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【SANNOエグゼクティブマガジン】コーポレートガバナンスコードが意味するもの 経営陣のためのワークショップ ~自己のリーダーシップと経営哲学を確立するために

SANNO Executive Magazine コラム【経営の視点】

 コーポレートガバナンスコード【原則4-14】において、「取締役・監査役のトレーニング」が定められました〔1〕。
 本学では、例えば下記のような事例をテーマに、受講者である役員の皆さまと討議を重ねながら、必要な知識の習得や研鑽をしていただいております。

1.「不正」のふたつの形

 会社を揺るがすような大事件に発展する「不正」や「不祥事」には、大きく分けて2つの形があると思います。

 ひとつはエンロンのような「ドラマ型」です。非常に華やかで大胆かつ大掛かりな経営者自身の手によって仕組まれた「不祥事」です。
 例えば2001年に起きたエンロン事件を思い返してみましょう。21000名の従業員を抱え全米7位の売上を誇る優良(と思われていた)企業が、「会計不正を行っている」という内部告発によって、半年も経たぬ間にあっけなく倒産してしまいました。その後内部統制ブームが起こり、日本にもJ-SOX法〔2〕が制定されたことは言うまでもありません。たくさんの暗黙知を明文化する作業に追われました。

 なぜエンロン事件が起きたのか、会社の仕組みの面から、法制度の面から、そして人の心の面から様々な研究がなされています。当時のエンロン経営陣がどのような思いで不正に手を染めたのか、真実は当人にしか分からないでしょうが、結果だけを見れば経営陣が自ら手を下して、大きく数字を塗り替えていた(決算書の数字を架空のものに置きかえていた)ことは揺るぎない事実です。本来決算書というものは、経営の実態を映し出す写像(鏡)でなくてはならないのに、架空の取引をもとに実態のない亡霊を作り出してしまったのです。「全米7位の売上」というのも、今や実態のないものだったと言わざるを得ません。

 その一方で、日本国内における不祥事事案は、上位目標や方針に対し、現場は「なんとか達成せねば」と脅迫観念に駆り立てられ、起きてしまうことが多いようです。
 非常に興味深いことは、エンロン事件のように一部の経営陣だけが関わっているわけではなく、全社をあげて「皆で協力して頑張った」結果の不正だということなのです。エンロンと対比させて言うならば、「日本的運命共同体型」とでも言えるでしょうか。

2.なぜ「運命共同体」なのか?

 まだまだ終身雇用を前提としてひとつの会社に勤め続けることが多い日本では、自分の所属する組織の価値観に染まることが、その組織で生きていく上で非常に大切な処世術になっています。「あうんの呼吸」「空気を読む」というように、暗黙知を上手にやりくりできなければ、自分が居心地悪くなってしまうのです。明示的な指示だけでなく暗黙的な指示もしっかりこなせるものが組織の上へと上がっていき、異論を唱えたり疑問を投げかけたり、新しいことにチャレンジしようとする人間は、このような共同体的なムラ組織では必ずしも大切にされないこともあるでしょう。

 これは「不正」の観点からは決して望ましいことではありません。外界に対するリスク感応度を失い、社会に、環境に、そして時代に適応できなくなってしまう恐れがあるからです。同じ価値観を持った人たちが、いったん間違った方向に駆け出してしまったときに、それを止めてくれる人がいないのです。

 現実はまだまだ「運命共同体」的な会社が多いです。これは日本という国が島国で、他国に比べて価値観の多様性を受容しにくい民族であることも一因なのでしょう。
ですから日本国内における不祥事は、上からの指示を一生懸命受け止めて行為を積み重ねた結果なのだと思います。そのため、余計に責任の所在が分かりにくくなってしまうのです。

3.覚悟を決める

 私は講義のなかで「経営者としての役割は何か」そして「経営者の資質として一番大切なものは何か」という問いかけをします。そのような時によく出てくる言葉、それが「覚悟を決める」という文言です。

 株式会社を例にとって考えてみましょう。
「所有と経営の分離」により経営者として会社の経営を委任されるということ、それは従業員とその家族の生活を責任をもって預かることであり、取引先に誠意を尽くすことであり、所有者たる株主に対して説明責任を果たし、社会に存続し続けることそのものです。並大抵の覚悟ではありません。

 また「善管注意義務」についてはいかがでしょう。「善良なる管理者としての注意義務を果たす」とは具体的にどのような振る舞いをすることを意味しているのでしょうか。
 経営の専門家として誠実に忠実に職務を全うするということは、言うは易し、実行することは非常に難しいことだと思います。研修ではこの「善管注意義務」について具体的事例を交えながら考察を深めます。

 従業員の延長が役員ではありません。しかし日本の場合、社内取締役は、出世の延長線上で取締役に選任されることが多く、そのため業務執行を兼務することになります。するとなかなか「取締役の役割・責務」といった本質的な部分について理解が深まらないのです。
 業務執行取締役は、業務執行における指揮命令系統を意識して「社長の部下」という感覚を有しており、それと同時に「自分の担当部門」の責任者という感覚が強いのはそのためです。

一方で取締役は会社全体の利益の代表者であり、社長等の経営陣に対して、適切な監督を行うことが求められています。そのような取締役としての責務を適切に果たすためには、「業務執行者」の延長線上ではない、業務執行の「監督者」としての役割・責務を担っている点を適切に認識する必要があるのです。そのために「役員トレーニング」が求められているのです。

 まだまだ日本の取締役会は「マネジメントボードの要素」が強く、「モニタリングボードの要素」が弱いと言われています。企業統治のあり方が形式から実質へと変わるなか、経営者の責任がどれほど重いものなのかをしっかりと受け止め、英断し前へ進んでいくためのナレッジと自信を育む、それが役員研修の肝だと考えます。


〔1〕コーポレートガバナンスコード:金融庁と東京証券取引所により、株主の権利や取締役会の役割、役員報酬のあり方など、上場企業が守るべき行動規範を網羅したもの(2015年3月)。法的な強制力はないが、「Comply or Explain(同意せよ、さもなくば説明せよ)」との原則に基づき、上場企業はコードに同意するか、しない場合はその理由を投資家に説明するよう求められる。

コーポレートガバナンスコード 第4章取締役会の責務【原則4-14.取締役・監査役のトレーニング】:新任者をはじめとする取締役・監査役は、上場会社の重要な統治機関の一翼を担う者として期待される役割・責務を適切に果たすため、その役割・責務に係る理解を深めるともに、必要な知識の習得や適切な更新等の研鑽に努めるべきである。このため、上場会社は、個々の取締役・監査役に適合したトレーニングの機会の提供・斡旋やその費用の支援を行うべきであり、取締役会はこうした対応が適切にとられているか否を確認すべきである。

〔2〕J-SOX法:日本版SOX法。SOX法はアメリカで制定された法律で、エンロン事件をきっかけに、企業の内部統制の重要性が再認識され、それが企業改革法として制定された。日本では、2006年6月、金融商品取引法が成立し、新たな内部統制のルールとして「J-SOX(日本版SOX法)」が実施されることになった。この法律はすべての上場企業に適用される。

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