総合研究所の概要

お問い合わせ

資料請求リスト

IFRS時代をスムーズに乗り切るための基礎知識 -第1回-

はじめに

2011年6月30日、金融庁は企業会計審議会を開催し、国際会計基準(IFRS)の日本基準への適用方針を見直すための議論に着手しました。IFRSの適用開始にむけた準備期間も5~7年に延長され、現状、IFRSの適用は2018年4月1日開始事業年度あたりに落ち着くのではないかと予想されています。

十分な検討期間を与えられたからこそ、いまなすべきことを明確にしておく必要があります。

それは「はじめにIFRS財務システム導入ありき」のインパクト調査ではなく、「自社のどこが変わるのか?」「どこを変えなければならないのか?」を自社目線で取りまとめることです。そして何よりも大切なことは、IFRSを展開する上での重要な鍵となる人材育成のあり方を知ることです。

本コラムでは、このような時期だからこそ求められるIFRSの実務対応とその人材育成について考察します。

    (学)産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 赤松育子(あかまついくこ)

    学校法人 産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 赤松育子(あかまついくこ) ※所属・肩書きは掲載当時のものです

    2.IFRSの本質をとらえる

    2007年頃のJ-SOX(日本版サーベンス・オクスリー法、内部統制強化)ブームの時も、2000年前後のコーポレートガバナンスブームの時も、その潮流に有無を言わせないというような雰囲気があったことを覚えていらっしゃるでしょうか。
    「内部統制」とか「コンプライアンス」という言葉が印籠のように扱われ、そもそも論を語らせないような、あたかも批判を許さないというような風潮がありました。
     
    実は今回のIFRS論議にも同様な雰囲気があります。
    「グローバル経営」とか「海外のスタンダード」と言われてしまえば、その時流に乗り切れていない日本が悪い・・・と感じてしまいます。正面切って反論すれば「グローバル化に反対する現実逃避」と言われてしまうかもしれないと思うと、経営者としては本音を語りにくくなってしまうのはいたしかたないと思います。

    しかし、今回ばかりはちょっと立ち止まって良く考えて欲しいのです。

    本当に「待ったなし、グローバル化!」なのでしょうか?
    そもそも企業が海外進出をして事業展開することと、企業会計をグローバルで統一するということは、別物なのではないでしょうか?

    「会計基準のグローバル統一」といえば、非常に最もらしい感じがします。しかし、会計うんぬんの前に現実の経営があることを忘れてはなりません。つまり、会計というのはあくまでも開示の手段であって、経営という実態があることを忘れてはならないのです。
     
    経営の実態は何も変わっていないはずです。開示の手段である会計が「投資家目線」になるということ、これがIFRSの本質なのです。IFRSが考える有用な情報とは、企業が将来にキャッシュ・フローを生み出す能力であり、IFRSにおける財務諸表の役割は、それを予測するために役立つ情報なのです。

    「何も慌てることはない。」
    「経営の本質は何も変わっていないのだ。」
    「数字の見せ方がちょっと変わっただけだ。」

    この「投資家目線」ということの意味をしっかりとらえるために、まず2000年の会計ビッグバンから振り返ってみましょう。

    経営者の本音(IFRS導入って、本当に必要なのか)

    レピュテーションリスク:企業における事業やサービスに対して悪評が広まり、顧客の信頼を失うリスクのこと

    会計ビッグバン

    今から10年少し前の2000年から2006年頃にかけて「会計ビッグバン」という会計の大改革がありました。当時の日本の会計制度を当時の世界標準に近づけるために、新しい会計基準が次々と導入されていきました。新しい会計基準を簡単にまとめると、次のようになります。

    新しい会計基準 概要
    キャッシュ・フロー
    計算書
    営業、投資、財務という資金の増減から会社の実態を把握する会計手法
    これにより、利益があるのに突然倒産してしまう「黒字倒産」の兆候などが読み取れるようになる
    税効果会計 会計上の資産・負債と税務上の資産・負債との差異を調整する会計手法
    時価会計 今まで取得原価で評価していた金融資産について、決算期末時点の時価で評価する会計手法
    退職給付会計 今までオフバランスだった、企業が従業員に支払う退職金と企業年金を予測して、必要額を退職給付引当金として計上する会計手法
    減損会計 固定資産の収益性が低下して投資額の回収が見込めなくなった場合に、その価値下落分まで帳簿価額を引き下げる会計手法
    企業結合会計 合併や株式交換などにおける会計手法
    連結決算 従前の単体(個別)決算中心から連結決算中心へ変更

    この一連の会計制度の変革は、ひとことで言えば金融市場の観点を会計に取り込むというものでした。つまり市場経済における企業評価の考え方を会計にも、そして経営にも取り込んだのです。

    バブル経済がはじけて失われた10年と言われていた当時、日本の経済は構造改革を目指していました。そしてグローバルな市場経済に対応するために、経済の構造改革とともに企業の経営改革が推進されたのです。その中で会計のビッグバンが行われました。

    例えば、取得原価で計上されていた市場性ある有価証券に時価評価を取り入れました。同じく取得した当時の帳簿価額で保持されていた固定資産について、評価減の考え方を取り入れました。またキャッシュ・フローに焦点を当てて、損益計算書の利益(損失)だけでは見えなかった情報を開示するようになりました。退職時に支払わなくてはならない退職金をオフバランスからオンバランスの債務として計上することにしました。

    そして何よりもグループ経営の実態を示すために、従来の単体(個別)決算ではなく連結決算を前面に打ち出しました。グループで経営しているのであれば、グループ全体の成績表を開示することに非常に大きな意義があるということは、いうまでもないでしょう。

    このように、当時「会計ビッグバン」として騒がれた大変革ではありましたが、IFRSとの大きな相違点は、経営と会計が同じ方向を向いて改革していたということです。企業が金融市場の要請にもとづいて体制を整えていくこと、それは決して違和感のあるものではなく、時代の潮流に沿った自然の流れだったのです。

    日本の会計基準における目的は何だろう

    連載:IFRS時代をスムーズに乗り切るための基礎知識 【全2回】

    • IFRS時代をスムーズに乗り切るための基礎知識 -第1回-

    ページ先頭へ

    • 導入のご相談、提案のご依頼、各種ご質問はこちらからどうぞ
    • 資料をご希望の方はこちらからどうぞ(無料)
    • デジタルカタログはこちらから
    • 官公庁・自治体職員向け研修案内
    • 総合研究所 経営管理研究所
    • グローバルマネジメント研究所
    • サンノーWebサポート
    • SuperGrace Web成績管理システム
    • マナビバサンノー
    • sannoメール登録