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これからの人事制度の方向を考える~社会動向から世の中を見る

SANNOエグゼクティブマガジン


行動変革を促す人事制度の構築が課題

成果主義の次は何主義か? 戦後の産業界の人事制度は、年功主義、能力主義、成果主義といった、「○○主義」というキーワードのもとに画一的な仕組みとして構築、運用がされてきましたが、その時々の国内の経営環境を背景にしている点が特徴です。年功主義は、戦後の復興から高度経済成長に向けて「経営者サイドの労働力の安定確保」と「労働者サイドの雇用の場と賃金の安定確保」という長期雇用を前提とした労使のニーズが一致したことがベースにありました。また、職能資格制度に代表される能力主義は、経済の成熟化が進む中でポスト不足が生じましたが、ポストに代えて資格を付与することで社員のモチベーションを維持・向上することが狙いにありました。ただし、能力主義といっても中長期的に処遇等に格差が付いていく程度で、実態は、年功をベースに運用されるケースがほとんどでした。その後、バブル崩壊という大きな環境変化の中で、目標管理をベースに短期的な成果で処遇をする成果主義の導入が進み、今日に至っています。

一方、これからの人事制度を考えるに際しては、国内環境に留まらず、グローバルな環境変化をふまえた人事制度のあり方を追求することが課題となります。たとえば、海外企業との競争に勝つためには、今まで以上に「知恵の創出」や「創造力の発揮」が不可欠となります。しかし、人件費の圧縮や年功賃金の是正という処遇政策の側面ばかりに意識が奪われ、短期的な成果を追求する仕組みによって、社員は将来に向けて挑戦(チャレンジ)するどころか、萎縮(シュリンク)してしまう状況すら見受けられます。経験したことがない未知数のテーマへの挑戦には、試行錯誤やリスクが伴いますが、リスクヘッジをしながらも新たな挑戦を許容できない人事制度では、社員は挑戦をしなくなり、結果として競争に負けるという悪循環に陥ります。収益を追求すること自体は、不可欠なことであり、数値目標を設定することも必要ですが、収益を重視するからこそ、収益の実現に向けて新たな智恵や創造力を発揮して挑戦を促し、その取り組みの事実を評価する仕組みが必要ではないでしょうか。組織としては収益目標を追求し、社員個々人は、その実現に向けての取り組み内容を目標として設定し、その遂行の事実を貢献度の視点から評価することによって、行動変革を促す人事制度の構築と運用が課題です。

プロセス重視の視点を持つ

行動変革を促進するためには、収益目標の達成に向けて「プロセスでチャレンジする課題」の設定が鍵を握ります。自社の目標管理制度の運用を見た場合、評価の客観性を高めるために、目標を数値化することばかりが意識され、目標達成に向けてのプロセスは二次的な位置づけ、あるいは意識すらされないものになっていないでしょうか。プロセスでチャレンジする課題の設定は、特別な内容を設定するわけではありません。たとえば、大学合格を目標とする高校生がいたとすれば、「目標とする大学に合格するために、英語の偏差値を○○まで上げる。また、そのために1ヶ月で問題集を仕上げる」といった、自分の強みや弱みを踏まえた具体的なチャレンジ課題を明確にして、日々努力をしています。それが企業における目標設定になると、「○○億円の達成のために、顧客ニーズを把握し、積極的な営業活動を推進する」といった前向きな言葉の羅列や、毎回、同じような内容が記述されるというケースが散見されます。「高校生の目標と社会人の目標とでは、次元が違うではないか」との指摘もあるかと思いますが、高校生ですら自分の目標達成に向けて具体的な課題にチャレンジしているのです。まさにチャレンジ目標とは、プロセスでチャレンジする課題を顕在化したものと言えるでしょう。テーマによっては、プロセスでチャレンジする課題を発見しただけでも高く評価できるケースもあるかもしれませんが、「プロセス重視」の視点を、特にトップ層や管理職層には意識してもらいたいと考えます。

人材育成の視点から運用する

人は経験を通じて成長すると言われますが、過去の経験の蓄積で対応できることだけに取り組んでいては、成長が止まってしまいます。大事なことは、新たな経験という「質」です。上記の「プロセス重視の視点」に基づけば、プロセスでチャレンジする課題への取り組みが新たな経験につながります。過去において自身が大きく成長した時のことを思い出してみてください。その時は、自分にとって未経験の課題に挑戦して試行錯誤の取り組みをしたことと思います。まさに人材育成は「人材鍛錬」そのものです。

一方で、「人事評価は人材育成を目的に実施するもの」と言われながらも、実際の管理職による運用を見ると、単に昇給額や賞与を決定するための査定手続きで終わっているケースが多いのではないでしょうか。プロセスでチャレンジする課題への取り組みを検証することによって、部下の指導・育成ポイントが把握できます。人事評価は、プロセスの取り組みを検証して次に生かすことによって成長を促進するために、実践することが必要です。「当社の人事制度は運用に負荷がかかり過ぎる」という意見を聞くことがありますが、このような意見は、社員の成長を促進し、付加価値を生むための負荷と認識できていないことから生じています。

これからの人事制度は、画一的な○○主義への後追い的な対応ではなく、グローバル規模での環境変化に対応するために、自社の人事制度(採用・配置・育成・評価・処遇等)を今後どのようにするのかについて、自社の事業戦略に基づきトップ層が主体的に考え、意思決定を行い、強いリーダーシップを発揮して、社員の行動変革を促進することが必要ではないでしょうか。


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