【人材育成事例】自律的キャリア形成支援のため自己啓発に通信研修を活用(株式会社サザビーリーグ様)

【人材育成事例】自律的キャリア形成支援のため自己啓発に通信研修を活用(株式会社サザビーリーグ様)
「It's a beautiful day.(今日もいい一日ですね)」という言葉をスピリットに掲げ、お客さまだけでなく従業員も仕事を通じて「いい一日だった」と思えることを目指すサザビーリーグ。一人ひとり個性を持つ多様な人材の自律的キャリア形成支援に注力する、戦略人事部組織開発課のお二人にお話を伺いました。

株式会社サザビーリーグ様 概要

1972年に創業。Afternoon TeaやRon Herman、ESTNATION、CAMPERなど45のブランドで衣食住にわたり国内外に575店舗を展開する。従業員数3,220人(2022年3月末時点)。

プロフィール

人事・労務室 戦略人事部 組織開発課 課長

志水 聡子 氏

2012年にサザビーリーグに入社し、一貫して人材育成分野を担当。本部の次世代経営者育成に長く携わる。2018年頃から店舗の慢性的な人材不足という課題に取り組み、店舗スタッフのキャリア支援に注力している。

人事・労務室 戦略人事部 組織開発課

黒木 優志 氏

2016年にサザビーリーグ エストネーションカンパニー入社。
ESTNATION有楽町店に6年勤務した後、社内公募制度を利用し戦略人事部に異動。S-Career Academyの運用や研修などの業務を担当する。

この記事は、通信研修総合ガイド2023特集ページ「人的資本と人材育成」の一部です。
特集全体をご覧になりたい方は、こちらからダウンロードいただけます。

事業会社の自律性を大切に、持株会社として「横串」を通す

――貴社の人材育成についての考え方を教えてください。

志水

サザビーリーグは持株会社で、傘下の5つのカンパニーと関連会社10社が幅広く衣食住に関わるライフスタイルビジネスを展開しています。持株会社という立場で大切にしているのは、各事業会社を統制するのではなく、それぞれが自律して事業ができるよう支援することです。

人材育成について言えば、各事業会社の教育部門が自ブランドに必要な教育を担っているのに対し、私たちは持株会社として「横串」を通す役割を担っています。そこで重視しているのは「ピープルビジネス」であること。平たく言えば、組織のために人が成長するのではなく、従業員それぞれがサザビーリーグというフィールドの中で実現したいことや思いを持ち、自分のありたい姿に近づいていくことがブランドの成長に繋がっていくという考え方です。
「ピープルビジネス」という考え方に基づいて展開しているのが、従業員の自律的キャリア形成を支援するための教育インフラ「S-Career Academy」です。

志水

S-Career Academyのサイトは、キャリア自律の支援に繋がるプロセスになっています。具体的には「自分を知る」「会社を知る」「統合する」ステップで、まず自己理解を深め、その上で会社のことをよく知り、自分と会社の重なり合う部分を見つけていきます。さらに従業員が成長するために何をすべきかを考えて自己啓発や研修にチャレンジする「学ぶ・成長する」、キャリア等について「相談する」ステップがあります。キャリア相談は、私を含め、サザビーリーグに所属するキャリアコンサルタントの資格を持ったスタッフが対応しています。

――S-Career Academyをよりよく機能させるための取り組みについて教えてください。

志水

従業員の自律的キャリア形成には、それを支援する上司の役割が非常に大切です。その一方、小売業はバリューチェーンが長くそれでいてスピード感や短期的成果が求められることから指示型コミュニケーションに陥りやすい背景があります。

そこで私たちが大切にしているのが「人材開発ダイアログ」という対話の場です。私たちが運営する階層別研修では、従業員一人ひとりの考えや悩みなどを把握できるようカリキュラムを設計しています。また、産業能率大学さんから提供を受けている、プロフェッショナル人材として成果創出能力を把握するための診断ツール「S-ProⅡ」では①成果創出スキル②成果創出への志向性③職場運営適性の3つを測定しています。

これらの結果をふまえ、各社からSV(スーパーバイザー)に集まってもらい、従業員一人ひとりについて「研修からはこう見えた」「現場での日頃の働きぶりではこうだ」といった実際の情報を同じテーブルに乗せて「従業員がキャリアについてどのような希望を持っているか」「それに対してどう関わっていけるか」などを話し合うのです。この対話を通じ、上司側のマネジメントのあり方が指示型から自支援型になるよう働きかけをしています。

「ありたい姿」を実現してもらうために通信研修受講を支援

――通信研修を含む「自己啓発」の位置づけや考え方を教えてください。

S-Career Academyの自己啓発には、ビジネススキル開発を目的とした無料のeラーニング提供と、有料の通信講座・通学講座・オンライン講座および資格受検の支援があります。有料の通信講座や資格受検には、本部管理職を除く社員に年間3万円までの補助をしています。

通信講座では、現在の業務に直結するものを強制的に受けてもらうようなことはしていません。さまざまなキャリアパスがある中、ありたい姿の実現のため、自分自身で身につけたいスキルや知識を考え、興味のある分野にチャレンジしてほしいと思っています。

黒木

――通信研修では、どのようなコースの受講が多いのでしょうか。

VMD(ビジュアル・マーチャンダイジング)やパーソナルカラー、カラーコーディネーターなどの講座が人気です。店舗ではお客さまにサンクスレターを出す機会などもあるため、ボールペン字入門も根強い人気があります。このほかパソコンスキルやエシカルコンシェルジュなど、幅広くさまざまな講座が利用されています。

実際にカラーコーディネーターの通信講座を受講して資格を取得した社員から「接客にも活用し信頼度がアップしていると感じる」「お客さまが迷ってるとき、資格を名刺代わりにしてクロージングの説得力を上げている」という声も届きます。また、「フィードバックと面談の技術」を学んだ社員から「基本の心構えを一から学ぶ機会を作ることができ、自身に見えなかった課題に気づき取り組むことができた」「従業員満足度調査にも結果として見える形となったためモチベーションに繋がった。この成功体験を仲間に届けたい」といった感想も寄せられます。

黒木
志水

制度を導入した当初は、今現在の仕事を視覚化するために販売士の資格を取得する人が多いと予想していました。しかし蓋を開けてみると、通信講座は今の仕事をより深めたり広げたりするために活用されていると感じます。

株式会社サザビーリーグ様で受講いただいている通信研修(例)

  • ~「パーソナルカラー活用サポーター入門」認定対応~

    仕事に活かす!パーソナルカラー

  • ~あなたの働きかけでメンバーが変わる~

    フィードバックと面談の技術

通信研修の受講率向上は上司の関わりが重要

――通信研修の受講状況をどう見ていますか。

ジュエリーブランドageteなどの事業を行うエーアンドエスカンパニーは今年、社員404名中67名が受講しており他のカンパニーと比較しても受講割合が高くなっています。これはカンパニー内で社内報を活用して通信講座の受け方を紹介するなど受講促進の取り組みの結果です。

このほかAfternoon Tea LIVING事業を行うアイシーエルカンパニーでも、通信講座の受講率が大きく伸びています。これはカンパニー内でリーダークラスが集まるミーティングで通信講座を紹介し、リーダーたちが店舗に持ち帰って現場で波及させるという取り組みが奏功しています。通信講座については私たちからも情報提供を行っていますが、やはり各事業会社の中で影響力のあるリーダーが「これは本当に現場の役に立つ」と考えて紹介しているのが大きいと思います。上司の関わりは重要ですね。

黒木
志水

エーアンドエスカンパニーは、キャリア自律を大事にするという考え方をグループ内でもいち早く取り入れてきました。日頃から現場のスタッフに対してキャリア自律について伝えている中で通信講座を紹介するのと、キャリア自律という考え方があまり共有されていない状態で通信講座を紹介するのとでは、やはり受講率に差が出てくるのだと思います。キャリア自律の考え方が社内に浸透していることが、学ぶ意欲の醸成にもつながっているのではないでしょうか。

通信講座がより一層、インフラとして活用されるためには、私たちがなぜ自己啓発を支援しているのか、目的や背景をしっかり説明し続けることが大切です。来期は、S-Career Academyのパンフレットを通じて会社の思いを深く説明し、従業員のみなさんがずっと手元に置いておきたくなるようなものにしたいですね。

学びには「疑う」ことが大切。疑問が原動力になり、進化につながる

――最後に「学び」「キャリア」についての考えをお聞かせください。

志水

キャリアコンサルタントとして従業員の相談に乗る中、今の不確実な世の中でキャリアを形成していくために大事だと感じることが3つあります。

1つは、自己理解を深め続け、自分の強みや望みを明確にすることです。他者の基準ではなく自分の価値観をベースに仕事を選ぶことはもちろん、今の業務の中で自分の充足感を満たせるよう仕事を広げていく工夫も必要でしょう。

2つめは、はしごを上っていくようなキャリア形成ではなく、ボルダリング的に縦横無尽なキャリアパスを目指すことです。サザビーリーグの中にはキャリアのチャンスが散りばめられていて、それを従業員一人ひとりが取りに行くという考え方が大切だと思います。

3つめは、アダプタビリティ。例えば新しい仕事に就いたとき、それまでの経験が直接役に立つことは少ないもの。「経験を役立てられるよう、自分を柔軟に適合させていく」という姿勢が必要ですし、それを支援していきたいと思っています。

「学び」については、疑うことが大事だと思っています。例えば「私らしさとは何か」「ありたい姿とは」などと考えるときも、現状に対する疑問を持つ。それが学びの原動力になり、進化につながるのではないでしょうか。

黒木

私は小売業が大好きです。これほどお客さまの笑顔に近い場所で働ける仕事はなかなかありませんし、そこから得られる喜びには大きなパワーがあると感じています。だからこそ、今の仕事が自分の希望と重なっておらずパワーが十分に感じられていない人をできるだけ減らしたいと思っています。従業員一人ひとりがそれぞれにとってより魅力的な仕事に就いて楽しく働いてほしいですし、それに寄与できるよう、いずれはキャリアコンサルティング業務にも携わっていきたいです。

黒木

――貴重なお話の数々、誠にありがとうございました!

(2022年8月4日取材・撮影)

この記事は、通信研修総合ガイド2023特集ページ「人的資本と人材育成」の一部です。
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