リーダーの4つの役割(1)【第4回 「第8の習慣(R)」~いま、求められるリーダーシップとは?】

第4回 リーダーの4つの役割 1.模範になる

今回は、『リーダーの4つの役割』のうち、まず「模範になる」についてご説明しましょう。

「模範になる」ことこそが、リーダーシップの真髄であり、中核をなすものです。
方向性を示し、ビジョンをメンバーと共有したいと思うならば、まずメンバーから信頼されるための信頼性(信頼に値する人格と能力)を持つことが必要ですし、エンパワーメントを推し進めるにも、お互いの信頼関係は必須の条件だからです。

模範になることによって、リーダーに求められる4つの役割のうち、他の3つの役割(方向性を示すこと、組織を整えること、エンパワーメントを進めること)のあり方が根本的に変わるのです。

「模範になる」ための行動(1) トリムタブになる

リーダーとして「模範になる」ための1つ目の行動は、「トリム・タブ」になることです。

トリム・タブとは、大きな船についている舵に、もうひとつ付いている小さな方向舵のことです。
小さな舵であるトリム・タブが直接船を動かすのではなく、まずこの小さな舵が大きな舵を動かし、そして大きな舵が船の進路を変えます。つまり、もともとは小さな動きであっても、やがては大きな力となって、大きなものごとを動かすことができるという意味を比喩的に表現したものです。
トリム・タブの働きをするリーダーは、前向きで効果的な選択を行い、一貫した率先力を発揮して、役職やポジション、地位に関係なく自分の影響力を広めることができます。

トリム・タブになることができるリーダーには、ある特徴があります。
それは自分が影響を与えることができることや、自分自身がコントロールできること(『7つの習慣』では、「影響の輪」の事柄と呼んでいます)に集中しているということです。

影響できる範囲(影響の輪)は広げることができます。その秘訣は、影響を及ぼすことができるギリギリの部分(影響の輪の外縁部分)、例えば、影響を与えられるかどうか分からないが、思い切って上司に新しい営業戦略を提案してみるなど、チャレンジングな事柄に対し、エネルギーを注ぎ込むことです。

そのような行動を選択することで、「流れを変える人」になることができるのです。
たとえ、あなたには手に負えないひどい上司がいて、職場環境は不快かつ不公正だったとしても、少しずつ上司に影響を与えて良い方へ変えるとか、上司の欠点から距離を置いてマイナス要素に染まったりすることを避けるなど、行動の選択の自由を賢明に生かせば、あなたは少しずつ状況を変えていくことができるはずです。

「模範になる」ための行動(2) 信頼を築く

「模範になる」ための2つ目の行動は、「信頼を築く」です。

信頼とは、個人も組織も、信頼する価値があると感じた結果、生まれるものです。自分から信頼を寄せれば、相手からも信頼が得られます。人は信頼することによって信頼を得る資格が与えられます。

信頼を得るには「人格」「能力」の両方が必要です。

人格
「誠実」であることはもちろん、相手を思いやる優しさと責任を果たすことを求める勇気を併せ持つ「成熟」や、周囲に対して奉仕や相互益の精神を持つことを意味する「豊かさマインド」が求められる。



能力
特定の作業を成し遂げる上で必要となるスキルや知識、業務上必要な専門知識である「技術的能力」、業務を遂行するための単なる手段や戦術だけではなく、総合的に全体像を把握し大きな枠組みの中で戦略を組み立ててビジョンを描く力である「概念的知識」、組織や顧客(市場)と協力し、相乗効果を発揮する力である「相互依存」の3つの側面がある。



信頼性を得るには、この中でひとつでも突出したものを持てばいいということではありません。技術的能力や概念的知識を高いレベルで持っているとしても、誠実さを欠く人物が信頼されるはずはありませんし、逆に、誠実で豊かさマインドを持つ人物でも能力面で劣っていれば、仕事のパートナーとして信頼されること もないでしょう。

このように、リーダーとして信頼性を確立するには、人格面と能力面の双方において、高いレベルを維持することが求められているのです。

「模範になる」ための行動(3) 第3の案を探す

「模範になる」ための3つ目の行動は、「第3の案を探す」です。 リーダーとして、より良い解決策を導くためは、私の案でなければ、あなたの案でもない、それまでに提案されたどの案よりも優れている「第3の案」を導く必要があります。相乗効果を発揮する、つまり第3の案を導くためには、信頼という土台を築くこと、創造的であるよう努力し、よく耳を傾けること、探求すること、率直に述べること、そしてWin-Win を考えるパラダイムが不可欠です。 相手のことを深く理解するということは、違いを認めることであり、見え方によっては、意見の違いが大きくなってしまうこともあります。そこで必要なのが、相乗効果を発揮するために、お互いの違いを理解し、生かす、という姿勢です。

第3の案を探すステップ
ステップ1:お互いが提案したものよりもさらに良い解決策を探したいと心から思う
ステップ2:相手の主張の趣旨を、発言した本人が納得いくまで正しく説明しない限り、自分は発言できない、という原則を守りながら対話を行う

最も重要なのは、この2つのステップの原則を双方が納得すること。

いずれにしろ、リーダーとして行うべきことは、常にこの「第3の案」が生み出されるような、相互補完的なチームを築き上げることです。相互補完的チームとは、お互いが持つ長所が、お互いの短所を補完し合い、より良い案を常に求めるマインドを持ったチームのことです。

「模範になる」には、リーダーが模範になることで、チーム内すべてのメンバーが、お互い模範になり合うことを目指すという側面もあります。「模範になる」ということをチーム全体によって実現するのです。各個人の長所を土台にしてお互いの弱点を補える形でチームを編成すれば、真に力のある組織ができあがります。



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