産能大生、日本人の心を届ける活動

前回コラムでは、風景写真専門誌上のコンテスト受賞作品や関連情報をデータベース化し、約8,000点の風景写真の活用について、訪日観光客への情報提供を考えついたことまでご紹介しました。今回はその実施内容をご紹介します。

まず、私のゼミ(経営学部水島ゼミ)でデータベース活用のテーマを出したところ、3年生の数名がその活動へ参加表明しました(写真1)。私が提示した活動内容は、「このデータベースを利用し、訪日観光客に対する観光情報の提供方法を考える」としました。そして構築していた全データを画像とともに渡し、どう活用すべきか、どんな方法で訪日客に伝えるのかについて具体的に考えさせました。

データベース活用を検討したゼミ生たちの写真
写真1:データベース活用を検討したゼミ生たち

まずは、データの分析からです。南北に長い日本をくまなく紹介すると地域や情報の密度に差が出るとも限りません。そこで学生たちは対象地域を長野県に限定しました。これは日頃から風景に携わっている者として的を射た選択です。実は長野県はもっとも被写体の豊富な地域として風景写真家に愛されている地域です。実際、統計をとると長野県で撮影されたケースが最も多い。
次に、どんな訪日客を対象とするか。マーケティングを学んだ学生としては、ここは絞り込みをしたほうが進めやすいと判断したようです。いわゆるターゲティングです。多くの統計で国・地域別に最多と出ており、また日本中あらゆるところでアクティブな動きをみせている中国からの観光客を対象としました。メンバーのなかに中国からの留学生がいたことも理由となりました。

そして私からは、もうひとつテーマを出しています。この連載の一回目で紹介したように、作品は確かに日本の風景であるが、それは日本人独特の感性から生じた意味が込められているので、それを訪日観光客に伝えることです。
そこで学生たちは、データベースから長野県で撮影された作品を60点ほど選択し、そこに学生自身が解釈した意味を文章としてあらわし、中国人留学生がそれを中国語に翻訳します。最後に、それらの情報を訪日客に伝えることで、日本人がこの風景にどんな感情を抱いていたかが伝わるのではないか、と考えました。

例として私の受賞作(写真2)でご説明しましょう。

写真2:「朝を迎えて」
2016年5月 午前5時 横浜市都筑区 フィルムカメラ

学生はこんな解釈を与えました。

「朝焼けの陽を浴びて薄ら輝く静かな水辺。そこに菖蒲(しょうぶ)の紫色の花が静かに佇んでいる。艶やかに色味を魅せる深緑色の葉。一日が始まろうとしている。」

これを中国語に訳すと
「在沐浴着朝霞微微发光静谧的水边、紫色的鸢尾静静地伫立着。鲜艳地散发着迷人的绿叶。一天开始了。」

はたして、この作品と文章を読んだ中国からの観光客に想いは伝わるでしょうか。

これらのコンテンツはWeibo(ウェイボー)という中国最大といわれるSNSに掲載し広めていきます。今年の夏休み、学生たちはセッセとWeiboにアップロードを続けました。やがて反応がくることでしょう。どんな反応があったのか、そしてどんな効果をもたらしたのか、機会をみてご紹介させていただきます。
それまで、この連載コラムはいったんお休みいたします。

今回は写真が少なかったのでもう1枚。日本の美しさを海外にもっと広めたいですね。

写真3:「路傍の輝き」
2018年3月 午前10時 群馬県神流町 APS-Cデジタルカメラ

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