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  3. 【企業事例】人こそが価値創造の源泉~社会を支え続ける明電舎の人財育成と自律的キャリア開発支援~(株式会社 明電舎様)

事例・コラム

プロフィール

  • 毛利 亜紀子 氏

    毛利 亜紀子 氏

    人事統括本部 人事企画部 人財育成課長
    入社後、沼津事業所の安全衛生業務を経験。
    2001年に人事企画部に異動し、労務管理や福利厚生、健康管理、人財育成業務に従事。
    2024年7月に人財育成課長に就任、現在に至る。
  • 梅澤 侑来 氏

    梅澤 侑来 氏

    人事統括本部 人事企画部 人財育成課
    2024年に入社し、人事企画部にて新入社員研修などの階層別研修を担当。
    また、通信教育制度の運営を担っており、若手としての視点を活かし、自己啓発の施策向上へ向けた取り組みを行っている。
  • 鈴木 由美子 氏

    鈴木 由美子 氏

    人事統括本部 人事企画部 人財育成課 主任
    入社後、沼津事業所の総務・人事業務を経験。社会貢献活動の企画・運営をはじめ、幅広い業務に携わる。
    2018年に人事企画部に異動し、研修・教育を担当。キャリア開発に関する取り組みなども担当している。

「人こそが価値創造の源泉」という考えを根底にもち、人と人とのつながりを大切に、技術教育や次世代人財育成など、計画的かつ多角的な人財育成を進める株式会社 明電舎。
人事統括本部 人事企画部 人財育成課の毛利様、鈴木様、梅澤様に、企業理念や人財育成方針、通信研修の活用方法などについてお話を伺いました。

株式会社 明電舎様 概要

株式会社明電舎は1897年創業の電気機器メーカーで、電力・交通・水処理など社会インフラを支える事業を展開。
国内外に40のグループ会社をもち、連結従業員数は約9,800名、単体では約4,100名。(2025年3月末時点)

社会インフラを支える明電舎の事業と理念

――はじめに、貴社の事業内容をお聞かせください。

毛利氏イメージ

明電舎は120年以上にわたり、生活に不可欠な社会インフラを支えてきた会社です。現在は「電力インフラ」「社会システム」「産業電子モビリティ」「フィールドエンジニアリング」の4つの事業グループを中心に、国内21社、海外19社のネットワークを活かし、国内だけでなく、グローバルにも事業を推進しています。

鈴木氏イメージ

各事業の主な概要としては、電力インフラ事業では発変電設備や再生可能エネルギー関連製品の提供を通じて安定した電力供給を支え、社会システム事業は上下水道、鉄道や公共施設等に向けて発変電設備や監視制御システムを提供し、社会インフラ整備に貢献しています。
産業電子モビリティ事業ではモータ・インバータによる電動力応用システム、半導体向け製品の提供により産業の進化に貢献し、フィールドエンジニアリング事業は各種設備やシステムの保守・メンテナンスでインフラの安定運用を支えています。

――次に、企業理念について教えてください。

毛利氏イメージ

企業理念は、企業使命である「より豊かな未来をひらく」と、提供価値「お客様の安心と喜びのために」の2つで構成されています。創業者の重宗芳水の志を受け継ぎ、時代の移り変わりとともに進化し、共有されてきた価値観で、すべての事業活動の根幹に据えられています。

鈴木氏イメージ

企業理念を浸透させるために、新入社員研修をはじめとした階層別研修の場を活用して、企業理念やビジョンを丁寧に説明し、自分たちの存在意義の再確認を繰り返し行っています。

※ 明電舎=「電気の力で世の中を豊かにする」という志をもった仲間が集う場所

一人ひとりの成長を支える人財育成方針

――人財育成方針や求める人財像について教えてください。

毛利氏イメージ

人財育成方針には大きく2つの柱があります。1つ目は「人こそが価値創造の源泉」、もう1つは「主体的な学び、応援する風土へ」です。経営戦略や事業戦略と連動し、この2つを推進することで、従業員一人ひとりの個性や強みを最大限に引き出し、プロフェッショナル集団になることを目指しています。これらを実現するために、求める人財像を「考動」「共動」「共育」と定めています。自ら考えて行動し、多様な個を受け入れ、新しい価値を創造できる人財です。

鈴木氏イメージ

実際に、常に新しい技術や知識の習得に積極的に取り組みながらも、人間的な温かさを持つ人が多く、先輩が後輩を丁寧に指導し、チーム一丸となって課題に取り組む風土があります。困ったときに必ず手を差し伸べてくれる先輩や同僚が多いことは、新入社員からも高く評価されています。

求める人財像

求める人財像

――中期経営計画を踏まえて、どのような人財育成の各施策を進めているのでしょうか。

鈴木氏イメージ

昨年度に終了した「中期経営計画2024」では、先ほどご説明した人財育成方針などを新たに策定し、キャリア自律のための各種環境整備を行ってきました。
具体的には、2023年に「社内インターンシップ制度」を、2024年には「社内兼業制度」を新設しました。「社内インターンシップ制度」は、期間限定で他部署を体験できる機会で、自分のキャリアや適性を考えてもらうための制度です。「社内兼業制度」は、公募制の兼務職で、本人のスキルや経験を活用し、社内での活躍の場を自ら拡げる取り組みです。
双方とも、従業員のキャリア開発のための自発的なチャレンジを後押しして、働きがいの向上などにつなげていく狙いもあります。加えて、各職場において異なる視点や多種多様な専門知識の融合などが生まれて、組織を超えた人財シナジーによるイノベーション促進へつながることも期待しています。

毛利氏イメージ

2016年から、新入社員に年次の近い先輩が相談役になるメンター制度を運用しているのですが、昨年から新たにサポーター制度も導入しました。(下図参照)
メンター制度は、「メンター(自部門以外の先輩社員)」と「メンティー(メンターから助言・指導を受ける若手社員)」でペアを組み、メンタリングを行います。
当社では、メンターをシニア、メンティーをジュニアと呼び、複数のペアを集めて「ファミリー」を形成し、本制度に取り組んでいます。
また、メンター(シニア)へのサポートや、世代を超えたつながりの創出を目的に、2024年11月からサポーター制度も導入し、今後を担う人財の支援・育成を企業全体で取り組んでいます。
サポーター制度には部長クラスの人も手を挙げて参加しているなど、社内ではとても好意的に受け入れてくれていると思います。

毛利氏イメージ

2027年度までの新中期経営計画では、こういった施策の更なる活用促進と拡充を考えていますが、キャリアの自律に関しては、特に注力していきたいと思っています。従業員のキャリアは、従来は会社が方向性を示していましたが、これからは従業員が主体的に学んで、キャリアを磨くことがとても重要だと思いますので、追加の施策も検討しているところです。

鈴木氏イメージ

キャリア自律を支える環境整備としては、マネジメント層の部下のキャリアを踏まえた人財育成・支援も大切になると考えています。これまでも上司による自己申告面談などはありましたが、キャリアの観点でも更なる対話やコミュニケーションが必要になってきますので、そうした支援力向上の施策も進めていきたいと考えています。

明電舎のメンター制度

明電舎のメンター制度

技術を高め、人間関係を深める研修体系

――従業員への教育施策について、教えてください。

毛利氏イメージ

教育体系としては、下記の図の通りとなっています。
まず当社は、メーカーですから、技術教育に関しては特に力を入れています。近年の主な取り組みとしては次の3つになります。
1つ目は、若手社員を対象として、2018年度から、技術系・事務系問わず明電舎の技術や製品を理解するために欠かせない、電気に関する知識を学ぶ教育を実施しています。
2つ目は、2019年度から始めたICT教育で、DX人財育成のためのリテラシーとして欠かせないデジタル関連の基礎教育・デザイン思考の教育にも取り組んでいます。
3つ目は、2020年に体験型技術研修センター「Manabi-ya」を開設し、リアルとバーチャルを融合し、実機を使った実習やVRによる安全体感・遠隔研修などを実施しています。これも技術系・事務系問わず、技術研修の受講を促しています。

鈴木氏イメージ

他にも、新入社員研修については特徴的で、メーカーらしさと、当社らしさが表れていると思います。

梅澤氏イメージ

ドローンを活用する研修がその一例です。自分たちでドローンを飛ばすプログラムを作成し、実際に飛ばしてみる研修で、新入社員からの評判も良かったです。
また、総合職として入社すると、約3か月間にわたる集合研修では、技術に関する知識習得や、社会人としてのマインドセットなどを行います。私の場合、グループワークや班活動を通じて同期とのつながりを深め、将来にわたって助け合える関係を築けたことが本当に良かったと思います。

毛利氏イメージ

私もいまだに同期とはつながっていますね。配属後はバラバラになってしまいますから、このような新入社員時代のつながりは、とても大切にしてほしいと思っています。
当社には、「つながりをつなげよう」という言葉があります。求める人財像の「共動」「共育」やメンター制度などもそうですが、さまざまな施策に、従業員同士をつなげる仕組みを取り入れることを大切にしています。

明電舎の研修体系図

明電舎の研修体系図

自律的なキャリア形成と学びを支える通信教育

――人財をとても大切にされている印象を受けました。そのような中で、通信教育の位置づけや活用について教えてください。

梅澤氏イメージ

新中期経営計画の中で、自律的なキャリア形成の話がありましたが、それを実現するには、自律的な学びがセットであるべきだと考えています。通信教育は、一人ひとりが自らのキャリアを考えて学習内容を選択できて、自身のペースでスキルを高めていくことができます。キャリア形成の意味でも、とても重要な教育施策です。
業務知識や技術スキルに直結するコースだけでなく、最近では、当社で取り組んでいるキャリア形成施策や健康経営に沿って「キャリア開発」、「健康管理」といったカテゴリを設け、コースの充実を図っています。専門外の知識にも挑戦できますので、キャリアの幅を広げる機会になっています。

――自己啓発受講がほとんどということですが、受講状況や修了率はいかがでしょうか?

梅澤氏イメージ

通信教育は年4回の募集があります。当社の従業員は約4,000名ですが、1年間で1,000名近くが受講している計算になります(同一人物の複数講座受講を含む)。修了率は全体でおおむね8割前後と高い状態を維持しています。

毛利氏イメージ

高成績で修了した場合の優秀修了率としては、コースや年度によって異なりますが、8割程度ですから、これもかなり高いのではないかと思います。

――受講人数、修了率、優秀修了率ともにとても高いと思います。何か工夫をされている点はありますか?

梅澤氏イメージ

受講人数を増やす施策としては、まず、社内ポータルでの情報発信を強化していて、申込期間や人気講座ランキング、新規講座の案内を定期的に行っています。まず知ってもらい、興味・関心を持ってもらえるよう、周知内容に少しずつ変化をつけて工夫しています。

鈴木氏イメージ

受講案内のタイミングも工夫しています。例えば、階層別研修や技術研修直後に関連コースを案内することで、学びのモチベーションが高いうちに次の学習へとつなげる、といった具合です。こういった施策を打つタイミングは、とても重視しています。

梅澤氏イメージ

通信教育のコース紹介には、「職場内教育(OJT)連動推奨コース」を掲載しています。これは、ビジネススキルの習得を目的に、明電舎として推奨する通信教育を体系化しているものです。
対象層やテーマに沿った推奨コースを設定していますので、受講コースの選択に迷ったときに自分の状況に合わせて計画を立てることができ、参考になっているようです。例えば「読む力・聴く力」や「論理思考」など、テーマ別にいくつかのコースを紹介していますので、各自が身につけたい内容に応じて選択することができます。

鈴木氏イメージ

また修了時には上長へ修了報告を行い、タイミングよく職場でのフィードバックやキャリア面談の材料として活用できるようにしています。細かな点ではありますが、職場でのキャリア開発におけるコミュニケーションツールとなることを期待して、取り組んでいます。

毛利氏イメージ

受講案内や修了報告の話がありましたが、当部では、こういった施策のタイミングは、こだわりを持って取り組んでいます。

梅澤氏イメージ

修了率と優秀修了率については、会社の受講費の補助も大きいかもしれません。修了したら6割、優秀修了であれば会社が全額補助していますので、みなさん全額補助の優秀修了を目標にしてくださっていることは実感します。

毛利氏イメージ

人財育成方針にある通り、価値創造の源泉である「人」を大切に想い、個を高め従業員の「キャリア自律」を支援することを人財育成の柱と位置づけていて、通信教育や資格取得支援制度はその具体的な施策の一つとしています。この考え方に基づき、通信教育の補助率を高く設定することで、従業員が自発的に学びに取り組みやすい環境を整えています。当然、知識やスキル向上による業務遂行度アップの期待はしていますが、従業員一人ひとりが、自分の価値を高めていくことはモチベーション向上にもつながっていると考えています。

――本学の通信研修に関して、期待していることはありますか?

鈴木氏イメージ

「通信研修総合ガイド」を拝見するのを毎年、とても楽しみにしています。もちろん各社の事例や専門家インタビューもよいのですが、この変化の激しい時代に、どんな新コースが出るのかが、特に興味深いです。新コースのテーマは、今社会的にどのような知識やスキルが求められているのか、ある種の道標のようなものではないかと思うからです。
また通信研修とは異なりますが、SANNO e ACADEMYを2024年度から導入しました。導入の理由は、やはり忙しい従業員が多いですから、動画学習はいつでもどこでもできると考えたためです。導入以来、少しずつ社内の認知度も上がっていて、受講者数が増え始めているところです。
新コースや動画コースなどの新しい取り組みは、学びの内容で若い世代とコミュニケーションすることもできますので、毎年とても期待しています。

( 2025年7月31日 取材・撮影 )

通信教育受講者数向上の工夫

通信教育受講者数向上の工夫

「人こそが価値創造の源泉」を会社が体現していることが従業員にしっかりと伝わり、それが通信教育の受講者数や修了者数、修了率にも表れているのだと感じました。

2026年度 通信研修総合ガイドのご案内

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