イベントリポート 第3部:働き⽅改⾰時代の職場変⾰マネジメントのあり⽅

『働き⽅改⾰』へのアプローチ⽅法は企業によってさまざまであるが、実現への推進⼒としてミドル・マネジャーが果たす役割は⼤きい。

今後到来する、働き⽅改⾰が実現したあとの時代に⽣き残る企業であるために、いまミドル・マネジャーは何を⾒て、何を考え、何をすべきか。



本学総合研究所 経営管理研究所 主席研究員 ⾼坂⼀郎より、ミドルアップダウン型で⽣産性を⾼めるためのマネジメントについてお話を差しあげました。
学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所 経営管 理研究所 マネジメント研究センター 主席 研究員 ⾼坂 ⼀郎
昨年くらいから、業種を問わず、いろいろな企業で推進される『働き⽅改⾰』の取組を⾒ていると失敗と成功の傾向、ポイントが⾒えてきました。

まず、失敗例から考えていきましょう。
仕事をどう効率化していくかという課題に対する仕事のマネジメントと、⼈材のモチベーションをどう向上させていくか、育成していくかという⼈のマネジメントで考えます。
失敗例でよくあるのは仕事のマネジメントにおいて企画裁量型、専門裁量型の労働が主である企業で残業規制をした場合です。
商社のように時差があったり、マスコミや教員など専門性が⾼いようなビジネスモデルに対して画⼀的な残業規制を強いても、結果仕事が回らなくなるだけですから、こういう業種において残業規制に頼って効果を出す事は難しいでしょう。
類似する現象は、パソコンシャットアウト、ノー残業デー、委託や派遣を増やすといった施策です。
そのこと⾃体が目的完遂になり形骸化するだけで、こっそり仕事をせざるを得ない状況を作りだしてしまいます。
また、業務改善の取り組みをしても、その目的がきちんと伝わっていない、効率化を図っても目的がわかっていない場合は、その施策は形骸化してしまいます。企業として中⻑期のビジョンや効率化の目的をしっかりと伝え、社員がそれを理解していない限り、働き⽅改⾰は定着しません。
⼈のマネジメントを考えてみましょう。
例えば、残業代が⽣活費の⼀部になっているという場合もあるでしょう。そういう事情を無視して⼀⽅的な残業規制を進めることは、反発を招くことにつながります。こういう場合になすべきは、残業規制を⼀⽅的に押し付けるのではなく、その⼈と⾯談などを重ね、多様性を把握して少しずつ意識改⾰、⽣活改⾰を促していくことです。もう⼀つは、端的に⾔うとチームワークです。例えば、外勤と内勤、交代制勤務の前と後ろ、専門的な分野なら機械と電気など、それぞれの仕事が全く違う環境にいて互いに何をしているかわからない状態で、効率化だ、改⾰だと推進しても属⼈化を加速させるだけで終わってしまい、メンバー間でフォローする関係が作れないことになります。

それでは逆に成功例について考えてみましょう。私は、微妙な差異だと思っています。失敗と成功との違いは、それが外発的な働きかけで終わっているか、内発的な働きかけになっているかということです。その働きかけの部分で、ミドルマネジャーの果たす役割が非常に⼤きくなっています。仕事のマネジメントで⾔うと、いまみんなが困っていることから改善を進めていく。失敗例では何がなんでも残業規制だと⾔って、現場の環境は⾒ずに時間を短縮することだけを強いていました。
しかし、現場がいまどういう状況か、何に困っているかということを理解して、そこに改善を⾏い効率化を図るとすればどうでしょう。困っていることが解決されるのと同時に働き⽅改⾰が推進され、⼀⽯⼆⿃の効果を⽣み出します。また、将来に備えた視点を持つことが⼤切です。例えばAI(⼈⼯知能)がわかりやすいかと思いますが、AIの導⼊によって将来なくなる仕事もあるでしょう。だからこそ、ここを効率化して付加価値の⼤きな仕事にシフトするというように、将来的な視点を持ち目的を共有した上で効率化を図ることが必要です。
⼈のマネジメントも同じで、介護が必要な従業員や⼩さな⼦供がいる従業員のために早帰りと早朝勤務を推奨する、そのためにチームワークで分業を進めるなど、全体を⼀様に⾒ないで、⼀つ⼀つ、⼀⼈⼀⼈の事情や状況を皆が理解して職場で助け合っていくということが⼤変重要だということです。また、将来を⽣き抜くために、⼀⼈ひとりが⾃律的にキャリア形成を考える組織風⼟の醸成も非常に重要です。
では、これからのミドルマネジャーは何をすべきかということを⼀緒に考えていきましょう。
従来のミドルマネジャーの機能はマネジャー主導の職場づくりに限られていたと思いますが、働き⽅改⾰の時代になると、そこにメンバー主導の職場づくりという新しい要素が⼊ってきます。部下の仕事と⽣活、両⽅を意識しながらマネジメントを進めていくということです。これはパラダイムシフトと⾔っても良いほど、ミドルマネジャーの機能が変化することを意味しています。

従来はマネジャーが主体となって、例えば「なぜ残業が増えるのか」と合理的に「分析」した結果から、関係者をつき動かしていくというやり⽅でしたが、これからは逆になります。マネジャーは関係者が主体的に動くようなきかっけづくりをするに注⼒します。つまり、「何のために残業を削減するのか、残業を削減してその結果どうしていくのか」という働き⽅改⾰の先にある姿をメンバーに問うのです。これは「分析」ではなく「総合」していく思考です。もちろん従来の機能がすべて否定されるわけではありません。企業や部署によっては従来のやり⽅が機能する場合もあります。しかし、うまくいかないこときにマネジャーが新しい考え⽅、視点を持っているかということが⼤事なんです。いままでのやり⽅にプラスして新しいやり⽅、関わり⽅をしていくことがミドルマネジャーには求められていくということです。
最後に国の働き⽅改⾰に対する動きですが、「働き⽅改⾰実⾏計画」(17.3.28発⾏)等を⾒据え、適宜状況キャッチアップしていく必要があります。特に「時間外労働の上限の考え⽅」や「同⼀労働同⼀賃⾦ガイドライン案」については⾃社が何を求められるのかロードマップを作りながら、⾃社に必要なあった取組、対策を進めていってください。