1. 法人のお客様TOP
  2. 特集・コラム
  3. 特集:連載コラム
  4. 「創造型ソリューション営業」の強化に向けた教育のあり⽅ 〜ワークショップセミナー を通じて個⼈⼒と組織⼒を向上させる〜【第1回】

「創造型ソリューション営業」の強化に向けた教育のあり⽅ 〜ワークショップセミナー を通じて個⼈⼒と組織⼒を向上させる〜【第1回】

第1回 「創造型ソリューション営業」が求められる背景と教育課題

第1回は、営業部門を取り巻く環境変化を踏まえた営業スタイルの転換と、営業教育に関わる課題についてお話します。

1.営業部門を取り巻く環境変化と営業スタイルの転換

国内市場においては、多くの企業が、⼈⼝減少による最終消費者市場の狭隘化という環境変化に直⾯しており、売上・利益の創出に苦戦しているのが実情です。
このような国内市場の成熟化は、各企業の営業戦略の転換を促しており、海外市場進出による市場やチャネルの開拓も⼀つの選択肢となっています。
また、国内市場における営業戦略では、従来の「プラスサム型の市場環境」を前提とした営業スタイルでは成果を上げることは困難な状況です。そこで、右肩上がりの成⻑を前提とするのではなく、「ゼロサム型の市場環境」を前提とした営業スタイルへの転換が必要不可⽋な条件となってきました。
すなわち、「需要が伸びない市場環境のなかで、いかにして需要を創造すべきか」という発想の転換が必要不可⽋であり、この発想に⽴脚した営業スタイルが「創造型ソリューション営業」です。国内市場における営業戦略では、このような営業スタイルへの転換が余儀なくされています。

2.「創造型ソリューション営業」の強化

そもそもソリューション営業は、「顧客の課題解決を重視した提案型営業」ですが、ソリューション営業には2つのスタイル(図1)があります。
その⼀つが、「対応型ソリューション営業」です。この営業スタイルは、顧客からの要求に対して受動的に提案を実施する営業です。したがって、課題解決の対象となる顧客の課題は、「顕在化している課題」となります。
もう⼀つのソリューション営業のスタイルは、「創造型ソリューション営業」です。これは、顧客からの引き合いを待たずに能動的に顧客に提案して、案件(引き合い)を発⽣させる営業スタイルです。
したがって、この営業スタイルでは、顧客の「潜在的な課題」がソリューション提案の対象となり、顧客の課題の想定に基づく「仮説提案型のソリューショ提案」を実践することになります。
たとえば、従来の⾃動⾞部品メーカーは、顧客企業の⾃動⾞メーカー側の開発案件を踏まえて、顧客企業の要求事項を満たす部品や技術の提案をしてきました。しかしながら、このような営業スタイルでは競合他社に対する優位性の維持が難しいため、安全性を追求した⾃動⾞の開発提案や、⾃動運転に関わる最新技術の提案など、⾃動⾞メーカーの商品開発の潜在的な課題に関わる「創造型ソリューション営業」を強化するようになりました。
また、最近では、地⽅銀⾏においても「創造型ソリューション営業」が強化されています。
国内の⼈⼝減少に伴う内需の縮⼩は、地⽅銀⾏の顧客となる中⼩企業の経営にも⼤きな影響を及ぼしており、健全経営を重視し借⼊⾦を圧縮する傾向が強くなってきています。その結果、地⽅銀⾏では、貸出⾦(融資案件)の伸び悩みが銀⾏経営に関わる⼤きな問題となり、「資⾦需要の創造(融資案件の創造)」が経営上の重点課題となってきました。
そこで、各⾏では、融資を必要とする顧客企業(顕在化した融資案件)を探す営業ではなく、顧客企業の「新規顧客の開拓」「販売チャネルの拡⼤」「新商品開発の提案」「技術提携先の紹介」など、「顧客のビジネス⽀援」に関わる営業活動を強化しています。
このような地⽅銀⾏の営業スタイルは、顧客の潜在的な経営課題に対するソリューション提案によって資⾦需要を創造し、融資案件を発⽣させる営業活動であり、まさしく「創造造型ソリューション営業」と⾔えるでしょう。

【図1】創造型ソリューション営業への転換
さて、このような「創造型ソリューション営業」を強化するためには、まず、営業担当者を「数字の帳尻合わせ」から脱⽪させ、「顧客に対して積極的に提案をしかけて需要を創造すること」の意義を⼗分に認識させることが重要です。
そして、このような動機づけを⼗分に⾏いながら、この営業スタイルに必要な知識や⼿法を習得する機会を提供し、「創造型ソリューション営業」の実践における「⾏動変容」を促すことができるような営業教育の実施が望まれます。
さらに、営業教育の学習効果を向上させるためには、次に⾔及する「営業教育に関わる課題」を踏まえて教育プログラムを検討することが求められます。

3.営業教育に関わる課題

(1)営業活動に⽀障をきたさない教育プログラム

どのような職種でも、通常業務を停滞させることなく教育を進めていくことが必要ですが、とりわけ営業担当者の⽅々は、顧客との関わりのなかで仕事をしており、「顧客を無視して営業教育を優先することは難しい」という状況に置かれています。
また、営業現場の営業マネジャーの本⾳としてよく⽿にする声は、「顧客対応を最優先にすべき営業担当者を研修に派遣することになると、研修期間中の営業活動については営業マネジャー⾃⾝か他の営業担当者がカバーしなければならない」という不満です。
したがって、「1回の研修を2⽇間~3⽇間で実施」という⼀般的な集合型研修の実施形態は、営業現場には受け⼊れがたい状況となっています。 そこで、営業現場では業務特性上、「1回当たり、半⽇から1⽇で完結する研修の実施形態」が理想であり、このような時間的な制約条件を踏まえながら、いかに学習効果を向上させることができるかということを、教育プログラムの企画に反映することが必要です。

(2)教育プログラムと営業活動との整合性(連動性)の重視

企業の営業⽅針として、「創造型ソリューション営業」が掲げられ、その⽅針に基づいた研修を実施し、営業担当者が学習内容を理解したとしても、営業現場に戻ると、学習内容が全く営業活動に活⽤されなかったという現実を⽿にします。
このような状態は、研修場⾯において「マーケティング」や「プレゼンテーション」など、上記の営業スタイルに活⽤すべき理論や⼿法のインプットに終始し、営業担当者⾃⾝の営業活動における活⽤場⾯や活⽤⽅法にブレイクダウンできていないことに起因しています。
つまり、「教育場⾯における学習内容」と「実際の営業活動」の間に⼤きなギャップがあると、このような結果に終わってしまいます。
したがって、営業教育プログラムの企画⽴案に際しては、実際の営業現場の現状を把握した上で、学習内容と実際の営業活動を連動させたプログラムの実施が有効です。たとえば、「ケース」を素材にした学習も⼀つの教育⼿法ですが、「ケース」による疑似体験だけではなく、営業担当者が担当している顧客や市場を素材にしながら理論や⼿法を学習して、実際のターゲット顧客(市場)に対する営業活動への活⽤に落とし込むようなプログラムです。

(3)営業マネジャーの教育に対する関⼼度の醸成

また、営業教育における学習内容が、実際の営業活動に活⽤できていない場合の原因として、営業マネジャーの営業教育に関する知識不⾜が考えられます。
たとえば、部下である営業担当者が、研修を受けてモチベーションが向上し、「創造型ソリューション営業」に対して積極的になり、重点顧客の潜在的な課題に関わる情報収集・分析や提案書作成に注⼒し始めたとします。このような場⾯において、営業マネジャーが、「デスクワークの時間があったら、営業目標達成に向けて、顧客の訪問頻度を増やすことを最優先に考えるべきだ」など
と、部下の⾏動変容を否定するような間違った指導をすれば、営業担当者のモチベーションは⼀気に低下します。
そこで、このような状況を回避すべく、営業教育の実施前に、営業教育の主催者が⼗分に営業マネジャーと当該教育に関わる目的・目標・学習内容・進め⽅などを共有し、営業教育に対する営業マネジャーの関⼼を⾼め、正しい認識を持たせることが必要不可⽋です。
【図2】営業教育に関わる課題
第1回は、営業部門を取り巻く環境変化を踏まえた営業スタイルの転換と、営業教育に関わる課題についてお話しました。
次回の第2回では、「創造型ソリューション営業」を強化するための、営業教育の事例についてご紹介します。


(学校法⼈産業能率⼤学 経営管理研究所 主幹研究員 ⼭本 元 ⽒)