受講しているかは、社内ポータルで全社員が確認できるようになっています。こうした情報共有や人員調整を通じて、受講者が研修に集中できる環境を整えています。

石﨑氏イメージ

年間の研修日程は、4月から5月にかけて、ほぼ1年分を調整しています。同じ事務所から複数の社員が同時期に研修へ参加しないよう、日程の重なりを確認しながら何度も見直します。調整には手間がかかりますが、現場の業務と研修を両立させるために欠かせない作業です。

若手育成を支える、指導担当者とテクニカルアドバイザー

――人財育成において、力を入れている取り組みはありますか。

山下氏イメージ

特に力を入れているのは、入社3年目までの若手社員の育成です。新入社員が増えていることもあり、各部署に指導担当者を置き、現場でのOJTを制度として運用しています。さらに、指導担当者を支援する役割として、全国に6人のテクニカルアドバイザー(TA)を配置しています。TAは、長年にわたって技術や現場経験を積んできたベテラン社員が担い、指導担当者への助言や若手社員のフォローを行っています。

岩田氏イメージ

TAには、テクノセンターの拠点長経験者など、経験豊富な社員が就いています。技術面を教えるだけでなく、普段は言いにくい悩みを聞いたり、仕事への向き合い方について助言したりすることも、大切な役割です。

山下氏イメージ

TAは月1回、指導担当者と1 on 1を行い、悩みを聞いたり、助言したりしています。また、入社3年目までの若手社員本人とも年1回面談しています。所属長や指導担当者には話しにくいことでも、別の立場にいるTAになら相談しやすい面があると思います。

岩田氏イメージ

OJTの進捗やスキルの習得状況を確認するため、3年間を通じて活用する約200項目のチェックシートも整備しています。大切なのは、上長や指導担当者だけに任せるのではなく、TAも含めて、みんなで若手社員を支えることです。チェックシートを活用して育成状況を共有・確認しながら、技術面だけでなく、マナーや仕事への向き合い方まで含めて支援しています。

山下氏イメージ

また、新入社員のフォローアップ研修で聞き取った悩みや意見を、指導担当者向けのフォローアップ研修で共有しています。教える側だけでなく、教わる側の声も取り入れることで、現場での指導を見直す機会につなげています。

岩田氏イメージ

若手育成の考え方や指導の立ち位置をそろえるうえでも、指導担当者研修は重要です。誰が担当しても指導の方針が大きくぶれないよう、研修を通じて共通認識を持ち、その後のフォローアップにつなげています。

現場に寄り添い、働きやすさと成長を支える

――女性活躍についても積極的に推進されていると伺いました。

山下氏イメージ

女性が働きやすい職場を目指して、「女性活躍行動計画」を策定しています。前期の5か年計画は2026年3月で終了し、同年4月から新たな5か年計画をスタートしました。

前期には、女性技術職を対象とした意見交換会を実施したほか、月1回のリフレッシュ日の設定を呼びかけるなど、子育てと仕事を両立しやすい環境づくりに取り組みました。育児休業についても、eラーニングや動画教材を通じた周知を毎年行い、本社の月報で取得率を発信しています。前年度の取得率は女性100%、男性82%で、制度の浸透が進んでいると感じています。

岩田氏イメージ

女性が担当できる仕事は、従来の保守業務だけでなく、現在では開発や運用などにも広がっています。一方で、システムセンターの研修施設は、建設当初、主に男性社員の利用を想定していたため、女性向けの宿泊設備が十分とはいえません。女性社員の採用を進めるだけでなく、入社後も安心して研修を受けられるよう、女性社員の利用を前提とした設備へ見直していくことが今後の課題です。

山下氏イメージ

また、もう一つの課題は、新しい業務領域における人財育成体制の整備です。当社は4年前に組織の一部統合を行い、新たな業務領域を担う部署が設けられました。従来の保守・工事分野では育成体系が整っていますが、新しい領域については、まだ試行錯誤している段階です。そこで現在、現場の実情や必要なスキルを整理するため、スキルマップの作成を進めています。現状の技術レベルと不足している部分を明らかにし、研修体系の見直しにつなげていきたいと考えています。

岩田氏イメージ

研修の成果を確認し、次年度の施策に活かすことも重視しています。受講後の報告書に加え、年1回、研修で学んだことが現場でどのように活用されているか、さらに充実してほしい内容は何かを全社的なアンケートで確認しています。そこで得られた意見を翌年度の研修内容に反映し、継続的な改善につなげています。

技術研修と行動改革研修の両輪で、現場力と人間力を高める

――教育体系全体は、どのような考え方で設計しているのでしょうか。

山下氏イメージ

当社は、「自らを磨き続ける者を応援し、社の発展につなげる」を人財育成方針として掲げています。社員一人ひとりが主体的に学び、成長し続けることが、会社の発展につながるという考えです。

教育施策は、現場で学ぶOJTを中心に据えながら、そこで補いきれない部分を研修などのOff‐JTで補っています。研修体系は、大きく技術研修と行動改革研修の二つに分かれています。

技術研修では、業務に必要な専門知識や技術を学びます。システムセンターの実機を使った研修も多く、技術系社員にとって重要な学びの場となっています。また、本人の希望と上司の推薦によって受講する推薦研修を数多く設けていることも特徴です。

一方、行動改革研修では、ビジネススキルやマネジメントなど、身につけた技術を業務で活かすために必要な力を学びます。昇格者を対象とした階層別研修のほか、一定の条件を満たせば、等級を問わず受講できる研修も用意しています。

岩田氏イメージ

研修で学べることには限りがあり、実際の業務を通じて身につけるべきこともあります。現場から寄せられる要望をすべて研修に取り入れるのではなく、何を研修で学び、何を現場で身につけるのかを整理し、両者のバランスを取ることが大切だと考えています。

令和8年度 研修体系図

通信教育で「スキルの強化」と「自律的な学び」を支える

――ここからは通信教育について伺います。貴社ではどのように活用していますか。

石﨑氏イメージ

通信教育は、等級ごとに求められる能力を補う手段として、「能力開発選択研修」に位置づけています。年1回の面談などを通じて、本人に不足している力や今後強化したい点を上司と確認し、その内容に応じてコースを選ぶ形で活用しています。

自己啓発としての通信教育も用意しており、社員がそれぞれ学びたいテーマを自由に選んで受講できます。会社が受講料の半額を補助し、学びやすい環境を整えています。

山下氏イメージ

周知には社内ポータルを活用し、パンフレットやポスターをいつでも確認できるようにしています。ポスターのデザインを毎年変えることで、募集時期の切り替えが分かりやすくなるよう工夫しています。

――通信教育を導入した背景を教えてください。

石﨑氏イメージ

集合研修には、実施できる人数や時間に限りがあり、希望者全員が受講することは難しいという課題がありました。そこで、各自が自分のペースで学べる通信教育を導入し、集合研修だけでは対応できない部分を補えるようにしました。

山下氏イメージ

等級ごとに求められる能力をいくつかの項目に分け、それぞれに対応する推奨コースを示しています。そのコースしか受講できないわけではありませんが、行動評価表や面談内容を踏まえながら、自分に必要な力に応じてコースを選ぶ際の目安として提示しています。

石﨑氏イメージ

指導担当者研修では、事後課題として通信教育を活用しています。集合研修を一度受けただけでは、学んだ内容が十分に定着しないこともあります。そのため、時間を空けて通信教育に取り組み、研修内容を振り返りながら、実際の指導に活かせるよう理解を深めてもらっています。

指導担当者は3月ごろに選任され、集合研修を受講します。4月から実際の指導が始まるため、その初期段階で通信教育に取り組み、半年後のフォローアップ研修では、現場で生じた悩みや工夫を共有するような流れです。

能力開発研修 コース選定イメージ

通信教育の価値は、自分で考え、言葉にすること

――学習手段が多様化するなかで、通信教育の意義をどう捉えていますか。

石﨑氏イメージ

当社ではeラーニングも活用していますが、正解を確認する形式が中心です。一方、通信教育では、テキストを読み、自分で考えたことをレポートにまとめます。こちらのほうが、自分の言葉でアウトプットできるため、理解が深まり、実際の行動にもつながりやすいと感じています。

山下氏イメージ

冊子で学べることも、通信教育の大きなメリットだと思います。電子テキストもありますが、実際には冊子で学んでいる人が多い印象です。短い動画で学ぶ機会が増えている今だからこそ、手元でじっくり読みながら学ぶことが、内容の定着につながりやすいのではないかと感じています。

岩田氏イメージ

今は、知識だけであれば、さまざまな手段で手に入れられる時代です。ただ、得た知識をどう捉え、仕事にどう活かしていくかが重要だと思います。現場では機械の操作だけでなく、人とのコミュニケーションも欠かせません。AIを活用する場面が増えても、最後に向き合うのは人です。だからこそ、正解を覚えるだけでなく、自分で考え、相手に伝える力を身につけることが大切だと考えています。

チームで解決する文化が、 学び続ける組織をつくる

――最後に、学び続ける組織をつくるために大切にしていることを教えてください。

山下氏イメージ

一人ひとりが成長することはもちろん大切ですが、それだけでは組織の力にはなりません。社員が同じ方向を向き、一体となって成長し続けることが重要だと考えています。そのために、人事部として行動改革研修など技術以外の研修も企画し、幅広い学びの機会を整えています。

岩田氏イメージ

管理職研修の運営に携わった際、研修内容を聞くなかで、私自身、日々の業務では目標やノルマの達成に意識が向き、その根底にある経営理念を部下に十分伝えられていなかったことに気づきました。何のために仕事をしているのか、どのような考え方に基づいて行動するのかを、自分の言葉で伝えていくことが大切だと感じています。

石﨑氏イメージ

当社では、本人が希望すれば、保守系の業務からIT系の業務へ移ることもできます。若手社員が、自分のやりたいことや強みを見つけ、それを伸ばしていけるよう支援していきたいと考えています。

――これまでのお話から、貴社の組織力が伺えました。

山下氏イメージ

私たちの仕事は、一人で完結できないものが多くあります。求める人財像にも「チームワークを大切にする人」を掲げており、チームワークや信頼関係を重視しています。チームで仕事をする考え方が定着してきた背景には、失敗を組織の学びに変えてきた積み重ねがあります。一人で抱え込まず、ダブルチェックや情報共有を取り入れて再発を防ぐ。そうした経験を重ねるなかで、チームで取り組むことの大切さが、組織全体に根づいてきたのだと思います。

岩田氏イメージ

社長が「チームで取り組む」ことを繰り返し発信しているほか、社内報や朝礼、会議など、さまざまな場面でその考え方を共有しています。現場でも、課題に応じて関係者を集め、その都度チームをつくって解決にあたっています。そうした積み重ねによって、チームで取り組むことが当たり前になってきたと感じています。

学びを個人の成長にとどめず、チームの力へとつなげていくこと。それが、学び続ける組織をつくるうえでの要だと考えています。

インタビュー

(2026年6月23日 取材・撮影)

2027年度 通信研修総合ガイドのご案内

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