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成長戦略推進の3つの落とし穴~最近の傾向・ご支援から見えること

SANNOエグゼクティブマガジン


“今後成長する市場や製品領域に向けた成長戦略を早く推進したいが、対応が遅れている”というトップの方の悩みは、つきないようです。成長戦略が、つまずき、足をとられる落とし穴が3つあります。この落とし穴を回避することで成果に結びついていきます。

過去の財産に縛られ、将来を描けない

成長戦略の対応が遅れている企業は、将来に向けた開発の必要性はわかっている企業がほとんどです。しかし、新たな対応が進まない大きな要因は、過去・現在をリードしている中軸商品や販路です。売上の7~8割を、旧来の伝統的商品や販路が占めていると変化への対応スピードが遅れてきます。軸足がまだ、旧来の分野におかれているのです。「まだ、旧来のやり方でも大丈夫」という意識が組織対応の遅れとなり、徐々に収益低下という事象となってきます。

この「新たな対応が遅れても大丈夫」という安心感は、実は危険な組織病です。一人であれば良いのですが、組織に蔓延すると、企業全体の対応力を遅らせる結果となります。すなわち企業が過去に縛られているのです。

この過去の呪縛を防止するには、イノベーターが必要です。しかし、イノベーターは、組織内の伝統的勢力と利害関係がぶつかるため、トップの支援がないと難しいのが実情です。イノベーターは、未来からのアプローチが必要です。「未来の市場・社会」、「未来の仕事・生活」、「提供商品の未来」といった社会の未来像と、その未来像に合わせた製品サービスおよび提供インフラのデザインが必要となります。この未来アプローチには、5年先、10年先、長い場合には30年先の環境予測が必要です。

導入期から成長期の戦略ギアチェンジができない

現在成長しているスマートフォンは、導入後1~2年であっという間に、成長期になり、従来の携帯電話を代替しています。また、電子マネーのSuica® (*1)の仕組みも、2~ 3年で短期間に普及しました。この2つの事例は、導入から成長するまで、普及拡大が組織的にスピード感を持って行われています。

ある成長分野で数社が参入して市場地位を作った後、成長期ではコスト競争力、すなわち安く量産化できるビジネスモデルが求められます。

この成長市場にアジア企業が低価格製品でキャッチアップし、シェアを拡大して上位企業の市場を切り崩している例が見られます。その結果、導入期に成功した上位企業は、アジア企業にシェアを取られ、大規模投資が過剰投資になる傾向があります。

導入期の後半には、コスト低減、物流網や協力生産工場のネットワークを早く作り、短期間に成長スピードに乗る水平展開の仕組みが必要です。さらに、製品の先行実績をもとにした販売方法の標準化も求められます。すなわち、成長期にスピードの出る戦略ギアにチェンジできるかが重要になるの
です。この量産化に合わせた原価低減と販売ノウハウの標準化がされれば、成長に向けた基盤となります。

成長期の商品なのに、販売店での売り方がバラバラで、加速度がつかないという状態が往々にしてありますが、これを回避して、早く販売の基盤を整備する必要があります。

市場が海外となると、製品の販売方法、ものづくりのノウハウを標準化して移管する必要があります。生産ラインや金型のハードの海外移転はしやすいですが、生産技術や販売ノウハウの移転は、人づてで苦労している実態があります。全く知識・経験のない人に、一からこのノウハウを短期間に注入するには、自社なりの工夫された「仕組み」が不可欠です。

成長源泉の知的財産の管理が不十分

企業活動においても、製品開発のための特許確保・防衛や商標権や運営ノウハウは、企業の生命線になっています。日本の先駆的技術が、海外に技術流出し、模倣されているケースが多々見受けられます。その理由は、ライセンス供与や技術者のヘッドハンティング、企業買収等による技術情報の流出です。また、ライセンスの改良技術が先方に帰属するケースなどもあります。ある国に供与されたライセンス技術が改良され、その改良技術が相手の国・企業の権利になってしまう事例が問題となっています。

過去、何十年と投資してきた開発技術が、技術流出により1~2年位でキャッチアップされるという危険があります。

すべてをデジタルで管理すると標準化にはなりますが、匠の技のようなアナログの世界も重要ではないでしょうか。人づてで10 年位かけて技術を伝承する方法もあります。模倣されにくいのは、人に帰属するものか、いくつかの技術を組み合わせて社会のしくみ、すなわちビジネスをモデル化したものです。

一方、技術以外の地名・製品の商標やキャラクターなども知的財産であり、重要な競争力の源泉です。ハード競争からソフト競争になると、このソフトな知的財産をいかに活用するかが、企業の業績を左右します。

たとえば、コミックやアニメのキャラクターや人物の画像等は、様々な形で商品化されています。認知度の高い「ドラえもん®(*2)」、「ポケモン®、ポケットモンスター®(*3)」、「ハローキティ®(*4)」、「ミッキーマウス®(*5)」などのキラーコンテンツは、世界に通用する大きな知的財産で、巨大なビジネスになって企業の収益に大いに貢献しています。

ライセンス供与や改良技術の帰属、さらに商標やキャラクター等の知的財産管理は、今後の成長の鍵です。国により契約内容が異なるので、ジェトロや商社・金融機関などの支援を受けながら知的財産管理ができる人財の育成が重要です。

以上のように成長戦略の落とし穴に注意し、コスト競争力の強化と販売ノウハウの標 準化と知的財産管理を進め、スピーディー に成果を実現していただきたいと思います。

【註】

(*1)Suica®は東日本旅客鉄道株式会社の登録商標です。
(*2)ドラえもん®は株式