自動車技術のグローバル展開(4) ~自動運転の未来~

「自動運転」という言葉の一人歩き

最近のTVCMなどでは盛んに「自動運転」という言葉を耳にします。自動車メーカーも総力を挙げて自動運転技術の競争時代に入ったと言っても過言ではないでしょう。ところが辞書で「自動」を検索すると「他の力によらず、自らの力で動くこと。特に、機械・装置についていう。」と定義されています。恐ろしいことに、一般ユーザーにとって「自動運転」「自動ブレーキ」などの文言から連想することは、「全てクルマが判断して目的地まで移動してくれる」「クルマが判断して衝突しない」夢のようなシステムを考えてしまう方が多いのではないでしょうか?自動車メーカーにとっては「走る、曲がる、止まる」に付随して「ヒューマンエラーの防止」を最大のアピールポイントに販売しているからこそ「自動運転」というシンプルで究極のメッセージを発信しているのでしょう。

図表1:現「自動運転」は全自動ではない

しかし、この文言は一般ユーザーにとっては「とても危険な言葉の誤解を生む」と思われます。要するに「自動運転」という言葉が勝手に一人歩きしている。個人によって捉え方がさまざまであるという欠点を抱えています。現時点では「自動運転」ではなく、「運転支援システム」とか「運転アシストシステム」という言い方が的確な表現かと強く思います。

    「自動運転」の法的定義

    日本政府や米国運輸省道路交通安全局では自動化のレベルを以下のように定義しています。

    【レベル0】
    ドライバーが常にすべての主制御系統(加速・操舵・制動)の操作を行う。前方衝突警告(FCW)などの主制御系統を操作しない運転支援システムもレベル0に含む。

    【レベル1(運転支援)】
    加速・操舵・制動のいずれか単一の操作をシステムが支援的に行う状態。自動ブレーキなどの安全運転支援システムによる。

    【レベル2(部分自動運転)】
    システムがドライビング環境を観測しながら、加速・操舵・制動のうち同時に複数の操作をシステムが行う状態。アダプティブクルーズコントロール(ステアリングアシスト付き)等がこれに該当する。ドライバーは常時、運転状況を監視操作する必要がある。

    そのため、2016年時点で市販されているシステムはある程度の時間(10~15秒等)、ハンドルから手を離しているとシステムが解除される等の仕様となっています。2016年、自動車専用道及び高速道路走行中、かつ同一車線、60Km/h以下のみに限定した日産プロ・パイロットを搭載したセレナが8月下旬発売と発表になりました。2017年時点でのテスラ社のオートパイロットもレベル2に該当しています。

    【レベル3(条件付自動運転)】
    限定的な環境下もしくは交通状況においてのみ、システムが加速・操舵・制動を行い、システムが要請したときはドライバーが対応しなければならない状態。通常時はドライバーは運転から解放されるが、緊急時やシステムが扱いきれない状況下には、システムからの運転操作切り替え要請にドライバーは適切に応じる必要がある。しかし、人間のドライバーが緊急時にはスムーズに切り替えられない問題が指摘されている。事故時の責任はドライバーとなる。

      図表2:新型アウディーA8;Traffic Jam Pilotシステム搭載(自動運転 レベル3)

      レベル3に該当するシステムは2017年秋時点でアウディーが該当機能を搭載した「アウディー A8」の市販を2018年に開始すると発表しています。

      【レベル4(高度自動運転)】
      特定の状況下のみ(例えば高速道路上のみなど、極限環境を除く天候などの条件)、加速・操舵・制動といった操作を全てシステムが行い、その条件が続く限りドライバーが全く関与しない状態。基本的にドライバーが操作をオーバーライドする必要はないが、前述の特定の状況下を離れると人間の運転が必要になる。

      日本政府は2020年までにレベル4自動運転車の実用化を目標としています。レベル4に該当するシステムは、鉱山等で運用されている無人ダンプや無人軍事用車両等、特殊環境で運用されているもののみで、一般市民が公道を走れるものは2017年時点では市販されていません。

      【レベル5(完全自動運転)】
      無人運転。考え得る全ての状況下及び、極限環境での運転をシステムに任せる状態。ドライバーの乗車も、ドライバーの操作のオーバーライドも必要ない。安全に関わる運転操作と周辺監視を全てシステムに委ねる。

      多くの自動車メーカーやその他の企業が、レベル5相当の自動運転車の市販に向けて開発を行っています。日本政府はレベル5の完全自動運転を2025年を目途に目指すとしています。
      またアメリカでは、カリフォルニア州でレベル4の自動運転車を規制する法案がカリフォルニア州運輸局から提出されましたが、その後、より上位のアメリカ全土の交通規制を管理するアメリカ運輸省は、「自動運転の人工知能はドライバー」であるとレベル4を容認する見解を示しました。
      一般ユーザーは自動運転の定義が前述の【レベル0】~【レベル5】まであることは知りませんし、【レベル1】の「運転支援」から「部分自動運転」「条件付自動運転」「高度自動運転」まで、一色単に考えて「完全自動運転」と誤解している可能性もあることでしょう。

      航空機の自動操縦に関して

      一般的に「オートパイロット」と呼ばれる自動操縦装置が航空機には搭載され、既に実用化されています。航空機が離陸するときは、パイロットが関わることが必要ですが、離陸後の安全高度に達した後に、次の空港に向かうまでの「巡航」「空港への侵入」「着陸」など、ほとんどの段階で自動操縦システムが備えられています。もちろん、空港の地上施設によっても完全自動着陸のレベルは異なってきますが、基本的に航空機に問題が発生したときには、オートパイロットに操縦を任せて、2名のパイロットは問題解決に当たるのが基本となっているようです。だからと言ってオートパイロット作動中にパイロットが居眠りしたり雑誌を読んでいてよい訳がありません。複数台あるコンピューターシステムの管理と周辺の航路目視が重要な仕事となります。

      図表3:最新鋭機のコックピット、操縦桿もゲーム機のようである

      航空機においてここまで自動操縦技術が進歩し実現できているのは、言うまでもなく地上施設のシステム整備と航空機自体の最先端技術の投入に加えて、特殊訓練と資質を持ち合わせたパイロットが存在しており、かつ一定高度以上に上昇してしまえば、障害物にぶつかる確率が一気に減少するからです。これらの航空機における環境が、クルマにおける自動運転と根本的に難易度が異なっている理由です。

        それでもなお航空機事故が発生してしまうのは、予期せぬ不具合が発生したときにコンピューターでも人間でも解決できない闇が潜んでいるからでしょう。

        終わりに

        自動車業界における環境問題の解決は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンの内燃機関を持つクルマから、ハイブリッド車やプラグイン・ハイブリッド車との共存過程を経て、徐々に電気自動車の時代に移っていくと考えます。特に観光地では自然保護のために、内燃機関を持つクルマの乗り入れが禁止され、長距離移動を必要としない用途(通勤、買い物が目的のクルマ)では、価格次第ではあるが一気に電気自動車への移行が加速する可能性が高いのではないでしょうか。なぜなら我が家の家内のクルマは片道5Km弱の通勤と買い物がメインであり、100Km航続距離があれば週1回のフル充電で十分であるからです。そんなクルマが150万円くらいで買えるなら、1人1台クルマが必要な地方では、都会に比較して電気自動車の普及に拍車がかかるかもしれません。運転の楽しさに関しても、発進時に最大トルクを発生するモーターの方が、無段変速機との相乗効果もあり「気持ち良い加速」ができますし、何と言っても無音なのは疲労低減にも役立ちます(後ろからクルマが接近する場合の歩行者への配慮は必要不可欠ですが・・)。

        自動運転技術を開発していくことは「安全に直接関わる要素」であるから、非常に素晴らしいことだと思います。特に高齢化社会において、高齢者のブレーキとアクセルペダルの踏み間違い事故や渋滞時の追突事故などは「自動ブレーキシステム」によって回避されます。しかし、現時点では「自動運転」という文言を安易に一般ユーザーに訴求すべきではないと強くメーカーに求めます。また将来、前述「自動運転【レベル4】【レベル5】」が達成できたとしても、「最後の最後の正否判断はドライバー(人間)が下し、操作を実行すべき」だと私は考えます。なぜならば、現在でもそうですが「インターネット社会の最大の脅威は“サイバー攻撃”」であるからです。すべての自動運転車がサイバー攻撃を受け、ウイルス感染したらパニックになることは容易に想定できます。よって筆者は「自動運転技術」に関しては、現時点では非常に懐疑的な意見です。

        電気自動車の普及には大きく国策も関連してきます。「エコカー減税」のような補助金制度を増やすことや積極的な「充電ステーションの整備事業」も必要になってくることでしょう。そして自動車業界ではグローバルに技術の水平展開やシステムの標準化が急務となり、既存の自動車会社は国境の枠を超えた技術提携や資本提携により「開発費用の低減」と「開発期間の短縮」が図られ、結果として共通ユニット化(内外装デザインは異なれど中身は同一)による量産効果でコストダウンが進むことが期待できます。
        8月29日、日産とルノーの連合は、中国の自動車大手「東風汽車集団」と電気自動車を共同開発する合弁会社を設立すると発表しました。日産は以前から東風と自動車生産の合弁を運営しており、電気自動車開発でさらに協力関係を深めることになります。出資比率は日産とルノーが25%ずつ、東風が50%となります。新会社「eGT ニューエナジーオートモティブ」は中国 湖北省に拠点をおき、日産ルノー連合が持つ小型スポーツタイプSUV車をベースに電気自動車を開発するようです。さらにはインターネットに接続された「コネクテッドカー」(=自動運転も視野に入れる)の機能も持たせるということです。
        ホンダは2018年に中国で新型電気自動車を発売する予定ですし、アメリカのフォード・モーターやドイツのフォルクスワーゲングループも、中国メーカーとの電気自動車合弁会社設立を発表しています。

        図表4:電気自動車の「F1」:フォーミュラE

        2016年のクルマの世界販売台数は9369万台(フォーイン調べ)に上りますが、電気自動車は1%にも満たない状況でした。しかし、各国が納入補助金を出しているため市場の拡大は続くでしょう。また技術革新で価格がガソリン車程度に下がれば、普及は今後一段と拍車がかかることは容易に想像される業界です。
        私も人生最後のクルマとして、電気自動車の選択が視野に入っている昨今です。


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