企業の「戦略的」CSR その1

前回、消費者市民社会、つまり「消費者が主役となって選択・行動できる社会」が顕在化しているイギリスの事例を、倫理的消費(エシカル消費)の現状から紹介しました。

企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)は、企業による自発的な取り組みを超えて、企業と市民社会とが協働してつくり上げるものという意識が根付いているように思えます。企業はCSRを通して、潜在しているリスクへの対処だけではなく、新たな事業機会をつかむこともできるのです。

イギリスでは、『エシカル・コンシューマー』という雑誌が出版されているのですが、企画の中で、「エシカル」の視点から企業格付けシステム(rating system)を提供しています。

このシステムは、「環境(Environment)」、「動物(Animals)」、「人権(People)」、「政治(Politics)」、そして「持続可能性(Sustainability)」の5つの主要カテゴリーとそのサブ・カテゴリーから構成されています。「環境」「動物」「人権」「政治」については、『エシカル・コンシューマー』に寄せられるマイナス面の評価で、反対に、「持続可能性」については、企業のプラス面を評価しています。
この格付けの結果は20点満点の「Ethiscore」としてまとめられ、消費者が製品・サービスを購入するときの参考情報として「ベスト・バイ(best buy)」を定めています。
『エシカル・コンシューマー』では、1989年からこれらの情報を収集しており、現在では3万社以上の情報を保有していると言われています。
2014年、エシカル・コンシューマー誌では、発刊25周年を記念して読者が選ぶ最もエシカルな企業トップ10を発表しました。
その中には、ファッション ブランドのピープル・ツリー(People Tree)、ハンドメイドコスメティックのラッシュ(LUSH)など日本でも馴染のある企業が含まれています。
その他には、スーパーマーケットや銀行など を展開するイギリス最大の協同組合であるコーペラティブ・グループ(Co-operative Group)、従業員所有企業としての特徴を持つ百貨店ジョン・ルイス(John Lewis)などが名を連ねています。
次の表は、エシカル・コンシューマーの企業格付け項目の一覧です。
何が「エシカル」に該当するのかは、それぞれの国の政治、経済、社会あるいは文化的な背景によって左右される面がありますが、長い期間をかけて培われたイギリスにおける「エシカル」の概念は、グローバル化した企業が参考にすべきひとつの方向性を示しているのではないでしょうか。