イベントリポート『組織と個人の"モチマエ"を100%発揮するための「働き方改革」の進め方』

 2018年11月30日(金)、代官山キャンパスにて、SANNOフォーラム「組織と個人の“モチマエ”を100%発揮するための「働き方改革」の進め方』」を開催しました(*注)。月末のご多忙な中、企業の働き方改革・ダイバーシティマネジメントの推進者、人材育成部門の担当者など、100名近くにご参加いただき、大変な盛況となりました。

【開催概要】

日時:2018年11月30日(金)13:30〜16:00
会場:産業能率大学 代官山キャンパス(産能マネジメントスクール)
*注: 当イベントは、2018年度SANNOフォーラムの一環として企画されたもので(全4回)、代官山会場以外にも、2018年9月6日(木) 名古屋、10月16日(火)広島、10月17日(水)大阪と各地で開催いたしました。代官山開催は最終回となります。

第1部 “働き方”への問い ~働き方は誰のものか?

学校法人産業能率大学 経営管理研究所 主幹研究員 安藤 紫

 第1部では、本学主幹研究員の安藤が登壇しました。安藤からは参加者の皆さまに対し、「働き方改革」を考える前に、まずは「働き方」そのものについて、いくつかの視点から問いかけを行いました。

● 第1部の要点

 「働き方改革」はあくまで手段です。その目的をどこに置くかによって、改革の中身は変わります。また、「働き方改革」の目的も、それが誰(国、企業、従業員)にとっての「働き方」なのかによって変わります。我々は「働き方改革」の中身を検討する前に、「働き方」とは、いったい誰のためのものなのか、落ち着いて考える必要があります。
 さらに、AIの活用やRPA(Robotic Process Automation)による省力化といった技術革新、フリーエージェントとして働く人の増加といった環境変化によっても、「働き方」は変わります。私たちの子どもの頃、YouTuberという職業は存在していなかったわけですが、2017年の「中高生の”将来なりたい職業”」では上位にランキングされています。新しい職業が生まれるということは新しい「働き方」が生まれるということでもあります。一方で今、私たちが就いている職種がなくれば、それに伴う「働き方」もなくなります。
 仕事は変わっていきます。新しい仕事も出てきます。今まであった仕事もどうなっていくかは分かりません。こういう環境の中で、我々はどうしていくべきなのか。本日のイベントはこの後の第2部、第3部において、皆様と一緒に考えてまいりたいと思います。

第2部 データで読み解く“働き方改革”

学校法人産業能率大学 経営管理研究所 組織測定研究センター 田島 尚子

 第2部では、本学組織測定研究センターの田島が登壇し、「働き方改革」を以下の3段階でとらえたうえで、それぞれの段階でどのような取り組みが求められるのか、本学が2017年と2018年に実施した2つの調査結果に基づき、ご説明いたしました。

● 働き方改革の3段階

働き方改革1.0 定時退社の促進、それからノー残業デーなどを設置することで、労働時間が是正されている段階
働き方改革1.5 業務改善などの仕事の見直しを行って、効率化が高まっている段階
働き方改革2.0 既存のビジネスの枠を越えて新たな価値を創出する、すなわちイノベーションを創出している段階

● 今回ご紹介した本学実施調査

『日本企業における社員の働き方に関する実態調査』(2017年)
『イノベーション創出に向けた人材マネジメント調査』(2018年)

● 第2部の要点

 労働生産性を、産出量/投入量という式で捉えた場合、働き方改革1.0、1.5の段階での目的は、投入量の削減、すなわち分母を小さくすることです。それから一歩先に進めて、産出量(分子)の増大化、イノベーションを創出することが働き方改革2.0での目的となります。

 働き方改革1.0、1.5では、働きがいと働きやすさを同時に追求しなければなりません、そこからさらに歩みを進めるのであれば、社員の多様性を高めて、活用深化活動と探索活動をバランスよく行う必要があります。そのためには、自社の人材マネジメントの見直し、人的資源ポリシーの検討が必要です。メンバーシップ型(社員は会社という共同体の一員であるという前提に立った人材マネジメント上の方針や考え方)でいくのか、それともジョブ型(まず仕事があり、その状況によって雇用が変わるという前提に立った人材マネジメント上の方針や考え方)の要素をどんどん取り入れていくのか。働き方改革を考えるうえでは、こうしたことをぜひ真剣に検討していただければと思います。

● 参加者の声

「実態をデータによって読み解くことで、課題を見極める参考になりました」
「人的資源ポリシーをどう変えるべきかという考え方が参考になった」


なお、『⽇本企業の社員の働き⽅に関する実態調査』については、こちらから要約をご覧いただけます。

第3部“働き方改革”の本質を問い直す

学校法人産業能率大学 経営管理研究所 主幹研究員 安藤 紫

第3部では、再び安藤が登壇し、当イベントのテーマである「働き方改革」の本質について、「組織と個人のモチマエの一致」という観点でお話いたしました。

● 第3部の要点

 組織の側から、従業員に「働き方」を変えてもらうのであれば、組織として個人に動機づけをしてモチベーションを上げてもらわなければなりません。そのためには、「この会社はこの方向を向いている」という指針、ガイドが必要です。その指針を踏まえて、社員の方たちは自主的に自分たちの働き方をどうするかを考えられるのです。つまり「働き方」を変えるのであれば、経営ビジョンや戦略といったガイドを示さなければなりません。
 また、個人の視点からは、「働き方改革」は、自分の価値を上げるための活動だとも思っていただきたいと思います。自分の価値が上がっていけば、おのずと会社の価値も上がっていきます。
 組織の目指す方向に対して、個々人がやるべきことをきちんと見つけている。組織も個人もモチマエをしっかりと使い切っている、そこに進めるように相互にチャレンジをしていっていただければ良いと思います。

● 参加者の声

「『自分価値の向上』というキーワードが印象的だった。会社員であると、会社に守られている感覚が強いが、個人の価値を向上しなければ、雇用減少に対応できないと感じた。」
「改めて自社の戦略・ビジョンが果たすべき働き方改革への役割が整理できた」
「自社や自身の強み、ポテンシャルを十分発揮するための働き方改革という目線や、先のことを考えるための働き方改革という目線に気づかされた。」

最後に

 本フォーラムの最後に、本学が考える「働き方改革」のモデル図をご紹介しました。モデル図のとおり、「働き方改革」には「組織のモチマエの発揮」と「個人のモチマエの発揮」の両輪が必要だと考えます。「働き方改革」への入り口は各社各様ですが、本学は、多彩なソリューションプログラム群で、お客様の「働き方改革」の推進のパートナーとして一緒に歩んでまいります。