【事例紹介】ユニアデックス株式会社様 未来サービス研究所を⽣み出した経営幹部育成コースについて

はじめに

日本ユニシスグループの中核企業であるユニアデックス株式会社は、国内屈指のICTインフラトータルサービス企業です。

7年前に社内の経営幹部育成コースである「上級マネジメント研修」を受講され、そこで学んだ知見をもとに同社内に「未来サービス研究所」を立ち上げられた同研究所・小椋則樹所長。

ユニアデックス株式会社 未来サービス研究所 小椋則樹所長
単に学ぶだけでなく、学びを実際のビジネスに活かすことは、実学を旨とする本学にとって理想の姿ですが、実際には大きな困難を伴うことでもあると思います。その壁をどう乗り越え、どのような展開をされているのか。小椋則樹所長に伺いました。

Q ユニアデックスというIT企業で「未来サービス研究所」を立ち上げられた経緯や目的などをお聞かせいただけますか。

ユニアデックスは⽇本ユニシスグループの中核を担う企業で、事業活動としては、IT機器の運用や保守サービスといったITビジネスにおけるライフサイクルの「後工程」が中心になります。しかし、今後のビジネス拡大においてそのライフサイクルの「前工程」にも参入することを目指し、5年前に立ち上げたのが未来サービス研究所です。
その頃からユニアデックスは『進化と創造』をキーワードにビジネスを展開していますが、『創造』の部分、特に新しいアイデアを創出し、新たなサービスをいかに創造し、構築していくかという目的で設立しました。当時、未来予測をもとに新しいビジネスを考えるというのは、製造業や流通業では多かったようですが、IT企業では我々が最初だったのではないでしょうか。

この未来サービス研究所をつくるきっかけとなったのが、「上級マネジメント研修」の受講です。それまでもいろいろな研修は受けていたのですが、新しい事業を立ち上げる、アウトプットを伴うトレーニングなど、より実践的な学習ができたのが、7年ほど前に受講したこの研修だったのです。自薦したメンバーから選抜され最終的に残った10人の社員が受講しました。

もともと私は⼤学では経営工学を学び、入社したあとは国内留学の修士課程で情報工学を学んだ経験がありました。そうした経緯もあってか、ITサービスを中心に提供する社内にあって研究開発に関わる部署にいました。どちらかというと「前工程」に向かって仕事をしていたので、それが未来サービス研究所の立ち上げにつながったといえるでしょう。
また、日本ユニシスグループ全体が、社会インフラを担う多くのお客さまに対してITサービスを提供している性質上、ビジネスの確実性を重視する企業風土を持ちます。その多くのエンジニアは、目の前の課題に懸命に取り組んで仕事をしているため、会社の未来について考えるような余裕は少ないのが現状です。しかし、未来のことを描き議論すると、エンジニアもワクワクするんです。ですから、ワクワクする未来像を描き、それを我々のITサービスで実現させる活動に結びつけるため、未来サービス研究所と名づけた新しい部署を立ち上げました。
これはやはり産業能率大学の講師による「上級マネジメント研修」の受講を通して、イノベーションの必要性、事業を立ち上げることの枠組みや確立された方法論をしっかりと身につけることができたおかげだと思います。

Q 「上級マネジメント研修」を受講されて、どのような感想をお持ちですか。またどのような成果があったでしょうか。

第1期生として、自ら手を上げ受講したのですが、これがけっこう苦しい研修だったのです(笑)。残った10人のメンバーは、現場において管理職としてのポジションにいる人たちが多かったので、日々の仕事をこなしつつ、実践的な講義を受け、さらに難しい課題も出ますので、受講期間の半年間くらいは、みんな作業時間の確保が大変で、プライベートな時間をかなり使っていましたね。そのくらい厳しい環境で活動していると、やはりみんなの間に仲間意識が強くなってきます。それが7年経った今でもあって、同じ会社の違う部署にそれぞれがいるのですが、第1期生同士すごく連携が取れスムーズな意思疎通ができます。これは同じ研修を受けていることが、共通のプロトコルとなっていることが大きいと思っています。

講師も実にユニークな方が多く、受講生であるわれわれ一人ひとりの人間性や個性をしっかり見ておられるようでした。日々、非常にシビアなことを言われるのですが、それがやはり的確で、なるほどと納得させられました。単に指摘するだけでなく、きちんとフォローもしてくださいます。「指摘されたことをカバーするにはこういった本を読むといい」などと教えてくださるのですが、全員に同じ課題図書を薦めるのではなく、一人ひとりに適した課題や情報を与えるのです。受講者をマスではなく、それぞれの個性として見て、指導してもらったことが非常にありがたかったですね。

当時も、講義を受けながら⼀つひとつのことが明確になってきたという実感はあったのですが、実際に未来サービス研究所を立ち上げ活動していると、あの頃言われていたのは、こういうことだったのかと、今になってさらに理解が深まるということもあります。これが実践的ということの意味なのだと思います。実践することで、学んだことを実体験として振り返ることができる。記憶の引き出しにしまわれていたことが、後で引き出せる。こういうことからも本当に実践を考えた育成コースだったのだと気づかされます。ここが教育するだけのコースと実践コースの違いだと思います。

ユニアデックスとしては、現在、第4期生が受講しているのですが、やはり共通プロトコルで会話ができる仲間が毎年増えてくるというのはうれしいですね。と同時に期待も大きいので、つい厳しく見てしまうということもありますが、それが継続しているということの意味なのだと思います。会社の経営陣も大切なリソースを出しているので、我々ももっとアウトプットをしっかり出さなくてはならないと思っています。第1期生としてはやはり後輩たちに厳しく言うのも使命なのかなという気がします。

Q 受講の成果を社内外に向けて目に見える形で出すというのは大変難しいことと思いますが、どのようにされてきたのでしょうか。

ある意味では先行投資として「上級マネジメント研修」を受講させてもらい、そのアウトプットとして未来サービス研究所を発足することができたのですが、やはり新しいことを始めるというのは、新しい概念を導入し、一つひとつ新しい手順を作る必要があります。その反面、既存のルールも踏みながら進めるため、さまざまな場面で多くの人に丁寧な説明もしなくてはなりません。社内コミュニケーションを円滑に行うことが重要になりますが、こうした点は、ちょうど研修で教えていただいたマーケティングやプロモーション活動と同じだったのです。マーケティングをどうするか、PRをどうするかなどといった視点を、社内向けに切り替えることで、よい効果が出せたように思います。

そうしたプロセスを経て立ちち上げた未来サービス研究所では、今、さまざまな取り組みを進めているのですが、新しいビジネスということで機密を要することが多く、残念ながら多くの活動をオープンにはできません。現在公開している成功事例としては、産業能率大学とも絡んでいるのですが、自由が丘商店街でのマーケティング活動のデータ分析・見える化プロジェクトがあります。今まで人の勘や感覚で把握していたことを、はっきりとデータ化・可視化したという成果ですね。このようなデータ分析の成功事例は、当時日本ユニシスグループでは初めて発表できたと思っています。

やはり最初に未来サービス研究所を作ったときには、社内外のみなさんに心配されました。何をやり始めるかわからない、どんな成果が出せるのだろうかなどと。発足時のメンバーもそうした心配や懸念を持っていましたので、それぞれの思いがぶつかることも多くありました。ただみんなが同じ方向を向いて同じ想いを持ち続けられたことで、一つひとつ乗り越えて今日まで来たという感じがします。現在、未来サービス研究所として成果を出せているのは、そういうコミュニケーションや経営層の理解のおかげなのです。次世代に向けてユニアデックスが新しく成長していくためにも、未来サービス研究所がひとつのカンフル剤となればいいと考えています。