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第28号 TRIZ/ISP入門<第5回>( 2008 年 3 月)

TRIZ Letter 第 28 号掲載

TRIZ/IPS入門 ~初学者と再入門者のためのTRIZ(5)

学校法人産業能率大学総合研究所
経営管理研究所主任研究員
TRIZスペシャリスト 竹村 政哉

◆ はじめに
本号は、連載の最終回として、TRIZ/IPSのステップ4・5についての解説を行う。ステップ4・5はアイデアを育てあげて、“解決案”に練り上げるステップである。TRIZを使う人の中には、アイデア発想こそが革新的な解決案を創り出す重要なステップであると考える人も少なくない。しかし、TRIZ/IPSでは、アイデア発想だけではなく、アイデアを育てあげ、“凄い解決案”に育てあげるという点にも力を入れている。

○TRIZ/IPSのステップ4の概要
ステップ4では、解決案の資源であるアイデアの修正・組み合わせ・追加を行い、解決案に成長させる。また、問題を解決するのは、決してアイデア同士の組み合わせだけではない。問題解決の対象となっているシステムに存在する資源、あるいは周囲に存在するさまざまな資源とアイデアを組み合わせることによって解決案となることも少なくない。つまり、アイデア同士の組み合わせとアイデアと資源の組み合わせを行い、解決案の素案を創るのである。
やや古い例になるが、液晶プロジェクターが発売されて間もない頃、まだ輝度が低かったため、スクリーン側の反射率を高めることによって、輝度の低さを補おうという工夫があった。これなどは、資源をうまく組み合わせた解決案の例である。
そして、さらにこの素案を技術システムの進化という観点から、よりレベルの高い解決案に成長させる検討を行う。

○TRIZ/IPSのステップ5の概要
ステップ5は、ステップ4で創りあげた解決案を評価し、そのうえで、二次的問題の検討と解決、そして、不具合予測とその未然防止案の検討を行う。
解決案の評価は、ステップ1で設定した“解決案の選択基準” (連載第2回を参照)によって行う。
二次的問題の検討と不具合予測は、一見同じような意味にとられがちではあるが、二次的問題は、解決案に含まれる比較的明瞭な欠点への対処である。あるいは、構造から比較的簡単に予測可能な不具合への対処といって良いだろう。一方、不具合予測は、解決案を採用した場合に発生するかもしれない新たな不具合であり、経験や構造などからは簡単に予測できないリスクへの未然防止の方法を検討することである。つまり、ステップ5は、自己設定した選択基準を満たした解決案を、さらに練り上げ、解決案のレベルを向上させるステップと表現することができるだろう。
このステップ4・5に取り組む際には、アイデアと資源を組み合わせながら、解決案に育てあげていくという感覚を持ちながら進めることが勘所ともいえる。

◆ 終わりに
2006年3月に発行されたTRIZレター23号以来、足掛け3年にわたって連載を行ってきた。2年間に渡る連載にお付き合いいただいた読者諸氏に感謝しながら、TRIZ/IPS入門を終了させていただく。

本要約は、極めて簡単に要約したものですべてをお伝えしていないことをお含みおきください。

”イノベーション”にフォーカスした異業種交流セミナーにおけるTRIZの役割

学校法人産業能率大学 総合研究所教授
TRIZスペシャリスト 澤口 学

1.はじめに
今回は、2006年度から開催している“異業種交流セミナー”の全体プログラムと、本セミナーの最大の特徴である異業種間のディスカッションで活用した“イノベーションのユニークなケース事例“について紹介する。
異業種交流セミナーの目的は、現在活躍中の製造業(主に大手企業)の技術者(主にR&D部門)を対象に、イノベーションの重要性を認識すると同時に、ディスカッション等相互交流を通じて、思考の拡がりと行動変革へのきっかけ作りの場を提供することである。

2.参加者のイノベーション力を刺激するケース事例の紹介
1)“身近なモノから技術進化を探る”~コーヒーカップ(紙製)の発展経緯(前半)
最初に、紙製コーヒーカップの発展経緯を“機能の進化の視点(前半編)”から整理した資料を配布して、過去コーヒーカップがどのように進化(発展)してきたかをチームメンバー間で自由討論をしてもらった。この段階では、まだコーヒーはスタティックな状態(座ったり、立った状態)で飲むケースが多かったので、コーヒーカップ自体には、深刻な矛盾は発生していなかったことが観察される。

2)同上(中盤)
歩きながら飲み物を飲むという社会的トレンドがコーヒーにも伝播し、いわゆる “ダイナミックな状態”で従来のコーヒーカップの矛盾発生度合いを考えると、かなり問題(矛盾)が発生することがわかってくる。

3)同上(後半)
ダイナミックな状態で、従来のコーヒーカップを活用しようとすると、「保温性と飲用の容易性」は完全に背反な状態になり、いわゆるTRIZの観点からは矛盾と定義できる。これらの矛盾をどのようにしたら解決できるかをメンバー間で自由にディスカッションしてもらい、その検討結果を模造紙に整理してもらった。また同時に日本社会の習慣の変化も時系列的に整理してもらい、コーヒーを飲むスタイルの変化と連動させて考察するようにアドバイスも行った。

筆者なりに整理した資料を配布し、外資系のコーヒーショップが上述したような矛盾を解決したコーヒーカップをすでに開発しており、現在日本でもこのようなコーヒーカップが主流になっていることをあらためて認識してもらった。
この演習での最大のポイントは、コーヒーカップ(紙製)レベルの日常品でも、社会変化の節目の中では幾度か矛盾解消を果たし、イノベーションを実現してきた点に気付いてもらうことであった。

本セミナーでは、2日目用のケース事例として「カセット式ウォークマンの発展経緯」も準備しているが、これは紙面の都合から今回は省略する。本学の出版部から2007年12月に発刊された『バリューイノベーション』に掲載してあるので、興味のある方はぜひ参照してほしい。

本要約は、極めて簡単に要約したものですべてをお伝えしていないことをお含みおきください。