グローバル・マネジメントにおける宗教のグローバル化
アジアは地域により宗教、文化、職業観、家族観など価値観が多様で、先進国からすると「異質」に感じる。この企業もアジアの様々な国籍の社員が存在している。
過去にはグローバルスタンダードという言葉が使われ、新しい市場に対して、先進国中心の一律的な考え方や生産システムで参入したことにより多様な問題が発生しビジネスが頓挫した企業が多く存在した。
アジア・新興国経済社会が先進国の考え方やシステムによる参入を困難にしている特性には、資源やインフラ(=リソース)の不均衡があり、これらの背景には民族や宗教間の衝突・摩擦ということが挙げられる。
ドバイにおいてはイスラム教を国教とするアラブ首長国連邦にありながら非イスラム教徒の外国人が多く住み、イスラム色の薄い、宗教的制約の極めて薄い都市である。
先出の企業ではこれらの特性を持った社員をベストマネジメントし事業成果を出している。
成功の要因は「受け入れ」にある。
ドラッカー氏は「ローマ帝国において、征服地がスペインであれ、北アフリカであれ、現地の優秀な人材を積極的に受け入れて活用し、自らの宗教や価値観を押し付けなかった点に成功の秘訣がある。」と指摘した。
これが『ローマの寛容』である。
公平さと寛容をマネジメントの価値基準として持ち、全てを平等に受け入れる体制作りをしているのがこの企業であり、宗教観に関しても社員同士が敵対視する宗教であっても、お互いがビジネス上では必要であり無駄な人はいない。必ず誰もがビジネスの役に立っているという価値基準の元に動いている。
この価値観そのものがこの企業の宗教ともとれるが、グローバル化は宗教の影響を受けざるを得ないとともに、宗教そのものがグローバルに伝播してきたという事実がある。
宗教が国境や文化・言語の壁を越えてグローバルに広がってきた現象は、その過程をみれば、仏教、キリスト教、イスラム教などが古くから展開され受け入れられ成功してきた事実がある。
そのような意味で、宗教がグローバル化することは決して新しい現象ではない。宗教が国境や文化の壁をこえてどのように伝播するのか、つまり「宗教のグローバル化」過程について探求することに企業のグローバル・マネジメント成功の鍵が存在する。
プロフィール
中根 貢(ナカネ ミツグ) 学校法人産業能率大学 総合研究所 主幹研究員
【学歴/職務経歴】
1985年 駒沢大学法学部法律学科卒業
1985年 (株)日本交通公社関連会社入社 学校団体営業・老人クラブ営業、添乗業務に従事
1989年 学校法人産業能率大学入職 現在に至る
2009年 高野山大学大学院 修士課程密教学専攻 在学中
【研修活動領域】
◆製造業・小売流通業・輸送業
「ネットワークオリエンテッド・マーケティング(関係性志向型マーケティング)」
「データベースマーケティング戦略」
「エコマーケティングの実態」
「市場戦略構築」
「新規事業戦略」
「ブランドロイヤルティ」
「営業力強化」
「対人力コミュニケーション」
「コンフリクトマネジメント」
◆非営利法人・電力会社・鉄道業・福祉/医療
「公益法人のマーケティング」
「ホスピタリティ志向の効率化計画」
「好感度対応」
「住民対応(クレーム対応と交渉力)」
「福祉サービスの向上」
「ホスピスと援助論」
「乳がん看護認定看護師教育」
◆ホテル・旅館・旅行業・宗教法人
「サービスとホスピタリティ・マネジメント」
「CRM構築」
「旅行業におけるホスピタリティ・ツーリズム」
「エリアマーケティングと顧客カテゴリー分析」
「異宗教と密教」
「現代布教論」
◆葬祭・墓苑販売業
「葬祭業における効果的な販売手法の確立」
「葬祭マニュアル構築」
「葬祭ディレクター資格構築」
【著作物】
・「社会福祉法人の今後」 全国社会福祉協議会
・「テレマーケティングのアウトソーシング化」 日本産業新聞
・「エコマーケティング実態調査報告書」 学校法人産業能率大学
・「エコプロダクツガイド2001」 日経エコロジー
・「環境白書」 環境省環境計画課
・「自社の営業力を評価する」 ダイヤモンド・セールスマネージャー
・「人脈力」 通信研修テキスト 学校法人産業能率大学
・「社会福祉施設経営管理論2011」 全国社会福祉協議会