若手社員からのスケジュール管理教育のすすめ

プロフィール

齋藤 義雄(Yoshio Saito)

学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所 主任研究員

※筆者は、主に業務改善、問題解決、管理技術の研修・コンサルティングを実施。
※所属・肩書きは掲載当時のものです。

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1.働き方改革の問題

2019年4月より働き方改革関連法が施行され、労働時間に関する規制が強化されました。具体的には、残業は原則月45時間・年360時間の制限、年5日の年次有給休暇取得の義務づけ、勤務間インターバル制度導入の努力義務などが、企業へ求められるようになりました。各企業では、ノー残業デーや計画年休、フレックスタイム制などの制度を整えて、対応しています。

しかし、働き方改革の問題として、上記のように労働時間に関する施策が中心であり、生産性の向上は現場や働く個人に委ねられてしまっていることが挙げられます。仕事量は減らない中、働く時間が短くなることで、現場にしわ寄せが来ているのが実態です。働き方改革時代の生産性向上には、IT投資による効率化や働く個人の能力開発が欠かせません。

2.若手社員が陥りがちなスケジュール管理の失敗

働く個人の能力開発として、タイムマネジメントや業務改善に関する従業員教育を行う企業や団体が増えています。私もそれらの教育に多く携わっています。その中で、大手メーカーにおいて入社5年目位までの若手社員を対象に、年に4回「若手のためのスケジュール管理力向上研修」というタイトルで研修を行っている事例を紹介します。

事前課題として、スケジュール管理の失敗エピソード(発生事象とその原因)をA4一枚で受講者にまとめてもらっています。2016年から行っている研修で、すでに300名以上の失敗エピソードが集まっています。

代表的な失敗事象としては、「図面作成が間に合わず、先輩課員に手伝わせてしまった」「見積提出期日を過ぎてしまった」「遅れを取り戻すために、残業や休日出勤をした」などがありました。開発、設計、技術、営業、管理など様々な職種の方が参加されているため、失敗の事象は様々ですが、その原因については共通項が見られました。

図1 若手社員が陥りがちなスケジュール管理の失敗
※失敗の原因は、1人で複数の項目を挙げることがありますので、割合の合計は100%を超えます。

最も多く挙げられていた原因(第1位)は、「所要時間の見積もりが外れたため」でした(図1)。計算や資料作成などの業務で、予定した時間よりも長くなってしまい、納期遅延や残業につながったというケースです。その原因にもなり得るものが、第2位の「業務経験や知識が足りなかったため」です。若手社員が初めて担当するような業務もあり、予定通りに進まない問題を引き起こします。若手社員は、業務そのものについてよく学び、スキルアップを図ることが重要であり、周囲もOJTなどで支援することが必要です。若手社員を孤独な状態にしてしまうと、原因の第3位「上司・指導員の報連相や関係者へのコミュニケーションが足りなかったため」に結びついてしまいます。

事例企業でも「ヒューマンスキル系の強化が課題」として、教育体系の見直しを行っていました。さらに、若手社員とはいえ、年次が上がってくると複数の業務をパラレルで進める場面が出てきます。第9位ではありますが、「並行した業務の計画が立てられなかったため」という原因もありました。

研修では、時間見積もりの方法、優先順位付けの考え方、スケジュールの立て方等について取り上げています。若手社員の皆さんが同じ失敗を繰り返さないように、また生産性の高い仕事の進め方になるように、指導を行っています。

3.スケジュール管理力向上のアプローチ

図2 研修の構造図

「若手のためのスケジュール管理力向上研修(図2)」では、2日間で「業務遂行力」(1日目)と「業務計画力」(2日目)を学びます。若手社員として、まずは日々の業務を改善してきちんと回すためのD・C・Aを押さえ、その上で、新たな業務の計画を立てる方法(P)を学びます。特に、Aの「業務を改善する」セッションでは、職場の第一線で気づいた業務上の問題に対する改善案をまとめますが、講師として「ぜひ職場へ提案して、仕事の進め方を楽にしてください」と伝えています。

2日間研修の最後には、「明日から1週間の計画を立てる」演習を行います。個人で白紙のガントチャートに5~6日間の業務計画を書き、グループ内で紹介します。演習の様子を見ていますと、複数の業務予定を上手に組み合わせて、主体的に計画を立てられている人が多く見られます。

働き方改革から話を進めてきましたが、本質的な生産性向上を図るため、若手社員のスケジュール管理力を高めることをおすすめします。

研修カリキュラムなど詳細は、「働き方改革を足元から推進する ~若手社員からのスケジュール管理教育のすすめ」をご参照ください。