【第2回】基調講演

前回のコラムでは、ATD2019の概要についてご紹介しました。
今回は、3名の著名人による基調講演の概要や、そこから得られた気づきについてご紹介したいと思います。

※カンファレンス2日目から最終日までに3つの基調講演があり、様々な領域の著名人が登壇します(昨年はアメリカ前大統領のバラク・オバマ氏が登壇しました)。

3名の著名人の詳細はこちら

1.オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)

1.オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)

カンファレンス2日目にはOpening Keynoteとして、世界的メディアリーダーであり、慈善家、プロデューサー、女優としても活躍するオプラ氏が登場しました。
「タイム誌」が、世界で最も影響力のある人物の一人として彼女を取り上げているほか、2009年にアメリカ前大統領のバラク・オバマ氏が出馬した際に支持を表明し、オバマ旋風のきっかけになったとも言われている人です。
当日は、数千人は楽に入る大ホールが人で埋めつくされ、講演が始まる前から会場全体が熱気に包まれていました。
アメリカでの彼女の人気ぶりを、肌で感じさせられた瞬間でした。

オプラ・ウィンフリー(Oprah Winfrey)

-本当の自分と向き合う-

波乱万丈の半生をユーモアたっぷりに語る中で、「Gut feeling(理屈では説明のつかない体の奥から生まれる感覚)」という言葉が何度か出てきました。
過去の失敗談を引き合いに出しながら、迷ったときは心の声に従うこと、そして今できることに集中することの大切さについて語られていました。

-世界をよくするために、自ら行動を起こす-

講演では、「Intention(意図)」という言葉も聞かれました。
単に自分のエゴを満たすような独りよがりな行動ではなく、自分の人生を使って他者や社会にどう貢献していきたいかを考え、実行に移すことの大切さを伝えていました。

講演全体を通じて、「自分を大切にできない人は、仕事も他者も大切にできない」「答えは自分の心の中にある」「見て見ぬふりをせず、自ら行動する」といった言葉が印象に残りました。
そして、キーメッセージでもある「自分の人生を使って、どのように世界に貢献できるか?」という問いに、深く考えさせられた講演でした。

2.セス・ゴーディン(Seth Godin)

カンファレンス3日目には、起業家でベストセラー作家でもあるセス・ゴーディン氏が登場しました。
パーミッション・マーケティングの提唱者とも言われ、日本でも『「紫の牛」を売れ!(原題:Purple Cow)』などの著書があります。
セス氏のテンポ良くユーモアたっぷりのスピーチに、聴衆も思わず時間を忘れて聞き入っていました。

セス・ゴーディン(Seth Godin)

-人材開発のあり方を再考する-

大量生産、大量販売の時代が過ぎ去った今、製品・サービスを通じてどれだけの価値を顧客に提供できるかが求められており、人材開発の重要性も増してきている。
しかし、「ハードスキルはすぐに習得できても、ソフトスキルはすぐには習得できない」「人材開発には忍耐力が求められる」といった話から、短期間でさまざまなスキルを習得させようとする人材開発の風潮に、疑問が投げかけられました。

講演全体を通して、「right path」という言葉と「What do we make ?」という言葉が印象に残りました。
人材開発とは、何かの属性を身につけるということではなく、責任感を持って自らの意思で思った道を進んで行けるような人材を育成することだ、というメッセージは重要と感じました。
また、「What do we make?」とあるように、「私」ではなく「私たち」という視点で物事を捉えていくことが大切なのだというメッセージは、オプラ氏にも通じるものがあると感じました。

3.エリック・ウィテカー(Eric Whitacre)

カンファレンス最終日には、グラミー賞を獲得したこともある作曲家、指揮者であり、画期的なバーチャル合唱団Deep Fieldのクリエイターでもあるエリック・ウィテカー氏が登場しました。
エリック氏は、過去にTEDトークにも出演したことがあるので、ご存知の方もいらっしゃるかも知れません。

エリック・ウィテカー(Eric Whitacre)

-不完全さが最高のハーモニーを生み出す-

バーチャル合唱団を立ち上げるに至った経緯について語られる中で、「unify」という言葉が聞かれました。
どんな些細な音符にも記号にも、全てに意味がある。
音痴でも歌が下手でも、その小さな一人ひとりの声がかけがえのないピースとなり、想像を超える感動を生み出す。
すべてを「unify-1つにする-」ことで、最高のパフォーマンスが生み出されるというメッセージが印象的でした。

そして講演の最後には、Deep Field 4.0として、ワシントンの合唱団とバーチャル合唱団がコラボし、音楽と映像が融合した、カンファレンスの閉幕にふさわしい幻想的で感動的な演奏が披露されました。
音楽を通して、テクノロジーを駆使して多様なメンバーの力を束ね、高い成果を生み出していくチームのあり方(そしてその可能性)について体感した講演でした。

基調講演全体を通じて強く感じたことは、「すべての人が活かされる」「答えは一人ひとりの心の中にある(心の声に従う)」「自分のためだけでなく、世界をより良くしていくために行動する」といったメッセージでした。
忙しい日々の中で、つい見失いがちになってしまいますが、これからも折に触れ、心の声に耳を澄まし、何をなすべきかを自らに問い続けていきたいと思います。

ここまで、ATD2019の基調講演についてご紹介してきました。
次回は、同時セッションで得られた気づき、学びについてご紹介したいと思います。

ATD2019に見る人材開発のトレンド

公開日:2019年07月30日(火)

【第1回】ATDの概要

公開日:2019年07月30日(火)

【第3回】同時セッション

公開日:2019年08月20日(火)