英語を話せるようになりたい人のための処方箋【第4回】

英語を話せるようになりたい人のためのTOEICスコア別 処方箋(3)
TOEIC上級者 TOEICスコア800~900点台

このレベルでは英語の表現力に大きな差が出てきます。
同じTOEICのスコアでも、かなり自由に流暢な英語で表現できる人とほとんど英語での表現できない人がいます。
今問題になっているのは後者です。TOEIC対策ばかりをし、スコアを上げたものの、実際にアウトプットできない(話せない)人が増えているのです。これはひとえに、それまでの学習段階で、アウトプットの練習をしてこなかったからです。
そのため、いざ話そうとなると基本的な文法を間違えている人が多いようです。学習者なので、間違えることがいけない訳ではありませんが、TOEICのスコアとの乖離が大きい場合があります。
基本的な文の構造がつくれないほか、三単現のs、助動詞の後ろは動詞の原形、基本的な代名詞(とくに再帰代名詞)、現在完了、不定詞、動名詞、関係詞や仮定法を使った表現などをまともに使えない場合もあります。そのような人は、TOEICスコアが比較的高くても、Part 3やPart 4のディクテーションと音読から始めてください。

一方、このレベルの学習者は、英文も長く書け、ある程度話もできることから、自分の英語が上手だと錯覚している人がいます。しかし、上記のようにきちんとした文の構造が使えるレベルに至っていない人は、難しい内容を伝えたいときほど英語も一文一文が長くなりがちです。
やたら関係詞や接続詞でつなげ、その結果、主語と述語がわからない文になってしまうのです。それでは、内容がまったく相手に伝わりません。まずは主述をはっきりさせ、何を伝えたいのかを明確にしてください。そのためには、論理的に考える癖をつけましょう。日本語でも同じです。
ポイントごとに論理的に順をたどって話す練習をしましょう。わかりにくい文で多いのは、受け身の文を多用し、Itを主語にしてしまう間違いです。受け身の文はMicrosoftのWordでは波線による警告が出ます。
日本人が好んで使う受動態は主語があいまいになるので、外国人には好まれません。
文法的に正しい受動態の文であっても、能動態にできる文はなるべく人を主語にしてすっきりさせましょう。また、動詞の用法の確認をしましょう。その動詞でどの文型が使えるのか、自動詞の場合は必要な前置詞は何か、不確かな場合は必ず辞書で確認する癖をつけてください。

このレベルの場合、英語力をより向上させるためには、正しい英語の大量インプットが必要です。特に業務で日常的に英語を使っていない場合は、英語環境を自分でつくる必要があります。
携帯電話やスマホ、PCの設定を英語表示にして、目に触れるもののほとんどを英語にしましょう。Facebookでは英語のメディアニュースページ(例えば、ABC News、BBC、Time、Newsweek等)にいいね!(Like!)をし、英語の情報が自然と入ってくるようにしましょう。
Twitterもご自分が発信しなくても、英語の情報をフォローするといいでしょう。そうしたSNS(Social Networking Service)をやっていない人は、各英語ニュースメディアを自分でチェックしましょう。
本好きな人にはぜひ洋書です。洋書の新刊本は大きく持ち運びも大変ですし、満員電車には向かないということであれば、電子書籍の出番です。また耳からの英語として、まだaudiobooksを聞いたことがない人はぜひお試しください。audiobooksとは本の朗読です。以前はカセットやCDを購入する 必要がありましたが、今はネットでダウンロードできます。
iTunes storeでも一部扱っていますが、日本語のものが目に入ってきますので、直接www.audible.comへいちどアクセスをしてみてください。定期会員になると割引サービスがあります。おすすめは著者自身の録音です。
大統領、要職経験者、俳優など著名人の自伝が出ていますが、本人自身による録音が多く、値段以上の価値があります。 また小説も感情豊かなナレーションで思わず引き込まれるものが多いものです。評がありますので、チェックしながら購入してはいかがでしょうか。本(電子書籍)で文字を見ながら聞くというのもおすすめです。
アウトプットには英文日記です。日記といっても、このレベルでは、単に行動を羅列するだけではなく、ニュースやTV番組、映画、本あるいは仕事上の事柄などに対する自分の意見、考えをその理由とともに記すことです。
今後必要になるのは、TOEIC Speaking /Writing Testでも問われていますが、論理的にわかりやすい英文で話したり、書いたりすることです。そのためには日頃から物事に対する意見を理由とともに表現できるようにする努力が必要です。

4回にわたって英語を話せるようになりたい人のための処方箋を出してきましたが、いかがでしたでしょうか。私が皆さんに特にお伝えしたかったのは、話せるようになるためには、どのレベルでも基礎的な文法、語順を押さえた上で、日頃からのリスニングと音読が鍵を握っているということです。

外国語の上達に終わりはありません。
私自身も学習者です。皆さんと同様に一生続けていくつもりです。

(学校法人産業能率大学 経営学部 准教授 大橋 眞紀子)