【企業事例】前澤化成工業株式会社様 - 「受講率8割」のカギとなる、自律性を重視する文化

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1937年創業、1954年設立。
昭和29年にわが国で初めて、無可塑剤成形による水道用硬質塩化ビニル製継手の製造・販売を開始。以来、「人々の生活に欠かすことのできない水」「安全・安心な水」を届けることを目指し、さまざまな上・下水道関連製品の製造・販売を手掛ける。
北海道から沖縄まで支店・営業所を展開。従業員数595名(2020年3月末時点、連結)。
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野渡 颯 氏
総務人事課
新卒で入社し、現在3年目。総務関連業務全般と採用関連業務を担当する他、障がい者雇用推進業務として自社農園「なないろ農園」の企画運営に携わる。
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大庭 広紀 氏
法務課兼総務人事課 課長
新卒で銀行入行後、司法書士事務所代表を経て現職。現在10年目。司法書士、行政書士の資格を所持しており、入社時から法務課に配属。3年 前からは、総務人事課を兼務し、課長を務める。
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河島 秀幸 氏
総務人事課
新卒で医薬品会社に入社後、5年間の勤務を経て現職。現在5年目。前職から人事畑が長く、主に賃金関連業務全般を担当し、企業年金制度の企画運営にも携わる。
貴社の教育施策の全体像と、教育施策における通信研修の位置づけについて教えてください。
当社の教育制度は「職場内教育(OJT)」「職場外教育(Off-JT)」「自己啓発援助」の3つに分けられます。このうち自己啓発援助は、従業員の自主的な学び、スキルアップおよび資格取得を支援する制度です。
その中のひとつが通信研修で、全従業員が対象となります。


自主的な学びということですが、通信研修の受講は任意なのでしょうか?

受講は任意ですが、3年間で何らかのコースを1つ修了していることが昇格要件に含まれています。コースは資格取得やビジネススキルアップを目指す方向けのもののほか、管理職や新入社員といった階層別のものなども幅広くラインアップしています。
通信研修はあくまで自己啓発のためのものという位置づけです。このため、昇格要件となる通信研修は、対象コースを決めておらず、従業員が自分の学びたいものを選べばよいことになっています。


会社としては、通信研修では従業員に「学ぶ姿勢」を浸透させることに
重きを置いています。従業員の通信研修受講率が約8割、受講者の修了率は約9割と、非常に高い水準にあります。通信研修が定着している理由をどのように分析されていますか?
過去のデータを振り返ると、通信研修の導入当初の受講率は20~30%でした。
「みんなで自己啓発のために通信研修を受講しよう」という声掛けによって受講率が徐々に高まっていったのだと思いますが、受講率が高い割合で安定する決め手になったのは、2002年に受講料を会社が全額負担する制度がスタートしたことでしょう。

当社では通信研修の受講料は会社が全額負担しており、
修了できなかった場合のみ給与から天引きされる仕組みです。
これは推測ですが、従業員の立場からすれば、受講料が自己負担だと「通信研修をやるべきかどうか」「時間を割くだけの価値があるだろうか」などと迷う気持ちが生じることは想像に難くありません。
受講料は1~2万円ほどのものが多くラインアップされているのですが、自分のポケットマネーで出すには思い切りが必要な額でしょう。それを会社が出すということなら、「とりあえず興味があるものは受けてみよう」と一歩踏み出しやすくなる効果があるのではないでしょうか。

通信研修で学ぶことが企業文化として根付いてらっしゃるのですね。

直近10年間の受講率は平均で76.9%にのぼり、近年は8割近くで安定しています。ここまでの水準になったのは先人の努力のたまものだと思いますが、その結果、職場全体に「通信研修を受講するのが当たり前」という雰囲気があるのが当社の特長ではないかと思います。
あくまでも「学ぶ姿勢」を維持するということに重きを置き、押し付けの教育ではなく「受講したいコースを取ってください」というやり方がうまく機能していると感じています。
当社では、役員も通信研修を受講しています。
それだけ「自ら学ぶ」ということが当たり前になっているのです。
コロナ禍で人材教育の環境も変化を余儀なくされていると思います。今後の方針についてお聞かせください。

従来の「職場内教育」「職場外教育」「自己啓発援助」という3本立ての構造は、大きく変える必要はないと考えています。課題だと感じているのは、新入社員の教育です。
入社して3年、5年と経験を積んだ従業員であればリモートでの研修やeラーニングでも一定の効果を期待できると思いますが、新入社員の場合、やはりリモートでの研修やeラーニングばかりでは学んだことと実際の業務がなかなか結びつきにくい面があります。
今後は3本立ての構造の中で、対面による研修が必要なものとリモートなどで実施可能なものを仕分けしていく必要があると考えています。
最後に「人生100年時代」と言われる中で「学び」はどうあるべきか、皆さんのお考えをお聞かせください。

私のモットーは「出社したときより退社するときのほうが成長しているよう、1日に何か1つでも持ち帰る」ことです。1日1日を積み重ねる中、そのような心がけがあるとないとでは成長の度合いに大きな差がつくのではないかと思っています。
人材の流動化が進む中、自信を持って「私はこれを学んできて、このような強みがあります」と強く打ち出せるものを身につけておくことも重要でしょう。従業員の方々には、通信研修制度を自分が学ぶべきことや強みについて思いを巡らせる機会にもしてほしいですね。
近年は当社も定年後の再雇用者や中途入社者が増加しています。「人生100年時代」では80歳まで現役で働くという人もいるでしょう。高校を卒業したての18歳から80歳まで従業員の年齢層が広がれば教育のアプローチも変えていく必要があります。会社として、それぞれの年代に向けた施策を考えるべきでしょう。
その点、通信研修はどの世代でも役立つコースを見つけられる点にも意義があります。担当者として、従業員の皆さんが「通信研修で成長できる」ということを感じられるよう、今後も携わっていきたいと思っています。


私は自分が司法書士などの資格を取得したことについて「興味を持って勉強した結果だ」と考えています。自分自身の経験を振り返ると、興味がないのにセミナーを受けてもなかなか内容が頭に入ってこないものです。
自律的に「自分が学びたいものを学ぶ」ことが重要なのは、興味を持つことこそが学びの入り口になるからであり、一度でも「興味を持って勉強したら知識が身についた」という体験ができれば、学びは習慣化しやすいのではないかと思います。
これからも従業員に興味を持ってもらえるコースを用意し、
受講率やリピート率を高い水準で維持していければと思います。(2020年7月27日取材・撮影)
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