グローバル化時代におけるコンテクストを意識した戦略的対応

グローバル化時代におけるコンテクストを意識した戦略的対応

グローバル化は今後避けることができない環境変化である。
企業経営におけるグローバル化時代の最終ゴールは「多様性をマネジメントする」ことだと思うが、現実的には段階を踏んでいく必要がある。
最終的に多様性のマネジメントを実現することを十分条件として、2つの必要条件クリアしなければならない。
その一つは「相手を理解する」こと、もう一つは「共通言語」を身につけることである。
以下私の外資系組織での実務経験もふまえて、異文化について日本と比較した相対的な違いとして感じることを述べたい。

    本村 秀樹(モトムラヒデキ) 学校法人産業能率大学 総合研究所 准教授

    「相手を理解する」~宗教と労働観など

    海外では言動に表れる価値観がはっきりしている傾向がある。その最たるものが宗教である。
    自分の信仰する宗教の価値観は、所属している会社組織よりも(場合によっては家族よりも)上位に位置する。
    この宗教レベルの価値観を変えて行動してもらうことはほぼ不可能であろう。
    私の米国企業勤務時代、日本法人の子会社として接した国にシンガポールがある。シンガポールは多民族国家であるが、宗教・文化を融合した環境がつくられているわけではなく、相手を尊重しながら共存しているように感じる。宗教のような根源的な価値観を変えてもらうような努力は徒労に終わるだけでなく、トラブルの元になるだろう。

    労働観についても感じるところがある。
    日本には滅私奉公とまでは言わないまでも、仕事のためにプライベートを多少犠牲にするのは当然という価値観がある。
    しかし多くの海外の国では通用しにくい考え方だろう。
    旧約聖書まで遡れば、人間はもともと働かなくても生きていけるように生まれてきたはずであるが、原罪を犯したために労働しなければならなくなった、よって労働は神が与えた苦役であるという考え方があるようだ。

    さらに、仕事に関する人間観として性悪説が働いていることも感じる。近ごろ日本で強化が求められている内部統制は、米国では数十年まえからの当たり前のシステムである。そこには人間に対する見方としての性悪説があるように思う。
    人間は放っておくとよろしくないことをしてしまう存在なので、コントロールする仕組みを導入することは当然という考え方を持つのである。

    異文化の違いについて頭ではわかったつもりでも、実際の場面では大きなギャップを感じてしまうことが多いようだ。
    カルチャーギャップを低減するためには相手を知ることが不可欠である。

    グローバル化時代におけるコンテクストを意識した戦略的対応(2)

    まずは前半に続いて日本と海外の違いを述べたい。
    管理サイクルにおける日米差である。Plan-Do-SeeといういわゆるPDSサイクルについて日本と米国の相対的な違いを感じる。

    日本と比べて米国はPとSが厳格な傾向がある。
    つまり米国では、計画を明確に策定し、結果の評価も厳格に行う。
    一方Dの面では、仕事のやり方については各自に任せ、仕事の過程を観察などしない傾向がある。この点は私の過去の実務経験にも当てはまる。
    プロセスをチェックしない反面、グローバル共通の業務マニュアルはしっかり作られていた。そのおかげで先輩や上司にいちいち教えを請わなくても仕事を覚えることができた。
    英文の共通マニュアルの徹底活用により、3年間ほどでテクニカルな側面は現在の礎となるものを身につけることができた。

    日本では日頃の仕事ぶりを上司がよく観察しており、ちゃんと取り組んでいるかという「印象的勤勉」の側面は結構評価される傾向があり、その印象と実際の仕事の出来具合は比例することが少なくないと思われる。
    異文化では観察だけでは不十分であり、仕事を任せて安心できるように良い意味でのコントロールを充実させることが重要である。

    「共通言語」を身につける~コンテクストを意識して

    異文化間ではコミュニケーションのとり方を意識的に留意する必要がある。
    異文化間のコミュニケーションスタイルを説明するモデルとしてE.ホールの「ハイコンテクスト」「ローコンテクスト」の考え方が有益である。コンテクストとは、文脈と訳されることもあるが、明確な表現などがなくても通じる環境のことである。

    ハイコンテクスト文化では暗黙の共通認識ができているため、お互いを察し合って行動するアナログ対応でも問題なく事が運ぶ。日本人同士の間では可能なことである。

    一方、異文化間ではローコンテクストゆえ、種々のことを明確に「言語化」するデジタル対応が必須となる。このデジタル対応の例が「共通言語」である。

    一定水準以上の語学力(英語他の外国語)は必須であるが、ここではそれ以外の「共通言語」として2点挙げたい。

    その一つは財務知識である。財務はビジネス共通の言葉と言われる。グローバル環境下での実際場面では英語による財務用語を覚えることになるが、本質を理解する上では日本語による学習でも構わない。
    日頃社会人向けに研修やコンサルティングを実施している私の例で言えば、海外赴任者ないしは候補者を対象に、現地での実務を考慮した英文財務の実践的な学習を提供している。

    「共通言語」としてもう一つ挙げたいのは論理的思考である。これもOff-JTのトレーニングなどを通して比較的短期に習得可能であろう。
    論理的思考を通してコミュニケーションをとれば、誤解を避けることができ、意図した行動につながりやすくなるだろう。
    ただし私の外資系企業での実務経験から一言。例えば欧米は日本と比べてロジカル(論理的)な発想・展開をするという印象があるが、冷静に判断すると必ずしもそうではない面も感じる。自分の主張を明確に述べることとロジカルであることは別々にとらえるべきだろう。主張を通すためのこじつけとしか思えない場面に何度も出くわした。
    相手を説得できる真の論理性を磨くことが大切である。

    プロフィール

    本村 秀樹(モトムラ ヒデキ) 学校法人産業能率大学 総合研究所 准教授

    【学歴/職務経歴】

    1983年 青山学院大学 経済学部卒業
    1983年 米国会計事務所 Deloitte Haskins & Sells(現有限責任監査法人トーマツ)監査部門等を経る
    1991年 学校法人産業能率大学入職 現在に至る
    1994年 学校法人産能大学大学院 経営情報学研究科・経営情報学専攻修士課程修了


    【研修活動領域】

    以下に関する派遣・指導
    ※派遣においてはいずれも対象(階層、職種、選抜他)に応じてカスタマイズ。
    ◆アカウンティング・ファイナンス(財務3表、財務諸表分析、英文財務諸表・IFRS、原価計算、管理会計全  般、経営シミュレーション、コーポレートファイナンス、企業価値、EVA)
    ◆戦略的課題・目標マネジメント:探索・学習アプローチ他複数の手法(SSM、ABM、BSC他)を融合的に適用 し、業績に貢献する目標(機能するKPI)の定義まで展開
    ◆経営人材・経営幹部候補育成
    ◆事業性のある(売れるしくみ(マーケティング)と財務的採算の裏づけがある)ビジネスプラン構築
    ◆戦略的業績マネジメントシステムの構築:(人材育成の他に)業績志向のしくみによって業績向上に資する メカニズムを構築。
    ◆業務改善:効率性および効果性両面を高める改善
    ※派遣・指導いずれにおいてもいかに(財務)業績に貢献するかという「業績貢献力」を基本的なコンセプトと して提供。


    【資格】

    ・経営情報学修士(MBA)
    ・プロフェッショナルCFO


    【著作物】

    ・「スタディガイダンス会計学を面白く学ぶ(第3版)」(共著) 中央経済社
    ・「システム仕様の分析学-ソフトシステム方法論」(共訳) 共立出版
    ・「中小企業のための経営管理Q&A」(共著) 中小企業金融公庫
    ・「新時代における企業体質の強化Ⅰ・Ⅱ」(講演録) 学校法人産業能率大学(生涯学習センター)
    ・「環境会計に関する実態調査」報告書 学校法人産能大学
    ・「環境会計はこれでOK 傾向と対策」(月刊地球環境2000.7) 日本工業新聞社
    ・「バランスのとれた業績向上に貢献する手法:BSC(Balanced Scorecard)①‐②
      (「バリュー・エンジニアリング」2002.9/11) 社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会
    ・「コストマネジメントのためのABCの戦略的活用」
      (「バリュー・エンジニアリング」2009.11)  社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会
    ・「管理者のための財務知識」  産業能率大学通信教育テキスト


    【所属学会】

    ・日本経営分析学会
    ・経営情報学会

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