日系企業の中国人従業員の研修を終えて

日系企業の中国人従業員の研修を終えて

中国に進出する日系企業を10年以上考察した経験に加え、今年の夏、ある日系企業の現地社員研修に携わらせていただき、いろいろと新たに確認することができました。

今回は、企業内で中国人に能力を発揮してもらうための方策についての感想を述べさせていただきます。

グループワークを取り入れた研修だったので、受講生が話し合ったり、発言したりする場面が多くありました。
一人一人に声をかけてみると、温かくて、向上心もあって、常識をそなえた考え方をしています。ある意味では、日本人の考え方と大差は見られません。いいところを見つけて褒めてあげると、さらに素直に協力的になってくれます。当該企業では、問題がないわけではないのですが、どちらかと言えばうまくいっている会社だなと感じました。

しかし、中国の社会全体を見渡してみると、実践ベースにおいては法令順守やマナー、仕事への態度、サービスの質などにおいて大きな差がありますし、ばらつきも大きいように思えます。

    今回の研修でも、会場の秩序を維持するためには、日本の社会人を対象とした研修よりも、やはりエネルギーが必要だと感じました。

    日系企業からは、「中国人は扱いにくい」という声が聞かれる一方で、「日本人よりもバイタリティがあって、よく働く」、「単純で付き合いやすい」という声も聞きます。

    日本は、ほぼ単一民族で中流社会、各家庭の構成も似ていて、公立学校なら教育方針も統一されています。
    これらによって、外から見た日本人はかなり共通した価値観や考えを持っています。
    しかし、中国のように多民族で構成された大きな国では、地域の差、貧富の差、育った環境の差、受けた教育の差は日本人が想像できないほど大きいのです。ある意味では、中国人は日常的にダイバーシティの環境に生きています。

      それゆえに、中国人が多くいる企業だというだけでもダイバーシティ経営が必要になります。

      多くの中国企業の管理方法は、「成果主義」と「信賞必罰」です。
      たとえば、仕事がよくできる従業員に桁違いのボーナスを支給し、あまり働かない従業員のお手本にするというやり方もあれば、遅刻はいくら減給、欠勤はいくら……といったやり方もあります。

      その結果、ノルマのために不正をしたり、見ていなければルールを破ったり、さらにはボーナスを過剰にもらった人は戸惑い、もらっていない人はやる気を失ったりすることが起きます。
      このような管理手法を用いる経営者は、いつも職場の人事案件に惑わされます。経営陣と現場、あるいは従業員同士に不信感が募ることになります。

      日系企業も「郷に入れば郷に従う」を信じて、現地企業と同じやり方をしている会社もありますが、同じような落とし穴に陥る危険性があります。

      うまく現地人を活用している企業を観察すると、次のような3つの秘訣があるように思います。

        1つは、企業文化の構築と活用です。
        真の企業文化は、社風とは異なります。社風には良し悪しがありますが、企業文化は良い社風を醸成するために人為的に築かなければならないものです。
        企業文化は、主に企業の経営理念とコア・バリューによって構成されています。それらを社内外に浸透させることで、対内的には社員の行動規範、対外的にはブランドイメージ向上の役割を果たしてくれます。

        多様な行動基準や価値観をもっている中国人従業員に対して、この企業文化は何よりも重要になります。中国企業のアリババやハイアールはうまく企業文化を活用しています。

        もう1つは、行動規範を明確にした上で仕事を任せることによって、信頼関係を築くことです。
        信頼されると非常に協力的になってくるからです。
        場合によっては、いい意味で人間を化けさせてしまうこともあります。これは、どこの国の人にも共通しているかもしれません。中国に進出したダイキンなどは好例です。

        最後の秘訣は、正当な評価をしてあげることです。人材育成のために日本本社が中国に送った若い日本人駐在員の給料は、汗を流して頑張る現地人よりもかなり多いでしょう。
        また、同じ中国人であっても本社採用と現地採用では給料の差が大きいものです。
        現地人がいくら頑張っても昇給も昇進も望めない場合などは、不信や不満が生じ、ストライキのようなトラブルや不祥事が起きやすくなります。