OJDマネジメントで成⻑を持続する職場をつくろう

学校法⼈産業能率⼤学 総合研究所経営管理研究所 研究員 ⽮部 則之
※所属・肩書きは掲載当時のものです。

OJDマネジメントとは何か

OJDマネジメントとは、職場における成果目標の達成と⼈材の開発とを統合するマネジメントの考え⽅です。この考え⽅には、重要な2つのキーワードが含まれています。

1つ目が「成果目標の達成」です。“成果目標”というと、実務家のマネジャーなら、上位者から割りつけられた単年度目標の達成、それも売り上げや利益といった財務的な数値が頭に浮かぶかもしれません。
しかし、職場マネジメントにおける成果とは、短年度数値を達成するだけのものではありません。“2・3年先を⾒た職場の成果”とは何かを問い、これを実現していくこともマネジメントの重要な機能です。
成⻑を持続する職場を創り出していくには、マネジャーが、現在の成果だけではなく、明⽇の成果について考えておくことが⼤切です。
そして、明⽇の成果をつくっていくには、新たな⼟壌を耕し、種を蒔いて育てていくことが必要になります。

OJDマネジメントの2つ目のキーワードは、「明⽇の成果の実現に必要な職場の⼒を創りだす」といった意味での未来志向の“⼈材の開発”です。

マネジャーが意識したい7つの要素

職場の目標達成と⼈材開発を決定づける最も重要な要素が、「管理構想」「リーダー⾏動」「しくみづくり」「キーパーソン」「メンバーの効⼒感」「集団の活性度」「集団の⾰新度」の7つです。
これをモデル化したものがOJD活性度診断モデル(次⾴の図)です。OJD活性度診断モデルでは、7つの要素が相互に関連した⼈間活動システムとして職場を捉えています。

マネジャーが、このモデルを活⽤することの利点は2つあります。

1つ目は、⾃職場の全体状況を客観的に把握できるという点です。
2つ目は、⽇頃からこの7つの要素を視野に収めておくことで、成果目標の達成と⼈材開発に向けたOJDマネジメントの実践ができるようになるということです。


※このOJD活性度診断モデルは、1995年以降、⾃動⾞メーカー、総合エレクトロニクスメーカー、電⼒会社、旧三公社、⾦融機関、鉄鋼メーカー等をはじめとする⺠間企業(約500社20000部門)、⾃治体(約100団体、1500部門)、公⽴学校(約700校)で実施されています。

OJDマネジメントの実践

将来構想づくり…職場をリ・デザイン(再設計)する

職場全体を成⻑させるOJDマネジメントの実践は、マネジャーが職場の将来構想を描くことがスタートになります。
そのためには、マネジャー⾃⾝が中期的な視点から職場の将来像を構想し、これにより職場に求⼼⼒をつくり出していくといった戦略的な考え⽅が必要になります。

ところが組織には、「計画のグレシャムの法則」が存在するといわれます。この法則は『定型的決定は戦略的決定を駆逐する』というものですが、このことは、私たち⽇常的な感覚でもよく理解できます。
たしかに、私たちの⽇常は、事態を本質的に⾰新するようなアイデアを練るよりも、さし迫った⽇々の仕事に追われがちです。

しかし、マネジャーがこうした状況に陥っていたのでは、やがてその職場は環境への適応⼒を失い、業績も低下していってしまいます。
職場を取り巻く環境の変化と職場の現状との適合性をチェックし、「職場マネジメントのあり⽅をリ・デザイン(再設計)する」という発想が将来構想づくりの本質です。

リーダー⾏動…将来構想実現へのリーダーシップの発揮

どうすればマネジャーが描いた将来構想を職場メンバーに浸透できるのか、どうすればメンバーのやる気を⾼めることができるのかは、マネジャーにとってもう⼀つの⼤きなテーマです。このテーマの実現に向けて、マネジャーは⾃らのリーダーシップを発揮していく必要があります。

将来構想を職場メンバーに浸透していくには、マネジャーがそれを作成した背景や意義、それを実現するための⽇々の努⼒がメンバーにとってどんな意味をもつのかについて、考えておく必要があります。
将来構想の実現に向けた新たな仕事経験は、メンバーの効⼒感(役割の拡⼤、仕事へのやりがい、結果への⾃信などを含む概念)を醸成していく上での源泉となるからです。

また、近年、職場におけるコーチングの重要性が叫ばれていますが、将来構想とコーチングとは、⾞の両輪の関係にあります。職場に将来構想がなければ、何のためのコーチングなのかの目的を⾒失ってします。
また、将来構想とコーチングとがリンクしていなければ、メンバーの新たなチャレンジを試みたり、主体性を引き出すこともおぼつかなくなってしまいます。
OJDマネジメントの実践におけるリーダーシップとは、メンバー集団に将来構想を浸透し、メンバーそれぞれのチャレンジ精神や主体性を⾼めるコーチングを実践していくことなのです。

しくみづくり…⼈が育つしくみづくり

職場のしくみづくりとは、マネジャーが、将来構想の実現に向けて、職場の分業と協働のあり⽅を再構築することをいいます。
ここでいう分業は、マネジャーが、個々のメンバーにどのように仕事をアサイメント(職務の拡⼤・拡充)していくかということとイコールです。
協働とは、個々にアサイメントした仕事を繋げること、つまり、部分最適に陥らないようにメンバー同⼠の相互連携のあり⽅について考えることを指しています。

また、将来構想の実現に向けた分業と協働のしくみは、“⼈が育つしくみ”にもしていく必要があります。
例えば、仕事のアサイメントを通じてメンバーをストレッチする(メンバーにひと⽪むけるような仕事経験を与える)ことや、相互連携を通じてメンバー同⼠が切磋琢磨するしくみをつくる(ひと⽪むけるための磨き合いの場を設定する)ことなどがこれにあたります。

以上のことから、OJDマネジメントの実践とは、仕事の成⻑、メンバーの成⻑、集団の成⻑を目指すものであり、職場全体を持続的に成⻑させていくマネジメント活動であるということができます。

OJDマネジメントを実践的に学ぶ

本学がご提供する「OJDマネジメント実践研修」は、OJD活性度診断モデルを活⽤した職場マネジャーのための組織開発研修です。
この研修では、まず、「⾃職場のOJD活性度診断(事前アンケートよる多⾯診断)」や「⾃職場を取り巻く環境状況」の分析に取り組んでいただきます。
次に、その現状分析の結果をもとに、職場における成果目標の達成と⼈材開発の統合し実践するための⽅法論を学習します。

成⻑を持続する職場づくりを牽引できる変⾰型マネジャーの育成をお⼿伝いいたします。

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