【人材育成事例】グループ相互連携の人材育成で会社と個人の成長を目指す(東洋製罐グループホールディングス株式会社様)

【人材育成事例】グループ相互連携の人材育成で会社と個人の成長を目指す(東洋製罐グループホールディングス株式会社様)

総合容器包装メーカーのリーディングカンパニーとして、変化する世の中の社会課題解決とグループの成長を目指し、人材力の強化に注力する東洋製罐グループホールディングス。
人材開発室の3名に、具体的な取り組みやその意図を伺いました。

プロフィール

人材開発室長

野間 靖郎 氏

1993年に東洋製罐埼玉工場に入社し、工場労務業務を経験。2001年に本社人事部人事課に異動し、発令や人事評価、人事給与システム導入など様々な業務に携わる。2010年に経営企画部に異動し人事戦略立案を行う。2013年、ホールディングス化に伴い人事部に異動し、グループの給与計算、社会保険業務のシェアード化を行う。2018年、人材開発室発足に合わせて室長に就任。

野間 靖郎 氏

人材開発室 リーダー

西村 仁徳 氏

2008年に新卒採用で東洋製罐石岡工場に入社し、工場労務業務を経験。2011年に本社に異動し新卒採用や教育研修を担当。2017年からメビウスパッケージング立ち上げプロジェクトに入り、2018年、同社へ出向し人事業務を担う。2020年にホールディングスに出向しグループ採用・教育研修を担当。

西村 仁徳 氏

人材開発室

橋本 祥子 氏

2015年に大学を卒業後、4年半にわたり人材開発に携わる。2019年に中途採用で東洋製罐に入社後、東洋製罐グループホールディングスに出向。以後一貫して階層別研修や選抜研修など社員教育全般を担当。2021年度の大卒定期採用におけるグループ採用開始後の新卒社員教育体系構築も担っている。

橋本 祥子 氏

東洋製罐グループホールディングス株式会社様 概要

東洋製罐グループホールディングスと、主力事業会社6社(東洋製罐、東洋鋼鈑、東罐興業、日本クロージャー、東洋ガラス、メビウスパッケージング)等を含む子会社85社、関連会社7社、関連会社の子会社1社から成る企業グループ。1917年の創業以来100年以上にわたり、金属・プラスチック・紙・ガラス等が持つそれぞれの特性を活かし、さまざまな素材の容器を提供する容器包装のリーディングカンパニー。連結従業員数1万9976名(2023年3月末現在)。

【管理職育成】「集合研修+通信教育」を実施 役割の変化に対応できる人材を育成

グループ内の多様な人材をいかに連携させるか

――たくさんの事業会社を束ねるホールディングスとして、グループの人材育成をどのようにお考えですか。

野間 靖郎 氏

世の中が大きな変化を迎える中、例えばプラスチックごみの削減やCO2排出量削減といった課題も出てきており、私たちの容器を使用するお客様は対応に注力している状況です。そのような課題に対し、当社グループは世界の容器メーカーの中でも珍しく、金属・プラスチック・紙・ガラスの複数の素材の容器事業を持ってグループを形成している点が特長であり、素材など最適な組み合わせを複合的に考えられるのが強みです。
当社グループは2013年にホールディングス化しましたが、従来はグループ各社で、それぞれの事業を担い成長させてきた人材が個別に活躍していました。今後は、よりグループ全体として人材を育てていく必要があると考えています。もともとグループ内には優秀かつ専門性の高い多種多様な人材がいますから、その多様な人材がいかに相互に連携し、同じベクトルで強みを発揮していくかが求められるでしょう。

――グループ人事ポリシーについて教えてください。

野間 靖郎 氏

人事ポリシーはホールディングスが2018年に制定したもので、2021年に長期経営ビジョンを発表した後も基本的な考え方は引き継がれています。出発点になっているのは、「常に新しい価値を創造し、持続可能な社会の実現を希求して、人類の幸福に貢献する」という当社の経営理念を達成するために、人材はどうあるべきかを考えることです。
人事ポリシーで重視しているのは、会社と個人が共に成長していくことです。そのための4つの柱として「自律的成長の実現」「多様な人材の共創」「働き方の改革」「健康経営」を掲げ、グループの永続的な成長を支える人材基盤の構築に取り組んでいます。

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新分野にチャレンジし結果を出せる人材を育成

――人材育成において特に注力しているテーマを教えてください。

野間 靖郎 氏

現在のグループの主力は包装容器事業であり、世の中に安定的に高品質かつ安価な包装容器を提供していくという使命がありますから、これは成長させていかなければなりません。一方、少子高齢化などを背景に国内市場が縮小していく中、企業として次なる成長を目指すには、包装容器とは異なる新規分野への挑戦も必要です。
そこで人材育成において重要なテーマとなるのが、新分野にチャレンジしていく人材、新分野で結果を出せる人材の育成です。従来の会社ごとの人材育成の枠をこえてグループ全体で人材を育成するという意識が求められると考えています。
また、新たな経験に対して抵抗感や恐怖感を持つことなく「チャレンジすることは自分にとって成長の機会になる」と考え、前向きに取り組むような組織風土づくりにも力を入れる必要があるでしょう。そのためには「自分は何をやりたいのか」「どう成長していくべきか」を一人一人が考える必要があり、「自律的な成長の実現」も重要なテーマになると思います。

「経営人材選抜研修」で参加者の視野を広げる

――グループ共通の教育体系のポイントを教えてください。

野間 靖郎 氏

グループを牽引する次世代のリーダー育成を目的に、経営に関する「知」の習得とリーダーとしての「軸」の確立を目指し、係長層、課長層、部長層それぞれの階層からメンバーを選抜してグループ内で選抜研修を実施しています。
この研修では、それまでの業務から少し離れ、グループ会社の垣根を越えて一緒に東洋製罐グループの将来を考えるような取り組みを行っています。特に、課長層を対象とした「TSGBC(東洋製罐グループビジネスカレッジ)」と、部長層を対象とした「次世代経営者育成研修」では、カリキュラムの中で社外の人とコラボレーションしながら共同で研修に取り組む機会を設け、研修参加者が視野を広げられるよう働きかけています。

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――管理職層を対象にした研修について、内容と特長を教えてください。

野間 靖郎 氏

新たに係長層、課長層、部長層に昇任する人に向けた新任研修を実施しています。管理職になれば、組織における役割が大きく変わります。そのことを認識し、これから何をすべきかを知り、そのために必要な知識や考え方を学ぶことが目的です。
例えば、新任管理職研修(課長層対象)では、集合研修と通信教育を組み合わせたプログラムを実施しています。集合研修はグループ各社から10〜15人ほどを集め、コロナ禍以前は研修所で2泊3日のプログラムを実施していました。コロナ禍の間はすべてオンライン研修に切り替えていましたが、現在、上位層から順に対面実施へと戻しています。ただし、オンライン研修には育児中の人なども参加しやすいというメリットがあります。実際に会って対話するメリットと比較しながら、どう調整していくかを検討していく必要もあると考えています。
通信教育は体系的に知識やスキルを学ぶ必要がある分野を選んで実施しています。集合研修では対話を重視していること、また2泊3日で学べる範囲は限られてしまうことから、テキストで独学できる知識やスキルは通信教育でカバーすることを狙って「集合研修+通信教育」というプログラムにしています。
新任管理職向けの通信教育のカリキュラムは当社グループ用にコースを選択して組み合わせたもので、「管理者の役割とリーダーシップ」「マネジャーの問題解決」「管理者のための財務知識」のほか、「労務トピックス」や「管理者のためのコンプライアンス」なども盛り込んでいます。

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管理職研修をきっかけにビジョンについて考える

――管理職研修を受けた方からはどのような声が寄せられていますか。

野間 靖郎 氏

集合研修については、部門も会社も異なるメンバーと一緒に取り組むことが大きな刺激になるという声が多いですね。また、「研修講師の方との対話などを通じて視野が広がった」「新しい取り組みに対して前向きな気持ちが生まれたので、職場に戻ってからもこの気持ちを生かして対応していきたい」といった感想もあり、仕事に取り組む姿勢について考え直すきっかけになっているのではないかという手応えがあります。
人材開発室としては、これからも管理職研修を通じて受講者がこれまで目を向けてこなかった情報や考え方を積極的にインプットしていければと考えています。例えばグループとして発表している長期経営ビジョンについて言えば、世の中にいまどのような変化が起きているのか、それを背景にグループとしてどのような方向性に向かおうとしているのかといったことも、管理職研修を通じて考えるきっかけが生まれればと考え、カリキュラムに組み込むようにしています。

管理職へのより強力なサポートも目指す

――管理職研修の今後について考えていることを教えてください。

野間 靖郎 氏

世の中が大きく変化しマネジメントの難易度が上がっている中、管理職へのより強力なサポートが必要ではないかという課題意識を持っています。
例えば最近は管理職の役割として、部下の人生に寄り添ってキャリアを一緒に考えていくことも求められています。しかしその役割を担うには、相手に寄り添って一緒にキャリアを考えるとはどういうことなのか、実践するためにはどのような知識やスキルが必要なのか等、管理職はもちろん会社側も新たな学びが必要でしょう。
時代の変化に応じた管理職の役割の変化を考えると、現在の管理職研修の内容では足りない面もあります。それをどう補っていくか、これから試行錯誤していきたいと考えています。

【人的資本経営対応】企業価値向上を目指し人材育成方針と社内環境整備方針を作成

統合報告書では研修に関するデータも開示

――人的資本経営に関する取り組みを教えてください。

西村 仁徳 氏

グループの総合力強化や人的資本経営による企業価値向上を目的として、2023年に「人材育成方針」と「社内環境整備方針」を作成しました。「人材育成方針」では、既存事業を維持しながらグループのリソースを最大限活用し、新規事業領域の収益を拡大することを基本に掲げ、求める人材像や人事戦略等を設定しています。
統合報告書には、東洋製罐グループの強みを示すデータとして、新任部長・課長・係長昇任者研修の受講人数や、経営人材選抜研修の実施回数・受講者数、延べ研修時間なども掲載しています(下図参照)。定量的に数値で示せるデータは積極的に開示していくのが当社グループのスタンスです。人的資本経営による企業価値向上を実現するには、客観的なデータを見ることはもちろん、それが具体的に業績にどう貢献しているのかを長期的に確認していくことも必要になると考えています。

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【通信教育活用】修了者の受講費用は全額補助 長期ビジョンに関連する講座も紹介

自律的成長実現に向け通信教育を活用

――グループの通信教育活用状況について教えてください。

橋本 祥子 氏

通信教育を自己啓発の一環として活用しています。30年以上前に東洋製罐で通信教育を取り入れたのが始まりで、2011年以降はグループ内にも展開し、現在26社が参加しています。グループ全体で「自律的成長の実現」に向けた環境を整えるため、グループ内の参加会社を増やしながら、時代に合わせた講座の採用を進めています。グループ全体では毎年約3500件の申し込みがあります。
通信教育は一人ひとりが学びたい内容をライフスタイルに合わせて学べるなどさまざまなメリットがありますが、会社のビジョンに対してアンテナを張ってもらうこともできると考えています。例えば年度初めに配布するパンフレットでは、長期ビジョンに関連して今後会社として力を入れていきたいテーマに沿った講座をまとめて紹介しており、講座選択時に自然と長期ビジョンを意識できるよう工夫しています。

――受講を支援したり後押ししたりする制度や取り組みを教えてください。

野間 靖郎 氏

学びたい人の挑戦の一歩をサポートするため、修了者には受講料を全額補助する制度を設けています。また当社グループの中には、自社で指定している資格や免許を取得した場合や、一定のスコアを超えた場合に、奨励金を支給する制度を導入している会社もあります。
受講する講座は、グループ各社の人事部門で選定した約450講座の中から、個人が学びたい内容に合わせて選択できます。毎年、前年の受講者数のデータをもとに、約30〜50の講座の入れ替えも行っています。

人事担当者として考える「学び」と「キャリア」

野間

自分自身の社会人生活を振り返ると、学んでいる時期と、仕事に追われるばかりで流されてしまっている時期がありました。その違いはどこにあったかを考えると、学ぶためには自分がやりたいことが明確で目標が定まっていること、その先に「自分のありたい姿」が描けていることが必要ではないかと思います。会社として、個人個人が自分のありたい姿を描いたり目標を見つけたりできるようサポートしていきたいですし、その目標と会社の方向性が重なる部分を自律的に見いだしていけるよう、会社と従業員のコミュニケーションを取っていきたいと思います。

西村

若手社員には「キャリア自律」を促しているのですが、これは「あなたたちは自分のキャリアの主人公であり、自分のキャリアのオーナーシップを持つことが大切だ」ということです。もちろん企業人は組織に属してキャリアを重ねていくわけですから、主体的にキャリアを開発するのは限界もありますが、スタンフォード大学のクランボルツ教授が提案した「計画的偶発性理論」にあるように、キャリアは偶発の事象によって決まるという前提のもと、「まずはやってみよう」という気持ちや楽観性、好奇心、柔軟性等を持ち続けることが重要だと思っています。

橋本

キャリアを形成する上では、まず自分を知り、それに基づいて自己決定することが大切です。自分が実現したいことや、大切にしている価値観、自分の強み等を明確化すると、それが道標となり、キャリア上の選択を迫られたときに適切な判断ができるのではないかと思います。また、自分のありたい姿が見えていれば、それに向かって今の環境でどのように頑張るべきか、目の前の仕事に意味づけをすることもできます。それが、「やらされて仕事をやる」のではなく、やりがいを持って楽しみながら主体的に仕事をすることにもつながるでしょう。

(2023年8月17日取材・撮影)
※掲載している内容は、取材当時のものです。

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