language
  1. TOP
  2. 事例・コラム
  3. 【企業事例】学びを止めない組織が、「100年ブランド」をつくるプロフェッショナル人財育成に向けた新人事制度と学びの支援(株式会社京王プラザホテル様)

事例・コラム

プロフィール

  • 城所 明未 氏

    城所 明未 氏

    1990年入社。宿泊部をはじめ、営業戦略、顧客開発、人財開発などの業務を経験。キャリアコンサルタントの資格を有し、現在は人財戦略部人財開発 統括支配人。
  • 外山 亜美 氏

    外山 亜美 氏

    2014年入社。宿泊部でフロントやゲストリレーションズを経験後、2024年9月から人財戦略部人財開発に所属。通信教育や集合研修などの運営を担当。
  • 園田 優太 氏

    園田 優太 氏

    2019年入社。ルーキーローテーション※で3部門を1年半経験後、宴会サービス、グループ会社への出向を経て、人財戦略部人事に所属。新人事制度の改定プロジェクトを担当。

    ※ルーキーローテーション:サービス職は、宿泊・料飲・宴会、調理職は異なる3分野を研修するプログラム

2026年、新宿の開業から55周年を迎えた京王プラザホテルは、多様なお客様を迎える「プラザ思想」と、新たな取り組みに挑戦する「進取の気風」を大切にしてきました。 2026年3月にスタートした新人事制度で目指すのは、専門性を磨くだけでなく、その知識や技術を次世代へつなぐことのできる「プロフェッショナル人財」の育成です。その実現を支えるキャリア形成支援と、全社員に開かれた学びの機会について、人財戦略部の城所氏、外山氏、園田氏に伺いました。

株式会社京王プラザホテル 様 概要

1971年開業の株式会社京王プラザホテルは、国内でも有数の規模を誇る施設を備えた超高層の国際都市型ホテル「京王プラザホテル(新宿)」の他、西東京地区における地域密着型のコミュニティーホテルとして、「京王プラザホテル八王子」を展開している。

京王プラザホテルを支える「プラザ思想」と「進取の気風」

――まず、貴社の事業内容と企業理念について教えてください。

外山氏イメージ

当社は京王グループのホテル事業を担っており、新宿と八王子でホテルを運営しています。新宿は1453室の客室を有する、都内有数の規模を誇る国際都市型ホテルです。レストランやバー・ラウンジ、宴会場を備え、宿泊をはじめ、食事、会議、婚礼、大型宴会など、幅広い用途でご利用いただいています。アクセスにも恵まれ、国内外から多くのお客様をお迎えしており、宿泊では海外のお客様が8割以上を占めています。

当社では開業時から「生き生きとしたヒューマンスペース<広場>の創造」という基本理念を大切にしてきました。その根底にあるのが、国籍や文化、障がいの有無などにかかわらず、多様な方々をお迎えする「プラザ思想」です。たとえば、障がいのある方だけを対象とした「バリアフリールーム」ではなく、誰もが使いやすい「ユニバーサルルーム」を13室設けるなど、基本理念を具体的な形にしてきました。

もう一つの柱が「進取の気風」です。新宿にほとんど建物がなかった時代にホテルを開業して以来、常設チャペルや4名1室の客室を設けるなど、ホテルの常識にとらわれない取り組みを続けてきました。近年では、本館47階の『SKY PLAZA IBASHO』の開設や、南館2階のXRテーマパーク『ティフォニウム』の導入など、新しい試みを重ねています。多様性を受け入れる風土と、新しいことに挑戦する風土。この2つが、京王プラザホテルらしさだと思います。

――そうした理念や風土は、スタッフの皆様の働き方にも表れているのでしょうか。

外山氏イメージ

そうですね。人財戦略部の立場から見ても、当社には多様な人を受け入れる文化が根づいていると感じます。理念に共感して入社する社員も多く、社内には相手を受け入れ、和気あいあいと協力しあう風土があります。

また、営業部門では、一人のお客様をロビー、フロント、レストラン、宴会場などの各所で、スタッフがお迎えします。さまざまな場面でスタッフが連携するなかで、自然と「みんなでお迎えする」という意識やチームワークが育まれているのだとも思います。

海外からのお客様が多いだけでなく、インターナショナルスタッフも増えています。文化や価値観の違いに戸惑うことがあっても、互いに理解を深めながら一緒に働くことが、次第に当たり前になってきました。お客様から「アットホームな雰囲気」と言っていただくことがありますが、その背景には、こうした社内の関係性の良さがあると思います。さらに、社員発案の企画や部門横断のプロジェクトも活発です。55周年企画では全社からアイデアを募り、「従業員食堂を『みんなのIBASHO』に大改造」プロジェクトを始め、3つの企画が動いています。

園田氏イメージ

最近では、ふるさと納税の返礼品も社内公募で決めました。スタッフの声から新しい取り組みが生まれるところにも、当社らしさが表れていると思います。

外山氏イメージ

理念の浸透に向けては、全スタッフが携帯するサービス手帳や動画を活用しています。入社時研修では、基本理念や行動指針を文字だけでなく映像でも伝え、理解を深めてもらっています。また、理念浸透セミナーを定期的に開催し、全スタッフに受講を促しています。セミナーでは、自分の仕事を振り返りながら、どのような行動が理念や行動指針につながっているのかを、異なる職種のスタッフ同士で話しあいます。理念を知識として理解するだけでなく、日々の行動に結びつけるための取り組みです。

新人事制度が目指すのは、専門性を次世代につなぐプロフェッショナル人財

――2026年3月に新人事制度へ移行されたそうですが、人財育成方針では何を重視されていますか。

園田氏イメージ

新制度では「プロフェッショナル人財の育成」を掲げています。ここでいうプロフェッショナルとは、個人技に優れた職人的な人を指しているのではなく、自らの専門性や技術を磨きながら、それらを次の世代に伝え、育てていける人と定義しています。ですから、専門職だけでなく、マネジメントを担う管理職もまた、マネジメントのプロフェッショナルと位置づけています。

そのうえで、求める人財像として重視しているのは、「プロフェッショナル」「チャレンジ」「ホスピタリティ」の3つの要素です。当ホテルの強みであるチーム力を活かしながら、自分の担当領域にとらわれることなく、周囲に良い影響を与え、次の担い手を育てていくこと。学びをインプットして終わりにせず、日々の仕事で発揮し続けること。そして、お客様にも、他のスタッフにも自ら声をかけ、相手の次の行動につなげるホスピタリティを持つことを重視しています。

人材戦略ビジョン2030

――制度面では、どのような見直しを行ったのでしょうか。

園田氏イメージ

当社が人事制度を改定した背景には、「100年ブランドを築く」という将来像があります。その実現に向けて、京王プラザホテルが安定的に成長し続ける企業であり続けるために、必要な制度のあり方を検討しました。

100年以上続く企業であるために、最も重要なのは人財です。企業の土台は人にあるという考えのもと、新制度では「働きがいの向上」と「生活基盤のさらなる向上と安定」という2つのキーワードを軸に設計しました。

「働きがいの向上」に向けた施策としては、マネジメントコースとプロフェッショナルコースのいずれも、最上位等級まで目指せる仕組みに改めました。旧制度ではプロフェッショナルコースの役割定義が曖昧で形骸化していた面があり、キャリアの選択肢が実質的にマネジメントコースへ偏っていました。しかし、ホテルには現場でこそ力を発揮する人も多くいます。そこで新制度では、等級や役割、処遇を明確にし、どちらのコースでも最上位等級を目指せる制度へと見直しました。
あわせて、評価制度や昇格制度も見直しています。具体的には、評価への納得感を高めるため、複数の視点を取り入れた仕組みを設けました。管理職だけでなく、現場で日々一緒に働くプロフェッショナルコースの上位者が、下位等級の社員の行動についてコメントを蓄積し、管理職が評価時に参考にできるようにしています。

城所氏イメージ

日々の行動を記録できる社内システムも用意しています。評価項目を選び、その項目に関して良かった行動や改善が必要な点を、気づいた時点でコメントとして入力できる仕組みです。人事考課の時期まで待つと、以前の出来事はどうしても記憶が薄れてしまいます。そこで、プロフェッショナルコースの上位者が日々の気づきを蓄積し、マネジメントコースの評価者が人事考課の際に参考にできるようにしました。ホテルの現場は管理職の目が届きにくい場面もあるからこそ、複数の目線を取り入れることが重要だと考えています。

園田氏イメージ

もう一つの柱である「生活基盤のさらなる向上と安定」に関しては、賞与の一部を基本給へ振り分ける見直しや、時代に合わせた手当の再整理も行いました。コロナ禍のように外部要因の影響を大きく受けるなかでも、社員の生活が少しでも安定するよう、仕組みを見直しています。

――新制度の定着に向けて、今後の課題や取り組みをどのように考えていますか。

外山氏イメージ

制度は始まったばかりなので、まずは浸透が重要だと考えています。特にプロフェッショナルコースの最上位層については、これまで社内に明確なモデルがなかったため、「どのような人財がその役割を担うのか」という姿を社内で共有していきたいと考えています。効果的な発信の方法についても、今後検討していきたいです。

園田氏イメージ

ホテルは部門ごとに求められる専門性が異なります。宿泊、料飲、宴会、調理、セールス、経営管理などにおいて理想像は一様ではありません。そのため、共通の考え方を示しながら、各部門に合ったプロフェッショナル像を、現場との対話を重ねながら描いていきます。

新制度とともに進むキャリア形成支援の強化

――制度の改定に合わせて、キャリア形成の支援も強化されたそうですね。

城所氏イメージ

今回の制度改定では、キャリア意識を持ってもらいたいというメッセージを強く発信しています。会社が一方的に道筋を与えるのではなく、まず本人にキャリアについて考えてもらう。そのためのヒントやきっかけとして、キャリア研修、適性診断、多面診断などを用意しています。自分の価値観や強み、周囲からどう見えているかを知ることで、キャリアを自分ごととして捉えられると考えています。

園田氏イメージ

また、以前から活用していた「キャリア申告書」の内容を見直しました。従来は異動希望の確認に寄りがちだったのですが、新制度の導入に合わせて、自分が3年後、5年後、10年後にどうありたいか、強みや課題をどう捉えているかまで整理できるものとしました。さらに、評価面談とは別にキャリア面談の機会を設け、本人、上司、人事が将来の方向性を共有できるようにしています。

外山氏イメージ

研修体系も新制度に合わせて見直しています。従来の昇格時研修や目的別研修の内容を見直すとともに、キャリア支援の研修を強化しました。もともと、入社後に複数部門を経験するルーキーローテーションを経た若手には、本配属後の節目で改めてキャリアを考える研修を実施しています。今後は10年目前後やミドルシニア層にも対象を広げ、自分の経験をどう次につなげるかを考える場を増やしていく予定です。

研修参加を支える工夫とサービス力を高める取り組み

――多忙な現場でもスタッフが研修に参加しやすいよう、貴社ではどのような工夫をされていますか。

城所氏イメージ

対象者本人だけでなく所属長にも受講案内を出し、シフトを調整して参加できるよう依頼しています。当社では長年にわたり「研修は大切である」というメッセージを発信し続けてきたこともあり、現場から積極的に送り出してくれる土壌があります。

外山氏イメージ

また、業務の特性に合わせて、研修の内容や受講方法にも工夫をしています。英語教育では、週34クラスを展開し、教室型だけでなく、各部署への出張レッスン、予約スタッフへの電話での応対トレーニングなど、部署の事情に応じて組み合わせています。調理スタッフへカウンターに置けるサイズの英会話フレーズ集をラミネートして配るなど、すぐに使える形に落とし込む工夫もしています。さらに、英語での接客力コンテストも実施し、学んだことを発揮する場も用意しています。

――そのほか、貴社ならではの特徴的な取り組みはありますか。

外山氏イメージ

ここ数年は外部アセスメントを受け、施設やサービスの状況をチェックしています。調査項目は約500項目に及び、そのうち7割がサービスに関する評価です。どこができていて、何が足りないのかが細かく見えるため、お客様のお名前の呼びかけや笑顔の徹底など、具体的な行動に落とし込んで磨くことができ、サービス力の向上を実感しています。

また、インターナショナルスタッフが働き続けやすい環境づくりにも取り組んでいます。国や文化によって仕事やキャリアに対する考え方が異なることもあるため、上司も参加する座談会を設け、本音を聞いたり意見交換をしたりすることで、相互理解を深めています。

城所氏イメージ

そうした文化の違いを踏まえ、上司向けと本人向けに分けた異文化コミュニケーション研修も行ってきました。現在は、特別な場を設けなくても日常的にインターナショナルスタッフの声を拾えるようになり、職場への定着も進んできたと感じています。

キャリアマップ・役割等級基準

通信教育は全員に開かれた学びの機会

――ここからは通信教育について伺います。貴社では通信教育をどのように位置づけていますか。

城所氏イメージ

私は通信教育を「最後の砦」だと思っています。私たちは研修を数多く企画していますが、受ける側の立場に立つと、すべての社員に十分な機会が行き渡るわけではありません。現場の繁閑もあれば、職種によって必要な研修も違います。昇格時研修や営業研修など対象者が限定されている研修も多くあります。

その点、通信教育は年2回の募集があり、誰でも受講することができます。研修や資格取得の前に、まずここで学んでみようと思える。平等にみんなに開かれた学びの機会であるということが、通信教育の意義だと思っています。

外山氏イメージ

通信教育の良さは、会社として今学んでほしい内容を届けながら、最終的には本人が自分で選べることです。学習手段はさまざまありますが、日々の業務に追われるなかで、自分に必要な学びを自ら探し出すのは簡単ではありません。当社では約160講座を用意しており、その中から自分が学びたい内容を、自分のタイミングで学べることが通信教育の大きな特長だと考えています。

今回の人事制度改定のタイミングで、通信教育の支援も拡充しました。昇格要件となる講座は修了すれば実質100%補助、一般講座も70%補助です。これにより、必要な学びを会社として後押しする姿勢を、より明確に示しました。

一方で、通信教育は昇格要件を満たすためだけの仕組みではありません。実際、受講者の内訳を見ると、全体の約6割は一般講座で、自己啓発のために自ら選んで受講しています。また、1講座で要件を満たせる人が、あえて2講座、3講座と受けるケースもあります。若手社員からも、入社時点で「気になるので受けてみたい」という声が出ており、学びへの意欲の高さを感じています。

――ホテル業において、通信教育が特に有効だと感じる理由は何でしょうか。

外山氏イメージ

一番大きいのは、働き方に合っていることです。ホテルはシフト制で、全員が同じ時間に集まるのが難しい職場です。夜勤もあれば、料飲部門のようにランチとディナーの間の時間のほうが動きやすい部門もあります。集合研修だけでは、勤務時間やシフトの違いによって、すべての社員に学びの機会を届けることが難しい面があります。その点、通信教育であれば、自宅や隙間時間を使って、自分のペースで進められます。

もう一つは、業務でパソコンを使わない社員が多いことです。eラーニングも増えていますが、当社では紙の教材や冊子にもメリットがあると考えています。インターネットへのアクセス環境がなくても必要なときにすぐ確認したり、学習を進められ、学習後も手元に残していつでも見返すことができることが、現場の社員に合っていると感じています。

学びたい気持ちを引き出す冊子づくりと周知の工夫

――受講促進の面で、工夫されていることはありますか。

外山氏イメージ

まず大切にしているのは、募集冊子そのものを「持ち歩きたくなる冊子」にすることです。勉強の案内は、どうしても義務感を与えがちです。だからこそ、表紙やデザインから親しみやすさを出し、「見てみようかな」と思ってもらえる冊子にしたいと考えています。

また、今年度は、講座のカテゴリ分けも大きく見直しました。たとえば、マネジメントカテゴリを、リーダーシップ、チームマネジメント、セルフマネジメントといった小カテゴリに分けて紹介することで、自分に必要な学びを選びやすくしています。さらに、おすすめコメントやランキングも取り入れるなど、工夫を重ねています。

私自身、もともと通信教育を受講していたこともあり、受講者の立場に立って、興味・関心を引くコース選定やデザインにこだわっています。

また、全員に行き渡る冊子だからこそ、メッセージ性を持たせることも大切にしています。社長メッセージや中期目標、人事制度の特集ページも盛り込み、単なる講座案内ではなく、会社からのメッセージを伝えるツールにしています。

周知の方法にも工夫があります。冊子は各部署に届け、新入社員には研修の場で中身まで説明します。社内パソコンでの通知に加え、従業員食堂やロッカールームなど目につく場所へポスターを掲示し、締切前には「あと1週間」とリマインドも行います。業務でパソコンを使わない社員も多いため、紙、掲示、メールと複数のルートで届けることを徹底しています。「ご相談ください」と明記しているので、迷ったときに私たちへ相談しやすい環境づくりをしています。

さらに、修了者の情報を毎月全社向けに発信しているのも特徴です。修了者を称えると同時に、「自分も頑張ろう」という空気をつくり、次の受講や、計画的な修了を後押ししています。こうした小さな仕掛けの積み重ねが、受講率の向上につながっていると感じます。

経験と知識を往復しながら学びを止めない組織へ

――最後に、学び続ける組織をつくるうえで大切にしていることをお聞かせください。

外山氏イメージ

社内では以前から「学びを止めない」という言葉を発信してきました。管理職になっても学び続けること、インプットとアウトプットを止めないことの大切さを、これからも伝え続けていきたいと思っています。

城所氏イメージ

人生100年時代と言われますが、仕事人生においては、経験だけでも知識だけでも十分ではありません。経験し、学び、そしてまた経験する。その繰り返しがあってこそ、人は成長するのだと思います。変化の速い時代だからこそ、現場での実践に理論を掛け合わせることがますます重要になっています。

個人の成長が会社の成長につながるという考え方は、当社がずっと大切にしてきたものです。会社は学べる環境を用意し、その環境を一人ひとりが活用していく。そうした循環をこれからもつくっていきたいと思います。

「学びを止めない」主体的・継続的な学びを後押しする情報発信の工夫

(2026年6月26日 取材・撮影)

2027年度 通信研修総合ガイドのご案内

PAGE TOP