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「創造型ソリューション営業」の強化に向けた教育のあり方 ~ワークショップセミナーを通じて個人力と組織力を向上させる~【第2回】

第2回 「創造型ソリューション営業」の強化に向けた教育事例
  ―「ワークショップセミナー」による営業教育事例―

 第2回では、前回ご紹介した「創造型ソリューション営業」の強化に向けて、「ワークショップセミナー」による教育事例についてお話します。

1.「ワークショップセミナー」による教育

 第1回のコラムでお話しましたが、「創造型ソリューション営業」の強化に関わる教育プログラムの企画立案に際しては、以下の3つの教育課題を前提とすることが重要です。

(1)営業活動に支障をきたさない教育プログラムの企画
(2)教育プログラムと営業活動の連動性(整合性)の重視
(3)教育に対する管理者の関心度の醸成

 上記の課題を前提条件とした場合には、理論(原則論)や手法のインプット中心型の集合研修よりも、一定期間のなかで1日の会合を複数回組み合わせて実施する「ワークショップセミナー(以下、ワークショップ)」が理想的な教育方法となります。
 ワークショップという言葉には、「作業場」「工房」という意味がありますが、ただ単に、理論(原則論)や手法の習得(インプット)に終始するのではなく、学習内容を実際の業務に活用して実践(アウトプット)する教育方法です。
 ワークショップによる教育プログラムの大きな特長は、図1に示すように3つに集約することができます。
 まず1つ目は、「体験」です。これは前述しているように、「学習内容を実際の業務で体験する」ということです。同営業スタイルに必要不可欠な理論(原則論)や手法を学び、それを営業担当者自身の営業活動で活用する場面を設定します。換言すれば、「学習しながら実践する」「実践しながら学習する」教育手法、すなわち、「アクションラーニング」と表現することもできます。
 2つ目の特長は、「自律」です。これは、ワークショップの受講者の「当事者意識」を醸成するということです。受講者となる営業担当者一人ひとりが主役となり、各自が実際に関わっている商品や顧客(市場)をテーマ(素材)にして学習内容を活用することで、「自律的行動」を促進します。このことにより、「内発的動機づけ」に関わる「自己決定感」と「自己効力感」を高めることができます。
 最後に3つ目の特長は、「共有」です。学習内容を活用した実践の成果について、受講者間で共有する場面を設けます。さらに、各営業担当者の営業活動の実践で得られた各自のノウハウをオープンにすることによって、個人のノウハウを営業部門(営業チーム)全体のノウハウとして共有化することを重視します。このことにより、「個人知」を「組織知」に昇華させることができます。

〔図1〕 ワークショップの3つの特長

〔図1〕 ワークショップの3つの特長

2.「ソリューション営業サイクル」に基づくワークショップの実施

 「創造型ソリューション営業」のワークショップでは、図2の「ソリューション営業サイクル」のモデルに基づきながらプログラムを展開します。「ソリューション営業サイクル」の各ステップの営業活動に関わる目標は、以下のとおりです。

ステップ 活動目標
STEP0 対象顧客の設定 ソリューション営業のターゲット顧客の重点化
STEP1 顧客の状況把握 顧客の内部環境と外部環境に関わる情報収集
STEP2 顧客の課題把握 顧客の「顕在化した課題」の明確化と「潜在的な課題」の想定
STEP3 課題解決策の立案 顧客が満足する課題解決策の企画立案
STEP4 提案の実施 顧客が理解・納得・共感するプレゼンテーションの実施
STEP5 評価と対応策の検討 提案の実施結果の評価と今後の活動に関わる対策の検討

〔図2〕 ソリューション営業サイクル

〔図2〕 ソリューション営業サイクル

山本元、『図解 実践ソリューション営業』東洋経済新報社、2001年、27頁

 第1回のコラムで触れていますが、「創造型ソリューション営業」では、顧客の「顕在化した課題」だけでなく、「潜在的な課題」もソリューション提案の対象とします。
 したがって、この営業スタイルに関わるワークショップでは、STEP2の「顧客の課題把握(想定)」と、その前提となるSTEP1「顧客の状況把握」を、特に重要視しながらプログラムを展開することになります。

3.ワークショップの教育事例

 一般的に「創造型ソリューション営業」のワークショップでは、「ソリューション営業サイクル」に基づきながらプログラムを展開します。ソリューション営業に関わっている営業担当者の知識・スキルの保有状態によって、以下に示す2種類のワークショップを使い分けることをお薦めします。

(1)「学習・実践バランス型」ワークショップ事例

 図3は、「学習場面」と「実践場面(営業活動場面)」の2つの場面のバランスを重視したワークショップの全体像です。
 最初は、ソリューション営業に必要不可欠なマーケティングに関わる知識を習得した上で、STEP0~STEP2に関わる理論(原則論)や手法を学習しながら、各会合で習得した知識を、営業担当者が設定したターゲット顧客に関わる活動に活用します。さらに、同サイクルのSTEP2~STEP5を中心にしながら実践的な内容のプログラムを進めます。
 ただし、ターゲット顧客に対する実際の営業活動は、必ずしも「ソリューション営業サイクル」どおりに進むとは限りません。STEP0~STEP5が半年から1年以内に完了する場合もあれば、商品特性、提案内容の特性、あるいは顧客特性によっては、1年半から2年以上でサイクルが完了することもあります。

〔図3〕 「学習・実践バランス型」ワークショップの全体像(例)

〔図3〕 「学習・実践バランス型」ワークショップの全体像(例)

(2)「実践特化型」ワークショップ事例

 以下の事例は、知識を習得する学習場面よりも、営業活動の実践場面を重視した「実践特化型」のワークショップです。このワークショップを実施する場合には、「創造型ソリューション営業」に関わる知識の習得を完了していることが前提条件となります。
 第1会合の実施前に、受講者となる営業担当者は、ターゲット顧客を設定して、営業活動の実践に向けた「行動計画」を作成します。そして、第1会合の場面では、設定したターゲット顧客の概要と設定理由、さらには、事前に作成した「行動計画」をメンバーと講師全員で共有し、計画の修正点や活動を進めていく上での留意点などを指摘し合います。そして、会合終了後、行動計画に基づきながら活動を実践します。
 第2会合は、約3か月後に開催し、実践したソリューション営業の活動状況について共有します。活動のなかで実現できたことと実現できなかったこと、その背景にある成功要因や阻害要因、さらに、今後の活動における課題や対策について、営業担当者同士で共有化することで、個人の経験を組織の経験へ、個人の知恵を組織の知恵へと昇華させていきます。
 つまり、ここでPDCAのサイクルをしっかりと回し、次のPlanを明確にします。そしてさらに3か月後ぐらいに最終会合を開催し、活動状況に関する報告会を行ないます。半年間の取り組み成果を営業拠点長など営業部門責任者の前で発表します。

 ここでポイントとなるのが会合間の活動設計です。研修で学んだことを実践につなげていくための活動を設計し、上司である営業マネジャーを巻き込みます。
 例えば、「創造型ソリューション営業」のターゲット顧客設定については、営業担当者だけで行うのではなく、職場内で営業マネジャーと共有しながら検討するようにします。また、営業担当者が作成する「行動計画」についても、営業マネジャーに関与してもらいます。
 このように、営業マネジャー自身にも、ワークショップに深いかかわりを持たせることで、ワークショップを単なる勉強会ではなく、実際の営業活動とリンクした学習環境に進化させることが可能となります。さらには、営業担当者が学習した内容を実務で実践するという教育効果そのものを高めるだけではなく、彼らをサポートする立場である営業マネジャーのマネジメント力を向上させるという、副次的な効果も見込めます。

〔図4〕 「実践特化型」ワークショップの例

〔図4〕 「実践特化型」ワークショップの例

営業機能の本質は価値創造

 第1回目でもお話しましたが、最も顧客に近い存在である営業担当者の行動の一つひとつがお客様に対する「その企業の価値」を決めています。
 先ほどご紹介したワークショップのような営業変革のための教育的活動の成果は「顧客の変化」で測定すべきだと考えています。つまり、実際に学んだことを活用し、営業活動を展開していった結果として、顧客の反応にどのような変化が見られたのかを重要視します。
 本学でお手伝いをしたA社では、新規顧客や既存顧客に対する「創造型ソリューション営業」を効率的かつ効果的に展開するために、営業担当者の営業スタイルの変革とスキルアップが重要課題となっていました。
 そこで、既にご紹介をしたワークショップを2年間に渡って導入した結果、個人差はあるものの、営業部門全体を俯瞰すると、営業担当者の意識や行動が徐々に変化してきました。
 例えば、A社の受講者(営業担当者)から、このような声が聞かれるようになってきたのです。「現時点では契約までにはこぎつけていませんが、以前は真剣に話を聞いてくれなかった顧客が、私の提案に耳を傾けてくれるようになりました」、「パンフレットだけで説明をするのではなく、顧客向けの提案書を作成して提案をした結果、顧客が親近感を持ってくれるようになりました」など。
 このように、顧客の変化を生み出すことで、自分の行動や態度も変化させていく、消極的な人が積極的になっていくという好循環を生み出していくことが、最終的に組織全体の営業変革活動へとつながってくるものだと思います。

 本コラムでは、全2回にわたって、顧客の課題を先取りして、潜在的な課題を解決していく「創造型ソリューション営業」の強化に関わる教育のあり方についてお話しました。
 厳しい企業間競争が進むなかで、価格競争に巻き込まれることなく、競合企業との差異化を図るためには、顧客との接点機能である営業部門の営業力強化が重要課題となります。
 このような状況だからこそ、営業担当者の個人の力量だけに依存するのではなく、営業部門全体の組織としての営業力を高めつつ、顧客の潜在的な課題解決に関わる能動的な営業活動の徹底に向けて、実践的な営業教育の実施が求められます。

(学校法人産業能率大学 経営管理研究所 主幹研究員 山本 元 氏)

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連載 テーマ 公開(予定)
「創造型ソリューション営業」の強化に向けた教育のあり方
 ~ワークショップセミナーを通じて個人力と組織力を向上させる~
2017年6月
第1回 「創造型ソリューション営業」が求められる背景と教育課題 2017年6月21日
第2回
(最終回)
「創造型ソリューション営業」の強化に向けた教育事例 2017年6月29日
テーマは変更することがあります。予めご了承ください。
著者の所属・肩書きは掲載当時のものです。

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