【企業事例】コニカミノルタ株式会社 様 社員の健康が会社を変える! 事業の持続的成⻑に"効く"「健康経営」の推進

社員の健康が会社を変える!
事業の持続的成⻑に“効く”「健康経営」の推進

社員のフィジカル・メンタル両⾯における健康について、企業の経営問題や社会問題として取り上げられる場⾯が増えてきました。社員が健康を損なうと、組織全体の業績や⽣産性にマイナスの影響を与えるとともに、社会からも厳しい評価を受けてしまう傾向にあります。

2016年8⽉29⽇に⾏われたSANNOフォーラム「社員の健康が会社を変える!事業の持続的成⻑に“効く”「健康経営」の推進」では、2年連続で「健康経営銘柄」に選定されましたコニカミノルタ株式会社の⼈事部健康管理グループリーダー(部⻑) 兼 コニカミノルタ健康保険組合常務理事の鈴⽥朗⽒をお招きし、同社の健康経営の取り組みについてお話しいただきました。

コニカミノルタ株式会社 鈴⽥ 朗 ⽒ - SANNO通信研修フォーラム 2016 にて-

持続的成⻑を成し遂げるための「エンパワーメント経営」

⼤変厳しい経営環境が続いていますが、企業が存続するためには、持続的成⻑を成し遂げることは必要不可⽋だと思います。そしてそのためには、お客様や社会全体が持つ課題の解決に取り組まなければなりません。

私たちは、これらの取り組みのベースとなるものが「人財力」であると考え、⼈財を最⼤限活⽤できる組織風⼟を目指した「エンパワーメント経営」を進めています。

コニカミノルタの「エンパワーメント経営」

現在、このような会社を目指すために、「健康経営」と「ワークスタイル変⾰」に積極的に取り組んでいます。

「健康経営」の考え⽅は以下の3つです。

○優れた戦略も実⾏するのは人であり、「人財力」が重要
○「人財力」のベースは健康(健康がすべての基盤)
○そのためには、「健康第⼀の風⼟醸成」が必要


従業員の健康維持・増進への取り組みはコストではなく、将来に向けての戦略的投資と位置づけ、従業員の健康を維持、増進させることが⽣産性の向上、しいては企業価値の向上につながるという信念をもって取り組んでいます。

また、今回の本論とは逸れますが、「ワークスタイル変⾰」についても少しだけ触れさせていただくと、テレワークや20時以降の在社原則禁⽌、会議の効率化など、いろいろな取り組みを⾏っています。

危機感が後押ししたコラボヘルス体制の構築

私たちが「健康経営」に取り組むようになった契機は、2008〜2011年にさまざまな健康⾯での課題が頻出していたことです。

会社の課題としては、メンタルヘルス不調による休務者の増加と、従業員の平均年齢が⾼い(男性45.1歳、⼥性43.2歳、全体44.4歳)ことによる⽣活習慣病やその予備軍の増加がありました。
メンタル不調者の休務者の⼈数については、2007年を100とした場合、2011年には133と右肩上がりで増加していました。
また、⽣活習慣病の有所⾒者の⽐率についても、国内の企業平均よりも⾼いものとなっていました。

加えて、健康保険組合の課題もありました。⾼齢者納付⾦・⽀援⾦の増加に加えて、従業員の⾼齢化に伴う医療費の増加もあり、財政がどんどん悪化していました。
⽀出削減策も功を奏せず、2011年の4⽉には保険料率を67‰(パーミル、千分率)から84‰へと、当時としては⼤幅に引き上げざるを得ない状況になってしまいました。(当時の健保組合の平均は74‰)

これらの課題に対し、当時は会社と健保組合が別々に取り組みを⾏っていましたが、思うように効果は上がらず、危機感が募っていきました。
そこで、従業員の健康度の向上という目標を実現するためには、会社と健保組合、2つのリソースを最⼤限に活⽤して、それぞれの強みを⽣かしていかないと解決できないという判断のもと、2012年度から会社と健保組合の⼀体運営(コラボヘルス)の取り組みが始まりました。

理念・体制・施策の3本柱で進める「健康経営」

2012年度から始まった「健康経営」のアクションについて、理念、体制、施策の3つに分けてご説明します。

【理念】
「コニカミノルタグループ健康宣⾔」

『いきいきと働くことができる職場(会社)を目指して』

コニカミノルタグループは、
「従業員の健康がすべての基盤」であるとの認識の下、
健康第⼀の風⼟醸成を通じて健全な経営を推進し、
豊かな社会の実現に貢献することを宣⾔します。
従業員ひとりひとりの⼼と⾝体の健康こそが財産であると認識し、
安全で快適な職場(会社)の実現を図ります。

代表執⾏役社⻑ ⼭名昌衛


「従業員の健康がすべての基盤」「健康第⼀の風土醸成」という2つの考え⽅に基づいて、会社の基本姿勢と従業員に求める意識⾏動を明⽂化した、「コニカミノルタグループ健康宣⾔」を制定しました。
書かれていることは当たり前のことですが、トップの名前で明⽂化して従業員に発信していくこと、我慢強く刷り込んでいくことが⼤切だと考えています。健康宣⾔は職場のポスターや社内WEBに掲載し、従業員が⾒られるようにしています。

[組織体制]
会社と健保組合が⼀体となり取り組む体制になりましたが、2012年度にはワンマネジメント化も⾏い、会社の健康組織⻑が、健保組合の常務理事を兼務するようにしました。
さらに2013年度からはワンマネジメントを実際の組織運営にも反映し、⼀体運営化を始めました。
健康診断の運営とそこから出てくるデータの分析、その結果抽出される課題とそれに紐付いた対策の実⾏は、会社と健保組合が⼀体となって⾏っています。

[施策]
健康宣⾔の理念の実現に向けて、健康中期計画「健康KM2016(2014-2016)」を策定し、「リスク者のミニマイズ化」と「『⾒える化』による健康度の向上(健康ムーブメント)」という2つの軸で目標値を定め、さまざまな取り組みを⾏っています。

●リスク者のミニマイズ化
リスク度合いに応じて、従業員をフィジカルでは4分類、メンタルでは2分類に分け、リスク度合いの⾼い従業員に対しては、産業保健スタッフによる徹底した個別指導を実施しています。


2016年度目標値


●「⾒える化」による健康度の向上(健康ムーブメント)
従業員の健康度を⽰す8つの指標(主に⽣活習慣に関わるもの)によって、事業部門や関係会社の⽴ち位置を⾒える化し、部門の事業部⻑や関係会社の社⻑に状況を把握いただいた上で、いろいろな施策に協⼒していただいています。
2016年度目標値
この目標値は、国内主要企業の上位10%に⼊るために、どのくらい改善すればよいかと考えて出てきた数値です。ここまで改善することができれば、かなり良い⽣活習慣ができているということです。

「健康経営」を目指した取り組み事例

実際の取り組み事例をいくつかご紹介します。

[フィジカル対策]

リスク者のミニマイズ化において、⼤きな課題の1つが⼆次健診の受診です。定期健康診断時に要受診判定となった従業員のうち、2014年度は73%しか⼆次検診を受診していませんでした。そこで、以下のような対策を実施しました。

まずはSTEP1として、再受診の必要性や健診項目ごとの目的などを要受診者に通知しました。具体的には、紹介状を書く目的や再検査、精密検査の⼿順、あるいは、便潜⾎検査で陽性だった場合にはどんなリスクがあるか、などを説明したリーフレットを添付する取り組みを⾏いました。

STEP2では、受診勧奨の実績をシステムで⼀元管理し、未受診者には産業医名でのイエローカード(受診勧奨書)と、レッドカード(受診勧告書)を発⾏するようにしました。看護職が年2回、受診勧奨を直接⾏っても受診しない⼈には、年度終わりに「いつまでには必ず受けなさい」という産業医名でのイエローカードを出し、それでも⾏かない場合には、最終のレッドカードを出す仕組みです。

この2段階の対策で、2015年度の受診率は83%に改善されました。しかし、まだ17%の⽅が残っていますので、今年度は追加の対策として、健康管理システムの機能を拡張し、将来疾病リスクの⾒える化も⾏っています。

[メンタル対策]

メンタル対策としては2つの取り組みを⾏っています。

1つ目は2012年度から導⼊した復職準備勤務制度です。
2011年度まではメンタル⾯での⻑期休務者に対して、フル勤務ではなく短時間勤務での復職を認めていましたが、完全に回復していないことが原因での再休務が多数発⽣していました。
そこで、復職準備勤務制度を導⼊し、最⼤3か⽉のリハビリ勤務期間を設け、この期間中に、⼈事や産業医、上⻑とのミーティングを⾏い、最終的に復職できる状態になったことを確認し、それで初めて復職する、というものです。
また、制度導⼊とあわせて、復職先の上⻑あるいは同僚向けに、復職してくる従業員に接する場合の留意点をまとめたガイドブックを配布しました。

2つ目はストレスチェックです。
当社ではストレスチェックが義務化される前から年2回実施していたのですが、2012年からは「こころの健康づくりキャンペーン」として、全従業員に対してメールでの社内Web上での受診も呼びかけるようにしました。また、ストレス度の⾼い社員には、社外のカウンセラー利⽤を促すフォローメールの配信も⾏いました。

さらに、2013年度からは職場単位での対策も⾏いました。職場ごとのストレス度を4段階に層別し、組織⻑にフィードバックしてマネジメントに役⽴ててもらうようにしました。最もストレス度の⾼いレベル4と分類される職場については、組織⻑や担当⼈事と連携し、我々も⼊りながら改善策を⽴案・実⾏しています。

[健康ムーブメント]

8つの指標に沿って、さまざまな取り組みを⾏っていますが、その中でも歩⾏と禁煙についてご紹介します。

歩⾏に関しては、歩け歩け運動やチーム対抗ウォークラリーなどを実施するとともに、歩数をポイント換算して、ポイントに応じてヘルスケア商品などと交換できるインセンティブをつける、などといった歩⾏促進を⾏っています。
このような取り組みの結果、歩け歩け運動の参加⼈数と平均歩数が伸び、直近では国内従業員約12,000名のうち34%が参加しています。

禁煙に関しては、定期健康診断の時に喫煙にチェックを⼊れた⼈には、禁煙に関するリーフレットをその場で配り、禁煙プログラムへの参加を呼びかけています。また、禁煙達成時に⽀給される報奨⾦の増額も⾏いました。
さらに禁煙セミナーを、喫煙率の⾼い販売会社や、世界禁煙デーに合わせて⼤規模事業所で開催しました。

「健康経営」の成果と課題認識

取り組み半ばで、成果が出ていない項目も多いのですが、産業保健スタッフが徹底的に指導してきましたので、ハイリスク者と就業制限対象者の数が、2012年度を100とすると現在は19となり、かなり減ってきました。
個々の特定保健指導対象者数も2011年度を100とすると67ぐらいまでに減っています。こちらも個別指導の成果が出たと思っています。メンタル不調での再休務者についても、4分の1ぐらいまでに減ってきたところです。

定性的な成果としては、「⾒える化」を通じて、⽴ち位置を事業部⻑や部門⻑に伝えてきましたので、この層の意識はかなり変わってきたと思います。それから、健康経営銘柄にも第1回、第2回と選んでいただいたので、社内でのPRも⾏い、意識向上もできたと思います。

⼀⽅で、⼀般の従業員の中には健康意識が低い⼈はまだまだ⼤勢います。産業医による講演会なども、出席⼈数は多いのですが、ほとんどが元々健康意識の⾼い⼈たちです。低い⼈たちのヘルスリテラシーをいかに上げていくか、健康にあまり関⼼がない人たちをどう巻き込んで⾃⽴的な⽣活習慣の改善につなげていけるかが、今後の重要な課題です。