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歴史に学ぶグローバルマネジメント~宗教における「受け入れ」構造のベンチマーキング~最近の傾向・ご支援から見えること

SANNOエグゼクティブマガジン


参入を阻む多くの壁

2008年の米国のリーマンショックに始まる世界金融危機から今日に至るまで、ギリシャをはじめとする欧州の国家財政危機が、日欧米などの先進国の経済に大きなマイナスの影響を与え続けている。

日米欧の経済が低迷する中で勢いを増したのが、中国やインド、東南アジア、ブラジル、ロシアなど、アジアをはじめとする新興国の経済である。

これらの諸国は、先進国の経済システムや企業経営の視点から見れば、全く異なる性質の市場である。そのため、多くの先進国企業が、市場参入の段階での失敗、治安悪化による損失、参入後の長期にわたる赤字、現地の低コストのフォロアー企業との競争など、数々の問題に直面している。

労働力の観点で見ると、アジアは、地域により宗教、文化、言語、職業観、家族観など価値観が多様であり、これも先進国からすると「異質」に感じる。

これらの要因により新しい市場に対しては、先進国中心の一律的な考え方やシステムでは参入が難しいことが明らかになってきており、グローバルマネジメントの必要性が高まってきている。

成功の要因は「受け入れ」

ピーター・ドラッカー氏は、「ローマ帝国において、征服地がスペインであれ、北アフリカであれ、現地の優秀な人材を積極的に受け入れて活用し、自らの宗教や価値観を押し付けなかった点に成功の秘訣がある」と指摘した。これが『ローマの寛容』である。

古代ローマ帝国の歴史では、個別に民族と文明と宗教をもつ多数の国々を、西ローマ帝国だけで千年、東ローマ帝国を含めると、二千年の長きにわたって維持したという事実がある。高度なグローバルマネジメントを発揮したといえる。

さらに、アジア・新興国社会が先進国の考え方やシステムによる参入を困難にしている要因には、資源やインフラ、リソースの不均衡がある。そして、これらの背景には、民族や宗教間の衝突・摩擦、そして言語がある。

たとえば、淡路島ほどの面積しかないシンガポールにおいて、主な宗教は、仏教、道教、イスラム教、キリスト教(カトリックとプロテスタント)、ヒンドゥー教と多くの宗教が複雑に混在している。公用語は英語、マレー語、華語(標準中国語=マンダリン)、タミル語であるが、高等教育を受けていても英語を流暢に話せる人は少なく、独特の英語(シングリッシュ)を話す。

ドバイにおいては、イスラム教を国教とするアラブ首長国連邦にありながら非イスラム教徒の外国人が多く住み、イスラム色の薄い、宗教的制約の極めて希薄な都市である。

グローバルマネジメントがうまくいっている企業では、これらの特性を持った社員をベストマネジメントし事業成果を出している。成功の要因は「受け入れ」にある。

グローバルマネジメントと宗教の関係

とはいえ、言語はまだしも、宗教観は受け入れがたいものであり、複雑であり、難解である。宗教文化こそ、先進国との間に大きな差異が存在する。

しかし、グローバル化は、宗教の影響を受けざるを得ないとともに、宗教そのものがグローバルに伝播してきたという事実がある。バラモン教はアーリア人がインドに侵入し、インド各地の先住民族の土着宗教を吸収・同化して形を変えながらヒンドゥー教へ変化していった。インド北部ガンジス川中流域で釈迦が提唱した原始仏教は、アショーカ王がヘレニズム諸国や東南アジア、中央アジアに伝道師を派遣し伝播された。そしてシルクロードを通じて陸路により中国にもたらされ、日本に伝播された。

宗教は国境や文化・言語の壁を越えてグローバルに広がり、民族の意思統一の一助を果たしてきたが、その過程には、仏教、キリスト教、イスラム教などが古くから伝播され受け入れられ定着してきたという事実がある。その意味で、宗教がグローバル化することは決して奇異な現象ではない。宗教が国境や文化の壁をこえてどのように伝播するのか、つまり「宗教のグローバル化」過程について探求することに企業のグローバルマネジメント成功の鍵が存在する。

宗教を探求し参考にする

日本のビジネス界では、宗教はビジネスとの関係において違和感があり、あえて触れずに避けて通ってきた経緯がある。しかし、現代経営学の基礎といわれる科学的管理法をフレデリック・テイラーが提唱したのは20世紀初頭であり、その歴史はわずか100 年である。対して、仏教は紀元前5世紀、ヒンドゥー教においてはインダス文明のころに発祥し、今に受け継がれている。京都大学名誉教授であった西田幾多郎氏は禅仏教を研究し「絶対矛盾的自己同一論」を展開したが、その内容が宗教的であると厳しく批判された。しかし、一橋大学名誉教授の野中郁次郎氏は西田の研究を元に「暗黙知」を立証し「知識経営」を提唱することにより産業界から賞賛を受けた。これらの歴史的背景からみた普遍性は、宗教のほうが優位であると想像ができる。