通信教育およびeラーニングの活用実態調査

調査概要
産業能率大学総合研究所は、企業の人事・教育部門の担当者を対象に、通信教育およびeラーニングの活用実態を調査しました。
当調査では、人材育成の現場で広く利用される遠隔教育、特に「通信教育」と「eラーニング」に焦点を当て、その実態と効果的な活用方法を考察しています。
- 調査期間 2024年9月24日~2024年11月19日
- 調査方法 インターネット調査
- 調査対象 日本企業・組織における人事/人材教育部門の担当者・責任者
- 有効回答 179人
注目データ
(1)eラーニングを導入する企業は2019年と比較して17.8ポイント増
現在実施している教育手段について尋ねたところ、最も多かった回答は「eラーニング(Web上、パソコン上で学習を進めるもの)」で75.4%でした。次いで、「外部講師による集合研修」(70.9%)、「社内(内部)講師による集合研修」(65.9%)が挙げられ、いずれも6割を超える企業で実施されていました。
今回の調査結果を2019年の調査結果と比較すると、「eラーニング(Web上、パソコン上で学習を進めるもの)」の実施率が17.8ポイント増加しました。リモートワークの普及やDXやリスキリング需要が高まる中、これらのニーズを満たす教育手段としてeラーニングを導入する企業が増えていることが伺えます。一方で、eラーニング以外の全ての教育手段において実施率が低下しました。特に、「民間教育訓練機関の講習会・セミナーへの参加」は33.5ポイント減少し、大幅な落ち込みが見られます。また、通信教育も20.5ポイント減少しており、現在も44.1%の企業で導入されているものの、その活用は縮小傾向にあります。
(2)利用目的は「多くの従業員に、広く学ぶ機会を提供するため」
通信教育とeラーニングについて、利用の目的について尋ねました。
通信教育では、「多くの従業員に、広く学ぶ機会を提供するため」(62.0%)が最も高い割合で選ばれ、次いで「自ら学ぶ風土
を醸成するため」(59.5%)や「福利厚生の一環として」(50.6%)が挙げられました。
eラーニングでは、「多くの従業員に、広く学ぶ機会を提供するため」が74.8%と突出して多く選ばれ、他の目的と比較して
際立った結果となりました。次いで「自ら学ぶ風土を醸成するため」(50.4%)、「広く一斉に学ぶ必要のあるテーマを学ぶため」(50.4%)が挙げられました。
(3)通信教育は自己啓発受講が主流、eラーニングは自己啓発受講と必須受講が同水準
通信教育またはeラーニングを利用している企業に対して、それぞれの利用形態を尋ねました。
通信教育では、必須受講のみの導入が13.9%、自己啓発受講のみの導入が62.5%、必須受講と自己啓発受講の両方を導
入している企業が23.6%でした。これらを合計すると、必須受講としての導入は37.5%、自己啓発受講を導入している企業の割合は86.1%となります。
eラーニングでは、必須受講のみの導入が30.2%、自己啓発受講のみの導入が36.4%、両方を導入している企業が33.3%となりました。これらを合計すると、必須受講としての導入は63.5%、自己啓発受講を導入している企業の割合は69.7%となります。
(4)学習を通じた行動変容と組織パフォーマンスの向上が課題
通信教育またはeラーニング利用している企業に対して、学習の効果について尋ねました。
通信教育では、「学習したメンバーが満足している」「情報や知識を獲得できている」といった項目に対し、「あてはまる」、「ややあてはまる」と回答した企業は6割を超え、多くの企業が満足度や知識の獲得に効果を認識していました。しかし、「学んだことを現場で実践している」「個人の行動が変化している」といった行動変容や、「部門・部署のパフォーマンスが向上している」「組織全体のパフォーマンスが向上している」といったパフォーマンスの変化は効果を感じている企業が少なく、「効果測定をしていないため分からない」と回答する企業が高い割合を占めました。
eラーニングについても同様の傾向が見られました。多くの企業が満足度や知識の獲得に効果を感じている一方で、行動変容やパフォーマンスの変化は効果を感じている企業が少なく、効果測定を行っていない企業が多いことが明らかになりました。
(5)人材育成に関する人的資本情報開示は時間と費用が主要項目に
人的資本経営の重要性が高まる中で、人材育成に関わる人的資本情報を開示している企業を対象に、通信教育やeラーニングを含む各種教育手段がどのように取り上げられているのかを尋ねました。
その結果、通信教育では、「教育費用」に関連する内容として開示している割合が25.0%と最も高い結果となりました。
eラーニングでは、「研修時間/学習時間」と「教育費用」に関連する情報をそれぞれ30.8%の企業が開示しており、いずれも高い割合を示しました。
集合研修では、社内講師・外部講師のいずれも「研修時間/学習時間」や「教育費用」に関連する情報の開示割合が高く、さらに「リーダーシップの育成」として開示している割合も比較的高い傾向が見られました。
外部セミナーでは、「教育費用」に関連する情報を開示している企業の割合が30.6%と最も高い結果となりました。
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