【事例紹介】三菱重⼯業株式会社 グローバル⼈材と"志"をもった⼈材の育成強化

はじめに

三菱重⼯は1884年創⽴。以来、産業全般の礎を築き続け、その製品分野は現在、家庭⽤エアコンから産業機器、船舶、発電設備から宇宙ロケットまで、およそ700品目に及びます。

古い歴史をもつ同社は、戦後の財閥解体で地域別に3分割された後、1964年に再合併しました。その名残から、各地の事業所が強い権限がありましたが、2011年4⽉、組織の抜本的な改⾰を実施しました。

経済のグローバル化や新興国の台頭など、事業環境の変化に対応するため、事業本部に権限と責任を集中し、意思決定のスピードを速め、企業としての全体的な戦略を重視した組織への変更を図りました。

半世紀越しの課題とされた改⾰によって、⼈事部は、どのような変化を遂げようとしているのでしょうか。また、組織改変にともなう⼈材マネジメントのあり⽅とは-。

⼈事部次⻑として、⼈材の育成に携わる、原⽥庸⼀郎⽒に話をお伺いしました。

巨⼤組織に横ぐしを刺し 意思決定のスピードを加速

2011年春に、弊社は半世紀ぶりの抜本的な組織改⾰を⾏い、事業本部制と事業所制の2本⽴てで⾏ってきた従来の組織運営を改め、事業本部制に⼀本化しました。

コーポレート部門は、本社と各事業所の機能を合わせ、全社コーポレート部門として⼀体運営を⾏います。これにより、社としての総合⼒発揮に向けて、全社の戦略⽴案とガバナンス機能の強化、さらには事業⽀援機能の強化と間接業務の効率化を図っていくことになりました。

私は本社に異動する前まで、⻑崎造船所で総務部⻑として⼈材育成に携わってきましたが、正直、本社の意思決定のスピードには少々違和感もありました(苦笑)。ですので、⻑崎造船所時代から率先垂範で社内外のネットワークと⾃らのフットワークの軽さを活かして、環境変化へのスピードに対応していこうと努めてきました。

そして本社⼈事部へ来てから、まず取り組んだのは、グローバル⼈材育成の体系づくりです。

各事業所から中核となるメンバーを集めてプロジェクトを⽴ち上げました。また、ベンチマーク企業へヒアリングを⾏うなど外部の情報収集にも余念なく取り組みました。
その結果、グローバルへの対応⼒を強化していくためには、若⼿を中⼼に早期から幅広い層へ研修を実施するとともに、語学教育の考え⽅の⾒直しが必要であると認識しました。

今年度から、下記の『グローバル⼈材育成ロードマップ』に基づき研修を展開中です。

かつての⼈事・労務部門は歴史的に「会社の規則が、ルールがこうだから」と対応しがちでしたが、現在は「どうしたらできるか」という視点で、こちらからも仕掛けていくよう⼼がけていますね。

本社⼈事部の⼤きな役割は、各事業部門をサポートすることですが、事業部門が⾃分たちではなかなか気づかない部分については、こちらから積極的に働きかけていく。その両⽅があって初めて、⼈事部が他の部門から頼られる存在になれると思っています。

社員教育においてはこれまで通り、基本的に各地域に実施を任せています。
役職者研修やコンプライアンスなど必須のテーマは本社主導の統⼀したものになりますが、それ以外については、地域によって盛り込む内容は違ってくるのです。

どうすれば受講者のモチベーションを⾼められるかも含めて、徹底的に考え抜いた上で、トライ&エラーで実践してもらい、結果的にいいものは全社で共有する体制にしていきたいと思います。

社員⼀⼈ひとりが“志”を持って仕事に取組む姿勢を作りたい

今後は、グローバルな⼈材の育成と同時に、社員の“志”を⾼めるようなことをしていきたいと考えています。

これは⻑崎造船所で特に⼒を⼊れて取組んでいたことですが、社是やCIステートメントとは別に、個々⼈が、“仕事のあり⽅はどうあるべきか”を、各⾃の志をもって仕事に取組めるような⼈材を育てていきたいですね。
ただし、私の⽅から「これが志だ」とは⾔いません。

なぜなら志というものは「何が⼤事か」という軸を⾃分の⼼中にもつことです。私は、仕事をしていく上でそういうベースを持っていることが⼤事だと考えていますので、社員⾃⾝にも何が⼤事かを常に考えながら仕事を含め⼈⽣と向き合ってもらいたいと伝えています。
また、弊社では熟練技能の伝承の場として『技能塾』を設けていますが、ここで⼤切なのは、単に「やった」ということではなく、受講した⼈間と教えた⼈間同⼠が成果・成⻑を感じられること。
教わる側には将来の可能性を信じてもらい、教える側も受講者が成⻑している達成感を得られるようにしています。

異業種交流の重要性と部⻑級の管理者に対する教育への課題

企業にとってよいことをするには、⾃分⼀⼈の頭の中だけではなかなか独創的なものは出てきませんから、社内はもとより、異業種の⽅々と問題意識を共有したり、アイデアをだしあったりと対話していくことも重要です。

私もかねてから他社との交流は緊密にさせていただいていました。これまで弊社は、教育はもちろん、なんでも社内でやろうという傾向が強かったのですが、現在は、異業種も含めて様々な企業や機関と協業しながらやっていこうという考えに変わってきています。研修にしても、⾃社の社内研修に他社の⽅が⼊ってもらいたいし、他社の研修に当社の社員を参加させたいと思っています。

また、教育といわれると斜に構える⼈がいますね。受け⾝で受講する姿勢を、どうやって能動的にするか、テクニカルな部分も含めて、プログラムをサプライジングで感動を与えられるものにすることも必要です。

⾃分のやってきたことに⾃負⼼があり、経験があればあるほど、⾃分が変わることに抵抗を覚える⼈もいる。その考えをアイスブレイクするためには、魅⼒的なプログラム設計が重要です。
単純に、⾃分たちが雲の上の⼈だと感じるような、世間でも著名な経営者の⽅にお話をしてもらうのもいいでしょうし、あるいは、⾃分たちとは全然違う職業の⽅に話題を提供してもらってもよいと思います。
ただし、異業種の⽅のお話を、単に違う世界の⼈の話として聞き流してしまわないように、⾃分の仕事に置き換えて考えられるようにモチベートする⼯夫も必要です。
⼈材育成に関しては、絶対に型通りのものにはしたくないと思っています。その上で、マーケティングやコーチングなど専門技術を要するものは、外部の講師にお任せして、効果的に⼈材の育成を進めていきたいと考えています。

今後も弊社の社員に対する教育の重要性がより増していくように、トライ&エラーの精神で、⾃分⾃⾝も含めてブラッシュアップしていきたいと考えています。

「三菱重⼯業の社員教育」と「産能⼤公開セミナー」の関わり

「企業は⼈なり」の考えに基づいた社員教育の基本⽅針

「三菱重⼯」は、企業の成⻑と発展は、究極的には社員の資質いかんに左右されるとの考えから、社員教育に⼒を⼊れています。事務・技術職系と技能職系の2本柱で段階的に教育を実施し、管理職層からは全社共通で⾏い、社員の能⼒の伸⻑を図っています。

そして基本的には、管理・監督者の⽇常業務に即して⾏うOJTを中⼼としながら、そこでは補いきれない内容を、外部機関に協⼒依頼しています。
これにあたっては、必要な時間数やもっとも効果的な⽅法によって⾏うことを目的とし、2007年から、管理職を初めとした研修に産業能率⼤学の公開セミナーを利⽤しています。

部⻑クラスを対象にした研修に寄せられた声

「経営塾」はマネジメント層の研修の中で、管理職3級(課⻑・次⻑級)1年目の全員を対象に、各機関の公開セミナーへ派遣するものです。

これまで学んできた知識の整理、および異業種交流を目的として、毎年100名程度を派遣しています。その派遣先の⼀つとして選定されている産業能率⼤学の「部長実践研修」に参加した社員からは、アンケートで以下のような声があがっています。

「経営・経営学について伝統的な考え⽅と最新の考え⽅が紹介され興味深い」
「講師は最新の先進企業情報を豊富にもち、具体的な事例を交えた説明で理解しやすかった」
「漠然とイメージしていた部⻑層の役割について客観的に知ることができ、意識を⾼めることができた」

また、講義の内容に効果を覚えるだけでなく「他社、他業界の⽅との交流によって、⾃らの業務を認識し直すよい機会となった」と、多くの社員が感じています。

また、このような感想も寄せられています。
「講義内容、課題などのボリュームと研修期間のバランスが適切」
「時間が過ぎるのが非常に早く、充実した研修だった」

教育に必要な“感動”を与えられる研修内容

これまで、⾃⾝も社員の教育に対して熱⼼に携わってきた原⽥次⻑は「どんな教育も“感動”を与えられなくてはダメだと考えます」と語っています。
その点において、産業能率⼤学の研修では、さまざまな角度から感動を与えられるような試⾏錯誤が⾒られます。

宿泊型のセミナーでは講義内容そのものに加えて、2泊3⽇という期間を共にすることで、濃密な対話が促進され、参加者は⼤きな刺激を受けています。信頼関係を築くことによって、研修の質的向上も図れますが、それ以上に研修後も個⼈レベルで交流を図り、継続的に⾃らの業務に活かしているケースも少なくないようです。

教育は広く経営管理、⼈事管理の⼀環であるとの基本⽅針を掲げる三菱重⼯。

その⼀環として、産業能率⼤学の研修を活⽤することで、より⾼い視点・広い視野と⾼い経営スキ
ルを保有する役職者の育成を図っている
のです。

コース紹介/三菱重⼯業様が利⽤している「部⻑実践」をご紹介

経営戦略を推進し、部門目標を効果的に達成する“業績向上のリーダー”を育てます

これからの部門管理者は“鋭い経営感覚”を!

部⻑は、部門の業績向上の最⾼責任者であると同時に、鋭い経営感覚を持った戦略⽴案・推進の担い⼿でなければなりません。

特に低成⻑下では部門⻑への期待 が⾼まっています。
トップが掲げる経営⽅針や変⾰ビジョンを受けて経営戦略を⽴案する際には、内外の環境変化を⾒据えた資源分析、事業構造の⾒直しや組織戦略、⼈材育成戦略、資源投資戦略などを総合的に組み⽴てていく必要があります。

本セミナーでは、上級管理者に不可⽋なトータルな経営感覚を⾼めるとともに効果的な部門目標達成の技術を、ビジネスゲームや事例研究、理解促進討議法等を通じて体得していきます。

研修のねらい

  1. 組織上での⽴場・役割を認識し、経営管理の基本コンセプトをつかむと共に部門目標達成に必要な“目標による管理”の展開技術を習得する。
  2. 部門⻑に必要な経営感覚や戦略マインド、計数感覚を⾼める。
  3. 経営戦略に必要な目標形成⼒、意思決定⼒、情報分析⼒などを強化する。

研修プログラム

1⽇目

開始:13:00
終了:19:00

1.オリエンテーション

  • 研修の目的
  • 会社(部門状況)の紹介

2.部門管理者に期待される役割

  • 企業をとりまく環境の変化
  • 経営ビジョンと戦略
  • 経営管理とは
  • 部門管理者に期待される能⼒

3.マネジメントの基本コンセプトの確認

  • マネジメントの領域
  • 基本コンセプトと⾏動基準
  • 管理⾏動の明確化
  • 設問討議

2⽇目

開始:09:00
終了:19:00

4.マネジメントサイクルと部門目標の達成(目標による管理の展開)

  • 目標による管理とは何か
  • 目標、⽅針、計画
  • 目標による管理のサイクルと具体的展開

5.事例から学ぶ目標達成

  • 目標設定〜達成のプロセス〜評価における留意点
  • 部門間調整演習

6.経営戦略と部門活動

  • 組織活動と戦略
  • 意思決定の重要性
  • 財務諸表の⾒⽅

7.経営計画と財務諸表の作成(経営戦略シミュレーション) 〜計画と意思決定〜


8.〈導⼊期〉演習


9.〈成⻑期〉演習

(情報交換会)

3⽇目

開始:09:00
終了:15:00

(経営戦略シミュレーション・つづき)

10.〈成熟期〉演習


11.経営戦略の分析と評価

  • 経営のふりかえり
  • 戦略に影響する要因
  • 会社の強み・弱み
  • トータルマネジメント

12.まとめ

  • リーダーシップの発揮を