英語を話せるようになりたい人のための処方箋 ・はじめに

Q.「英語を話せるようになるにはどうしたらいいですか。」
 「英会話学校へ通ったほうがいいですか。」
 「留学しないと話せるようにならないですか。」

英語初級者から上級者まで時折、聞かれる質問です。

結論から申し上げると、英会話学校へ通わなくても、留学しなくても英語は話せるようになります。

英語力を伸ばすのには日常の努力が欠かせません。英会話学校に週1回通って、その場限りの学習ではほとんど進歩しません。
練習の成果の確認にネイティブスピーカーと話す場として英会話学校を活用するのでなければ、まったく意味がないといえます。

私自身のことですが、幼少時から小学1年生までアメリカに滞在していましたが、それ以降は正式な留学をしていません。

さて、かなりの英語上級者でも、日常的に英語を使っていない場合、いざというときに英語が出てこないことは、しばしばあることです。

英語はスポーツやピアノの練習に似ています。スポーツに例えれば、どんなアスリートでも、試合当日、ウォームアップをせず、いきなり試合に臨むことはありません。
また、しばらく練習を休んでいた場合、元のベストの状態に戻るまでに時間がかかります。
ピアノも同じです。皆さんの中には小さい頃ピアノを習っていた人もいるでしょう。発表会まで一生懸命に練習した曲であっても、しばらくしたら弾けなくなり愕然とした経験がおありなのではないでしょうか。

英語も同じです。とっさに英語を話せるようになるためには、日頃からの練習が欠かせないのです。

先日、世界的に有名な某外国語学校の車内広告で、「早く英語を片付けたいと思って受講した」と19才の学生が言っているのを読み、目を疑いました。
大学の必修単位を早く取らねばと考えるのとまったく同じ発想です。
学生本人がそうした認識であるのはともかく、その発言を広告としてその外国語学校が採用したのにも驚きを隠せませんでした。
外国語は夏休みの計算ドリルのように早めに片付けたり、早く終わらせたりできるものではありません。大学の必修単位のように取ったらそれで卒業ということにもなりません。
TOEICで600や750など、その学生が履歴書に堂々と書けると思っているレベルに早々達したとしても、そこで英語の学習をすべてやめてしまえば、晴れて社会人になった頃には英語力はかなり下がっていることでしょう。

その間、まったく英語に触れなかった場合、ほとんど使えないレベルになってしまう恐れもあります。いや外国語だけでなく、母国語だって忘れます。
PCやスマホに慣れてしまっている読者の皆さんも漢字が書けなくなっている事実を目の当たりしたご経験があることでしょう。外国語ならなおさらです。
言語能力は真空パック保存ができません。英語力を維持し、向上させていくためには、それなりの努力をしなければならないのです。
冒頭にあげた「英語を話せるようになりたい」というのは、どのレベルの学習者にも共通している願望です。ただ「英語が話せない」という現象は端から見たら同じであっても、その人の英語レベルによって対処法は異なってきます。

このシリーズでは、さしあたって現在の業務では必要はないが、将来的には英語を使いこなしたいと願っているビジネスパーソンの皆さんのために、わかりやすい指標であるTOEICのスコア別に次回のコラムから3回にわたって処方箋を出します。
出された処方箋をどう扱うかはあなた次第です。

(学校法人産業能率大学 経営学部 准教授 大橋 眞紀子)