【SANNOエグゼクティブマガジン】目標による管理・人事評価制度を定着化させるスキル習得アプローチ「目標明確化スキル」

前回、目標による管理・人事評価制度を定着化させるスキル習得アプローチのひとつとして、「組織目標意味づけスキル」を紹介しました。前回に続きスキル習得アプローチの2つ目として、「目標明確化スキル」を紹介いたします。

1.目標の明確化が評価の納得性を高める

上司の評価に納得できない部下もいます。一方の上司には、部下の自己評価が甘く見えることがあります。こうした評価のギャップを生じさせないために、注目すべきは期首に設定する目標です。

目標があいまいであれば、目標の解釈に幅が広がり、自ずと部下と上司の目標の解釈にギャップが生じてしまい、評価への納得度にも影響するのです。「目標のあいまいさが評価のあいまいさにつながる」と言っても過言ではありません。そこで今回は、目標を明確に設定するスキルを紹介します。

2.目標の表し方の3つのポイント

目標の表し方についてポイントを知るだけで、目標を明確に設定できるようになります。目標を明確化する3つのポイントを示します。図表1を参照しながら本文を読んでください。

まず目標を目標項目(何を)と達成基準(どのくらい)に分けます。「目標項目(何を)」が目標の方向性を示し、「達成基準(どのくらい)」が目標レベルを示します。例えば営業担当者なら目標項目に「新規開拓強化」を掲げ、達成基準に「4件以上受注する」と表すのです。
図表1.達成基準の3つのタイプ

3.3つのタイプの達成基準で表す

引き続き図表1を参照してください。次に、抑えておきたいのは、達成基準のタイプです。「4件以上受注する」という達成基準は数値で表しています。これを「数値基準」と呼びます。このような数値化が難しい目標の場合には、「スケジュール基準(期限までにやるべきこと)」「状態基準(期限までにめざす状態)」で表しましょう。

例えば、目標項目が「業務の標準化」なら、「年度内に業務マニュアルを作成する」というように、スケジュール基準の「いつまでに○○をする」と表します。これで目指す成果はハッキリします。

もう1つの「状態基準」は「顧客の問い合わせ対応力向上」を目標項目に掲げた例で紹介します。その達成基準を「社内からの問い合わせにその場で回答できるようになる」と目指す望ましい状態を表すのです。状態基準は、例えば「自己啓発目標」や「部下指導育成目標」で表されます。

4.仕事を目標に転換する

「仕事と目標の違いは何か」と問われたら、皆さんはどう答えるでしょうか。仕事を目標に転換することで、目標をスッキリさせることも可能です。 図表2をもとに営業担当者の仕事で考えてみましょう。
図表2.仕事を目標に転換するシート
顧客への提案業務は、仕事そのものです。現在の状態は「上司の指導があれば、見積書・提案書を作成できる」レベルとします(これが現状レベルに該当)。その場合、達成基準(目標レベル)を「一人で見積書・提案書を作成できる」、さらに「上司の支援のもとに、顧客に提案説明できる」と示すのです。このレベルを目指すことを目標項目である「顧客への提案力向上」として示します。このように、目標は目指す成果があり、レベルアップを図るものなのです。

今回は以上です。図表のシートは表計算ソフトなどを使ってぜひ活用してみてください。きっと、目標が明確になり、人事評価の際に上司と部下の目標の解釈のズレが少なくなるでしょう。