現地従業員に対する「理念・行動指針」浸透のポイント②

現地従業員に対する「理念・行動指針」浸透のポイント②
 相手国の文化や風習、モノの考え方に合わせてコミュニケーション方略を変える
~株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメント様の取り組みを事例として~

前回のコラムに引き続き、株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメント様 との協働プロジェクトでの経験を踏まえ、現地従業員に対して、自社が大切にする理念や行動指針を理解・実践させていく上で有用と考えられるポイントについて述べてみたいと思います。

図:株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメント様が掲げる行動指針“Origin8”

図:株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメント様が掲げる行動指針“Origin8”

2つ目のポイントは、相手国の文化や風習、モノの考え方に合わせてコミュニケーション方略を変えることです。

 前回のコラムでも述べたように、株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメント様が従業員に求める行動指針には、決め細やかで質の高い日本的なサービスを実践するための8つの観点(①笑顔②感性③楽しむ心④連携⑤情報⑥点検⑦衛生⑧安全)が示されています。

この8つの観点は、例えば、お客様から何かお問い合わせがあった際、「どのような情報をどのようなタイミングでご提供すれば、お客さまに、より高い満足を感じていただけるのか」などを個々の従業員が状況に応じて主体的に判断し、行動する際の機軸となっています。

こうした機軸を従業員に理解させていく際、日本では集合形式での研修を行い、講師が理論や理屈を踏まえて、その意味を解説するといった“お堅い”方法をとることが一般的かもしれません。

筆者らも、この活動を始めた当初、動機づけや人材育成、サービスマネジメントに関する様々な理論や理屈を中心に据えながら、やや大上段に構えて説明するアプローチを行っていました。

しかし、残念ながらこうしたアプローチに対して現地従業員の反応は芳しくなく、以降、様々な試行錯誤のうちにたどり着いたのが、現地の文化や風習、現地従業員のモノの考え方に合わせて、柔軟にコミュニケーションを行っていくという方法でした。

その結果、例えば、環太平洋エリアのあるホテルで行動指針を理解して頂くために、現地の人なら誰もが知っている有名な歌謡曲の歌詞を行動指針の内容に替えて皆で歌う取り組みや、行動指針にちなんだ寸劇をスタッフパーティで上演する取り組みなど、理論や理屈よりも、まずは皆で楽しめる活動を通して行動指針に親しんでもらうアプローチが試行されました。

写真:環太平洋エリアのホテルのスタッフパーティで現地従業員が行動指針にちなんだ寸劇を行っている場面

写真:環太平洋エリアのホテルのスタッフパーティで現地従業員が行動指針にちなんだ寸劇を行っている場面

上記の写真のように、環太平洋エリアのホテルでは、大規模なスタッフパーティが開催され、毎回多くのスタッフが参加します。
筆者も何度かこのスタッフパーティに同席させて頂きましたが、実に大変な盛り上がりを見せます。
こうしたスタッフパーティでは、前述の歌や出し物だけではなく、優れたサービスを実践したスタッフの事例紹介や表彰も行われます。

写真:環太平洋エリアのホテルのスタッフパーティで優れたサービスを行ったスタッフに対して表彰が行われている場面

写真:環太平洋エリアのホテルのスタッフパーティで優れたサービスを行ったスタッフに対して表彰が行われている場面

従業員同士がくつろぎ、楽しむスタッフパーティの中で、様々なイベントを行いながら、“柔らかく”自社の理念や行動指針に触れさせていく・・・
筆者は、明るくて陽気な国民気質を持つ環太平洋エリアの従業員が、理念や行動指針を身近に感じる上で、このアプローチには一定の効果があったように感じています。



一方、中国エリアのホテルの従業員に対して、行動指針の理解を促すための教育を行う際には、各ホテルのリーダーに、実際に自ホテルで取り組まれた優れたサービス事例を紹介してもらう時間を多く作り、それを皆の前で「褒める」アプローチを重視しました。

一般的に、「中国人は面子を保つことを重視する国民性がある」などと言われます。
こうした国民性を意識し、各リーダーにはできるだけ「自ホテル自慢」をしてもらい、それを褒め称えることで、彼らの面子を立て、やる気を引き出そうというアプローチです。

これまで中国エリアの研修では、日本や環太平洋エリアのホテル、あるいは他のチェーンホテルで取り組まれた優れたサービス実践事例などを数多く紹介してきました。他のベストプラクティスから学ぼうというねらいです。

他の優れた事例から学ぶこの方法は現在も継続しており、そこには一定の意味も感じています。
しかし一方で筆者は、研修中の受講者の反応から、他ホテルの事例紹介だけでは、受講者が自分ごととして捉えてくれていないような感覚も覚えていました。
そこで、ある時期から、研修の中で、中国人が行った優れたサービス実践事例を中国人自らが紹介する時間を多くとるようにしました。

最初は、自ホテルの事例をどこまで情報開示してくれるのかなど、いくつかの懸念もあったのですが、結果的にこれまでこの方法は上手く機能しています。
一般的にシャイと言われる日本人に比べ、中国人リーダーは自分の意見や考えを主張することに抵抗が少ないからなのか、毎回、各ホテルのリーダーは、本来の持ち時間を超えて自ホテルの優れた取り組みを紹介してくれています。

写真:中国エリアのホテルの研修で中国人リーダーが自ホテルの優れたサービスの実践事例を紹介している場面

写真:中国エリアのホテルの研修で中国人リーダーが自ホテルの優れたサービスの実践事例を紹介している場面

こうした発表に対し、筆者がコメントやフィードバックを行う際には、発表してくれた内容のみならず、各リーダーが自ホテルでの「情報」を積極的に他のチェーンホテルのリーダーに開示・共有しようとする姿勢を、やや大げさなくらい褒めるように意識しています。

日本のビジネスパーソンを相手とした研修では、筆者の感覚として、褒めるよりも改善課題をコメントしたほうが受講者の満足度が高いように感じるのですが、中国ではこのアプローチは控えたほうが良く、むしろ、イメージとしては「10褒めて、改善課題を1つ述べる」くらいがちょうど良いように感じます。

こうして、優れた実践事例や情報共有に徹する姿勢を褒め、彼らの面子を十分に保った上で、最後に少しだけ改善課題を述べると、比較的すんなりと筆者のアドバイスを受け容れてくれる印象もあります。
こうしたことから、研修での発表のさせ方や講師からのフィードバックの仕方も、相手国の国民のモノの考え方を意識しなければならないのだとつくづく感じます。

 今回のコラムでは、環太平洋エリアと中国エリアでの筆者の経験を踏まえ、相手国の文化や風習、現地従業員のモノの考え方に合わせて、コミュニケーション方略を柔軟に変えながら、現地従業員に対して行動指針の理解を促している事例についてご紹介しました。

次回のコラムでは、3つ目のポイントとして、「万国共通・漫画を用いて行動指針の理解を促すアプローチ」について述べたいと思います。

オークラ ホテルズ & リゾーツ 国内17ホテル、海外9ホテル
ニッコー・ホテルズ・インターナショナル 国内20ホテル、海外18ホテル
ホテルJALシティ国内11ホテル
国内外に合計75ホテル(2016年4月1日現在)を展開


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