「グローバル化」と「国際化」の違いについて

「これからはグローバル化の時代」と言われるようになって久しい。
未だにこの言葉を毎日の様にメディア等で見聞きするが、これはとりもなおさず日本企業がグローバル化をまだ成し遂げていない、もしくは不十分と感じている証左であろう。
それはそれで健全な問題意識と言えるのだが、筆者は「グローバル化」という言葉が誤解されたまま物事が運ばれているのではないかという懸念を感じている。

筆者は企業の人事部から「グローバル化に対応できる人材を育成して欲しい」との依頼をよく受けるが、その殆どの場合、「グローバル化」イコール「国際化」と理解されているのが現状である。
一見、どちらも海外と関わりを表す言葉なので同じように捉えがちだが、実はこの二つの言葉は全く別の概念なのである。
ここを誤解しているがゆえに、せっかく研修を実施しても、英語が少々上手くなった、TOEICのスコアが向上した、という表面的な結果で満足してしまい、真の「グローバル化」とはほど遠い場所に着地してしまうケースが起こりうる。

    中髙 英明(ナカタカ ヒデアキ) 学校法人産業能率大学 総合研究所兼任講師

    中髙英明(ナカタカヒデアキ)学校法人産業能率大学 総合研究所兼任講師

    では、「グローバル化」と「国際化」の違いとは何か? 
    「国際化」は「日米」「日中」というように、国ごとの違いを前提に、日本から「海の向こう側」をどう御するかという点に重きが置かれる。
    それに対し、「グローバル化」は世界を国境の無いひとつの共通の土俵と捉え、そこでの共通のルールや価値観を共有、認識した上で戦えるようになるのが真の「グローバル化」
    なのである。
    人材育成においても、主催する側は「グローバル化」のつもりでも、ついつい「国際化」に重きを置いてしまい、違いを乗り越えるためのツール、とりわけ「語学」に偏重してしまいがちである。それで真のグローバル人材は育てられない。

    「グローバル化」と「国際化」の違いについて端的な例を挙げよう。
    筆者はかつてNECに勤務していて、イギリスの生産拠点で仕事をした経験がある。出発する前に、当時の上司に「日本の意向を現地人に実行させるのが君の役割」と強調されたのを覚えている。
    イギリスに赴いた当初はそのようなスタンスで現地人と接していたのだが、なかなか自分の思う通りには動いてくれなかった。原因は、「これは本社が決めた事だから従え」とか「君は日本企業の子会社にいるのだから日本流にやれ」といったコミュニケーションをしてしまっていたからだった。
    日本では知らぬ者のいない大企業であっても、外国人にとっては単なる職場、実現の場でしかない。
    それを踏まえずに、「日本とイギリス」「本社と現地法人」という考え方で接していたのが間違いのもとだったのだ。
    これを改めるべく、現地人と一緒にランチを採る機会を増やしたりして相手の理解に努めた結果、彼らも根本的な部分では自分と同じ考え方を持つことが分かった。
    すなわち、「自分をもっと高めたい」とか「論理的に物事を理解・判断する」といった、国籍や文化背景に関係なく人間が持っている根源的な価値観があり、そこに訴求することで行動を促すことが出来るということに気づいたのだ。
    果たして、それ以降そのような働きかけ方に切り替えた結果、仕事が円滑に進むようになったのだ。

    国境・国籍を意識せず、人類共通の価値観というものを認識することがグローバル化の第一歩であり、そのために必要な「(語学を含むが、それに限定されない)コミュニケーション能力」や「論理思考力」、人間関係を構築する「ネットワーク力」などが真のグローバル人材に必要な能力なのである。

    プロフィール

    中髙 英明 学校法人産業能率大学 総合研究所兼任講師

    【学歴/職務経歴】

    【学歴】
    1992年3月 北見工業大学工学部電子工学科卒業
    2008年7月 英国レスター大学経営大学院MBA課程修了

    【職歴】
    1992年4月 日本電気株式会社入社
    2003年9月 モトローラ株式会社入社
    2008年10月 株式会社モルフォ入社
    2011年6月 サスケン・ジャパン株式会社入社
    2012年9月 経営コンサルタントとして独立 現在に至る
    現在     学校法人産業能率大学 総合研究所兼任講師


    【研修活動領域】

    【コンサルティング】
    ・海外向け創業補助金関連のコンサルティング
    ・業務改善コンサルティング
    ・公的機関からの企業の海外展開へ向けての派遣・相談業務   など

    【研修】
    ・神奈川県職業訓練(経営・国際ビジネス科にて貿易実務、ロジカルシンキング、財務会計、マーケティングなど)
    ・ベトナム駐