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「貢献意識」に基づくものの見方や考え方を育てる(2/2)【第8回 企業と社会、そして人~『これからの経営』を考える~】

「貢献意識」に基づくものの見方や考え方を育てる
~学校法人産業能率大学総合研究所兼任講師 佐伯雅哉先生に聞く~

佐伯

私は、「意識が育つ」というのは、そういうことなのだと思っています。そして、「意識」が育てばものの見方、つまり「認識」が育つのです。
「認識」というのは、「ものを見る、考える」ことです。人間は多くの場合、何らかの「欲求」を背景にしてものごとを「認識」します。しかし同時に、「貢献意識」を背景としたものの見方、考え方も持っています。
私は、後者のウエートが高まることを、「認識の成長」と呼んでいます。この傾向は誰もが共通に持っていて、環境次第ではさらにそれが促進される。つまり、「貢献意識」とこれに基づくものの見方は、育てることができるのです。

ここで、私がよく用いるケースをお示ししてみましょう。少し考えてみてください。

    あなたは老舗洋菓子メーカーの一員で、あるデパートの地下に入った店を取りしきる店長だ。味、品ぞろえとも好評なのだが、景気後退を背景とした個人消費の低迷で、あなたの店の売上げは、前年同月比で5パーセント低下している。
    ちなみに、あなたの店のデパートをはじめ、全国のデパートの売上げもまた前年同月比で5パーセント低下している。あなたは何に取り組むべきか。

    本橋

    「自店の売上げの低下率と、自店が入っているデパート、そして全国のデパートの売上げの低下率が同じ」というところに意味がありそうですね。
    私であれば、「同じ低下率」を言い訳にはせず、むしろ「競争に“勝てて”いない」と危機感を持って捉え、まず、デパート内での競合他店、例えば隣の和菓子屋とか、どの競争にどう勝つかを考え実行するべき・・・・と思います。
    さらにできれば、そのデパート全体で他のデパートに勝つ戦略を考え実行できれば、その方がより大きな売り上げ向上に結び付き、店内他店とのコンフリクトも避けることができる。
    ただし、デパート内の競争もデパート間の競争も、「低迷した個人消費」環境下での限られた顧客の奪い合いですから、その顧客を増やす施策、例えば本社に働きかけて魅力的なCMを打ってもらい「消費の掘り起こし」自体を試みる、といった方策を検討することも望まれるかと思います。

      佐伯

      具体的な方策もさることながら、その前に、「自店の売上げの低下率がデパートと同じ」という事実をどう見るか、これが大変重要です。
      それが、「平均と同じで悔しい」というものなのか、「自分たちの努力不足ではないから上司に責められずにすむ」というものなのか、あるいは「これでは顧客にいくらおいしいと思ってもらっても、“ついで買い”が繰り返されているだけだ」というものなのか。それがその人その人のものの見方、つまり「認識」という作用です。

        本橋

        先の私の考えであれば、「競争に“勝てて”いない」という見方ですね。

          佐伯

          私が挙げた例で言えば、先の三つ目の認識つまり「これでは顧客にいくらおいしいと思ってもらっても、“ついで買い”が繰り返されているだけだ」という見方は大切です。
          これが周囲と共有されれば、「おいしいと思ってもらったのならば、もっと繰り返し当社の商品を味わってもらおう」とする努力、つまり「リピーターづくり」の努力が、当店の、あるいは当社の各店共通の課題となる可能性が生まれることになります。
          もちろんこれは、ある「事実」に対する一つの見方から「仮説」を立てる思考プロセスの一例を示すものであって、実際には仮説の妥当性を高めるためのさらに深い考察が必要です。

          ただ、このような質の高い仮説、少なくとも議論がテーブルに乗るような仮説は、まちがいなく「貢献意識」に基づく「認識」から生まれます。それがあるから、お客さまに対して果たせていない役割が見えてくる。

            もちろん、デパートと同じ低下率なら上司から怒られずにすむという意識もまた、この事実に気づく背景の一つではあるでしょう。
            マズロー流に言えば「承認欲求」あるいは「所属欲求」に基づく認識で、それも大いに結構です。
            ただし、それだけでは、果敢な課題形成や提言行動にはつながりません。

              学校法人産業能率大学総合研究所 経営管理研究所 主席研究員 佐伯雅哉先生/学校法人産業能率大学 総合研究所 本橋 潤子

              この説明のように、私は人を、「欲求」の側面からではなく、「認識」つまり「ものの見方、考え方」の側面から捉えることを提唱しています。つまり、ものごとには、「見方」の数だけ「見え方」がある。その「見方」をいかに育てるか。これが組織の仕組みや教育を考えるときのポイントであるということです。

              そして、「認識」つまり「ものの見方、考え方」の背景にあるのが「欲求」や「貢献意識」であるならば、まずはその「ありのまま」を認め、その上で後者、つまり「貢献意識」に基づくものの見方のウエートをいかに高めるかを考える、これが大切なポイントになると思っています。

                佐伯

                私は、人間の内面において、この「貢献意識」は、思いの外育っているのではないかと考えています。
                そして、自覚的にそれを用いるように努めれば、さらに強く習慣化することができるはずなのです。これは、マネジメント教育やリーダーシップ教育を支える基本コンセプトの一つと考えることもできるでしょう。
                つまり、「貢献意識に基づく認識」を促進するという教育コンセプトです。私も、企業内研修や授業などの教育の場で、そのようなコンセプトと手法からなるプログラムを展開しています。

                  本橋

                  教育の場での先生のご活躍やお感じになっていることについて、お聞かせいただけますか。

                    佐伯

                    現在、大学院ではミドル・マネジメントをテーマとした授業を、そして、4年制通信教育課程では、「自己を哲学してみよう」という趣旨の科目を担当しています。
                    一方では、多くの企業でマネジメントやリーダーシップをテーマとした研修プログラムを実施しています。
                    その中で感じることなのですが、学生や受講者の多くは、授業や研修プログラムに対して高い共感を示してくれます。そして、強くコミットしてくれます。それは、授業や研修プログラムが、学生や受講者に共感を与えているからではないかと思います。

                    私は最近、「本音」ということばを好んで用います。「建前」の対立概念としての意味も含んではいますが、より広く、論理や理性、つまりことばで整理される以前の純粋な「思い」というような意味合いです。それは「暗黙知」として生じます。そして、それを成り立たせているものに、「欲求」と「貢献意識」があります。
                    つまり、「本音」の中のある部分は、組織と社会に役立つ知恵となる可能性を秘めているのです。このように、「本音を認め、育てる」、そういうコンセプトが、聞き手の共感を誘っているのではないかと思われます。

                    ただし、「貢献意識」を背景としたものの見方を自分のものにして、マネジメントやリーダーシップの腕を磨こうなどと言っても、それは日々の「試行錯誤」つまり「体験」の積み重ねを経るしか方法がありません。
                    しかし、研修や授業では、「体験」からの学び方を「体験」することができます。つまり、「体験から学ぶ」という自覚を伴う体験ができる。そしてこのとき、例えば「認識」に関する理論やモデルが体験からの学びを助けます。これが日常の体験との違いです。

                    「体験する体験」、これは、マネジメントやリーダーシップなどをテーマとした研修プログラムに不可欠なものではないでしょうか。

                      本橋

                      教育、すなわち人材育成においてとても貴重なコンセプトだと思いますが、企業そのものや、組織の仕組みの部分ではどうでしょうか。

                        佐伯

                        例えば、このようなアイデアはどうでしょうか。「目標による管理」の運用です。

                          売上げの数字など、組織から当然に求められる最終結果のみを目標の材料にするような運用は、「貢献意識」の醸成にとって必ずしも得策ではないでしょう。
                          そうではなく、例えば、先ほどのケースで言えば、いかにして顧客に当社の味を繰り返し楽しんでもらおうかという発想から、リピート率やリピーター数の増加を目標の材料にする、つまり顧客満足を高めるための地道なプロセスを目標として自主設定することを奨励する運用方法です。

                            学校法人産業能率大学総合研究所 経営管理研究所 主席研究員 佐伯雅哉先生

                            私はこれを「プロセス目標」と呼んでいます。しかも、内容的に質が高いものに対しては加点のみの評価方法をとる。このようにして、「貢献意識」に基づく「認識」から生まれる発想や創意工夫を奨励するのです。

                              本橋

                              そうして積極的に生み出された、従業員一人ひとりの「人」起点の発想や創意工夫が、「企業」を通じて実現され、「社会」をよくすることにつながれば、CSR、すなわち社会への責任を果たす企業もまた、自然体で、現実のものとなるのかもしれません。

                                (了)

                                佐伯 雅哉(さえき・まさや)
                                学校法人産業能率大学総合研究所兼任講師。元経営管理研究所主席研究員、総合研究所教授。都市銀行勤務を経て、学校法人産業能率大学総合研究所に勤務。学生ならびに実務家に向けての経営管理教育に携わる。
                                著書に、『マネジメントが目指すもの-行動の変革から認識の成長へ』『実践 企業倫理・コンプライアンス』『“自己”の育て方』(いずれも産業能率大学出版部)など。

                                (学校法人産業能率大学 総合研究所 本橋 潤子)

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