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ビジネスにおける確率統計の新しい潮流~「ベイズの理論」への招待~社会動向から世の中を見る

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1. 主観はいい加減ではない??

確率という言葉をご存知だろうか。 「もちろん知っているよ」とおっしゃる方が多いと思うが、確率の定義を明確に説明できる方はどの位いるだろう。「そんな難しいことは分からない。」という声が聞こえてきそうである。

ところが、意外にもこの確率という言葉は我々の身近で実に頻繁に登場している。「俺の経験上、この商品がヒットする確率は高いと思うな」とか、特にデータを収集したわけでもないのに「あいつが商談をまとめる確率は6割位だよ」なんて、具体的な数値まで用いる場合もある。実にいい加減な使い方である。事実、従来の確率論や統計学の専門家は、このようないい加減な確率の使い方をあまり好まなかった。しかし、最近は少し様相が変わってきた。「ベイズの理論」が改めて見直されてきているのである。

2. ベイズの理論とは

ベイズの理論は、トーマス・ベイズという1700年代前半を生きた、イギリスの数学者により打ち立てられた理論である。このベイズの理論とはどのような理論か。簡単に言うと「結果から原因の確率を推測する」手法なのだ。

例えば、ある商品Aは、冨沢商店、山本商店、鈴木商店の3店舗のみで販売しているとしよう。この3つの商店の何れかを訪れた人は、必ず何がしかの商品を一つ買うとしよう。

冨沢商店に行った人の90%は商品Aを買うが、山本商店、鈴木商店では30%の人しか商品Aを買わず、残りの70%の人は別な商品を買うとする。すると、「商品Aを買う」を結果とすると、「○○商店を訪れる」が原因と考えてもよいだろう。ベイズの理論では、商品Aを買ったという結果から、どの店で買ったか、確率を推測できるのだ。

【問題】あるとき、森田さんがこの3つの商店の何れかに行き、商品Aを買ってきたという。森田さんが鈴木商店に行った確率は何%だろうか。

皆さんは、何%位だと思うだろうか。ベイズの理論により計算すると20%となる。ちなみに山本商店で買ってきた確率も20%、冨沢商店で買ってきた確率は60%となる。多くの人は33.333・・・%だと思ったのではないだろうか。しかし、山本商店や鈴木商店に行ってしまうと、70%の人が別な商品を買ってしまうのだから、商品Aを買って来た森田さんは、この2つの商店を訪れた確率が低いのではないかという推測も頷ける。

さらにベイズの理論が優れているのは、このような「確信」が次に活かされることである。例えば、森田さんが2日連続で買い物に3店のうち何れかを訪れたとしよう。そして、商品Aを買って来たとする。1日目は、冨沢商店に60%の確率で訪れたことになり、その確率はきわめて高い。ベイズの理論はこのような「事前の情報 (1日目の情報)」を計算に盛り込むことができる(これを事前確率と呼ぶ)。つまり、2日目の確率を計算するにあたって、すでに持っている「1日目の情報=冨沢商店を訪れる確率が極めて高い」ことを盛り込んで計算するのだ。すると、翌日、森田さんが冨沢商店に行った確率は77.8%、山本商店、鈴木商店に行った確率はそれぞれ11.1%となる。

このように、私たちの心の中の様子を客観的に表現し、まるで学習するかのごとく目的とする確率の精度を高めていくことが出来る。このようなことから、ベイズの理論は極めて人間くさい考え方を表現できるので、人間の行動を説明したり、経済活動の推定などに広く応用されているのだ。

3. 身近なベイズの理論の適用例

このように、ベイズの理論では結果から「原因の確率」を推定することができる。この理論は我々の身の回りの様々なところで応用されている。最も身近なものとして、かつては迷惑メールの自動振り分けにベイズの理論が応用されていた。最初は迷惑メールへの振り分けは手動で行うが、回数を重ねるにつれ、自動的に迷惑メールに振り分けられるメールが増えてくる。これは、受け取ったメール内の単語を検索し、迷惑メールで使われている単語と同じ単語の出現頻度から、迷惑メールである確率を自動で計算しているのだ。そして、ある一定の確率を超えると、自動的に迷惑メールに振り分けられる仕組みになっている。

また、Webの検索エンジンにもベイズの理論が応用されていた。一度検索したキーワードと実際に閲覧したホームページの関係から、より閲覧されやすいホームページを自動的に検索してくれるようになっている。

4. 人間くささを表現できる確率統計の新時代へ

もっと注目してほしいのは、「事前確率」という考え方だ。この事前確率は、先ほどの例題で言えば、「どこに行きそうなのか一先ず仮においてみる」といった考え方の確率である。言い換えれば、ある程度主観で決めても問題ないとも言える。例えば、「そう言えば森田さんは冨沢商店の店の雰囲気が好きだと言っていたな。」などという情報があり、そこから「冨沢商店に行く確率が高いと思う」と確信しているのであれば、事前確率として冨沢商店を訪れる確率をある程度高めておいても良いのだ。「俺の経験からは6割位だな」といった経験と勘でひねり出していた確率を見事に理論に取り込んでいるのだ。ベイズの理論ではこれを主観確率と呼び、その体系の中にシッカリと位置づけている。ネイマン、ピアソンが基礎を築き上げた頻度論を主軸にした統計学では、このような考え方は相容れないものである。まさに、人の心模様の確信度を反映するベイズの理論は、人の経済活動から購買行動の予測や、様々な意思決定の根拠を与えてくれる。確率統計の世界にも新時代が到来しているのだ。


【参考文献】  もっと学びたい方のために
 『Excelでスッキリわかる ベイズ統計入門』 涌井良幸、涌井貞美著、2010年、日本実業出版


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