日本の知財立国とは~音楽で外貨を稼いでこられるか~(4)

日本の知財立国とは~音楽で外貨を稼いでこられるか~(4)

前回お伝えした、内閣府の知的財産戦略本部は毎年、知的財産推進計画という白書を発行しています。私も白書制作に参画をし始めた2010年版には、我が国が持つ大きな潜在能力、コンテンツのクオリティの高さなどを活用し、海外市場での競争力を高め、国内市場の活性化につなぐために、産業界、大学、政府が一丸となって日本復活を目指そう、と高らかに謳われています。

知的財産とは、その中でも特許のような工業的な財産ではなく、著作権のような文化芸術系の財産のことを指しますが、この知的財産による国造りには(確証はありませんが)下敷きになる前例がありました。
それは、1994年にイギリスの首相になったブレア氏が導入した『クール・ブリタニア』と呼ばれる戦略です。ブレア首相は、映画、音楽、デザイン、ファッションなど13分野からなる『個人のクリエイティビティや才能に起源を持ち、知的財産の創造・活用を通じて富を創出する産業』をクリエイティブ・クラスターとして取りまとめ、その分野の積極的な輸出を国を挙げてサポートしました。この戦略は大成功し、2009年にはイギリスの輸出総量の5%を占める産業となります。が、本当の評価は別のところにありました。
董事のイギリスは退廃的なイメージがついており、何もカッコいいものがないという国際的な評価が浸透していました。しかし、クリエイティブ・クラスターが世界で展開されることで、イギリスは面白いものを創るカッコいい国、というイメージを形成することができました。これこをが文化産業の持つ力です。

この成功を見て、当時の小泉首相は、日本も知財(文化)立国を目指そうと考えたのだと思います。

そして、小泉首相よりも一足先に同じことを考え、実行した人がいます。1998年に韓国の大統領に就任した金大中(キム・デジュン)氏です。金大統領は就任早々『文化大統領宣言』をし、映画、音楽、TVドラマを海外に発信していくことを明言します。その後の成功は皆さんもご存知のとおり、翌1999年には映画『シュリ』がアジアでスマッシュヒットし、2003年にはTVドラマ『冬のソナタ』が大ブレーク、そしてその後に韓国音楽のKポップが日本をはじめ世界でも席巻します。

日本の知的財産立国は、残念ながらその後15年を経過しても特筆するような成果は上がっていませんが、オールジャパンでの努力は続いています。次回はその努力の辺りをお伝えします。