【事例紹介】パナソニック株式会社 「お客様第⼀」の経営理念実現に向けた 消費⽣活アドバイザー制度への取り組み

はじめに

消費⽣活アドバイザー制度とは、消費者の意向を企業経営や⾏政などへの提⾔に反映させ、消費者からの苦情相談などに対して、迅速かつ適切なアドバイスができる⼈材を養成する制度です。

今回は消費⽣活アドバイザー在籍数が企業の中で最も多い、414名(2014年現在)が勤務するパナソニック株式会社の取り組みを、CS本部 CS政策グループ お客様関連チームの沼宮内様にお話をうかがいます。
CS本部 CS政策グループ お客様関連チーム 沼宮内 睦 ⽒

  • 本編は2014年10⽉14⽇の学校法⼈産業能率⼤学主催「経営に活かす︕『消費⽣活アドバイザー制度』の取り組み」フォーラムにてご講演いただいた内容を編集したものです。

パナソニック株式会社 プロフィール

創 業 1918年(⼤正7年)3⽉7⽇
本 社 〒571-8501 ⼤阪府門真市⼤字門真1006番地
代表者 取締役社⻑ 津賀 ⼀宏
資本⾦ 2,587億円(2014年3⽉31⽇現在)
事業内容 部品から家庭⽤電⼦機器、電化製品、FA機器、情報通信機器、および住宅関連機器等に⾄るまでの⽣産、販売、サービスを⾏う総合エレクトロニクスメーカー
従業員数 (連結)271,789⼈(2014年3⽉31⽇現在)

取り組みの原点にある「経営理念」と「創業者の⾔葉」

当社の経営理念の綱領は「産業⼈タルノ本分ニ徹シ 社会⽣活ノ改善ト向上ヲ図リ世界⽂化ノ進展ニ寄与センコトヲ期ス」です。企業である以上、利益は⼤切ですが、事業活動の最終目的は社会の⽂化進展に寄与していくことである、と⽰されています。

また、昭和15年の創業者による「優良品製作総動員運動の提唱」には、⽣産部門、販売部門を問わず、すべての従業員が「お客様第⼀」の姿勢が必要であること、お客様満⾜のためには製品だけでなくサービスも重要であることが記されています。

消費⽣活アドバイザーは企業と消費者を結ぶ“かけ橋”と⾔われています。
経営理念と創業者の⾔葉は、まさに当社が消費⽣活アドバイザー制度へ取り組むにあたって、原点にある考え⽅になっています。

「お客様第⼀」の実現のために資格取得の推進をおこなう

「私どもが受験に積極的なのは資格取得のためばかりではありません。むしろ、資格を取るために勉強することの⽅に重きをおいています」。これは、資格取得の推進を始めた当時の責任者の⾔葉です。

消費⽣活アドバイザーの試験には、消費者問題の歴史から、⾏政知識や法律知識など、⼤変幅の広い勉強が必要です。勉強して知識をつけることによって、仕事に対する考え⽅や取り組み⽅が変わり、社内に消費者志向的な風⼟がつくられていきます。
これが推進当初から変わらない資格取得推進の目的で、経営理念である「お客様第⼀」の実現にもつながっていくと考えています。

この目的のもと、第2回の試験から資格取得の推進を始め、現在までの合格者数は累計で734名、在籍者数は414名となりました。
所属している部署としては、やはり消費者部門が多いのですが、技術開発研究、営業、品質関係、商品企画など、さまざまな部署の⼈が資格を取得しています。このように幅広い職種グループに消費⽣活アドバイザーが在籍している状況は、部門に関わらずお客様の声に⽿を傾けるという創業者の⾔葉を受け継げているものだと思います。

事務局と有資格者が協⼒して取り組む資格取得の推進

消費⽣活アドバイザー資格取得の推進は「パナソニックグループとして、社員の⾃主性を尊重しつつ、社内研修会を開催するなど資格取得の環境を提供する」という考え⽅のもと、1年間を通しておこなっています。

受験者については、私が所属しているCS本部⻑名で、全事業場⻑に受験者推薦のお願いをメールにて要請すると同時に、全社員に対してもイントラネットを使いチャレンジを呼びかけています。

そうして集まった受験者に対して、お客様関連チームが事務局となってさまざまなサポートをおこないます。

社内研修会は産業能率⼤学の通信研修をベースに構成し、3⽇間11科目の内容となっています。
講師は社内の消費⽣活アドバイザーがボランティアで担当し、研修資料も作成します。

個⼈の勉強についても、産業能率⼤学の通信研修の受講を推奨しています。事業場によっては組織が費⽤負担をしている場合もありますが、多くの事業場では通信研修は個⼈負担です。

その他にも、模擬試験や論⽂添削、試験直前の「直前チャレンジ通信」という復習のためのメール発信などの取り組みを、有取得者の協⼒を得ながら、年間計画に沿っておこなっています。

有資格者のレベルアップを図る取り組み

消費⽣活アドバイザー制度への取り組みは、資格取得を推進することだけではありません。
有資格者のレベルアップを図るための活動も、年間を通して実施しています。

決起⼤会・全社会議・シンポジウムの開催

社内の消費⽣活アドバイザーが100名を超えたことを機に、当時の社名を冠した「全松下消費⽣活アドバイザー決起⼤会」を1988年6⽉17⽇に開催しました。
(1)資格取得が仕事に役⽴っているか、(2)社内の消費者志向体制にどのように貢献しているか、(3)有資格者のネットワーク構築を目的に、講演と社内のアドバイザー9名による体験交流をおこないました。

2000年代に⼊ってからは、「全松下消費⽣活アドバイザー会議」を開催し、記念講演と3名の消費⽣活アドバイザーによる活動報告をおこないました。第1回は2003年5⽉21⽇、第2回を2004年6⽉2⽇と、それぞれ消費者⽉間に合わせて開催しました。

2007年度からは、より発展的な活動を目指して「消費者⽉間記念シンポジウム」を開催しています。従来の消費⽣活アドバイザー会議は、有資格者だけが出席できるものでしたが、「消費者⽉間記念シンポジウム」は全社事業場のCS部門責任者と消費⽣活アドバイザーを対象としています。

2014年度はこの記念シンポジウムを5⽉22⽇に「消費者の声をどう活かすか」というテーマのもと、弁護⼠の先⽣にご講演をお願いし開催しました。出席者は208名、うち消費⽣活アドバイザーが59名と、⼤変多くの⼈に勉強していただけたと思います。
この様⼦は、社内の中継システムを使い、⼤阪、東京、滋賀、福岡に中継しました。出席者からは、「消費⽣活アドバイザーのモチベーションアップにつながる」、「受験に対する意識が向上し、意欲が湧いた」といった声を聞くことができました。

イントラネット「消費⽣活アドバイザー」の活⽤

さまざまな情報を共有するために、グループのイントラネット内に「消費⽣活アドバイザー」というページを設けています。ここには、社内外のいろいろな消費者関連ニュースや、社内の有資格者の⾃主勉強会のお知らせなどを掲載しています。

また、受験をする⼈たち向けですが、「消費⽣活アドバイザー合格を目指して」というページも作成しています。社内研修会の各講師が作った資料や、国⺠⽣活センターなどのホームページへのリンク集、「合格者の声」として先輩受験者の勉強⽅法を掲載するなど、勉強しやすい環境づくりに努めています。

有資格者による⾃主勉強会

資格を取得しても職場で活かせていないと、意識やモチベーションが下がってしまう恐れがありますので、隔⽉で有資格者による⾃主勉強会を開催しています。

この⾃主勉強会は、商品知識共有のために有志でスタートしたことが始まりですが、2001年からはお客様関連チームが事務局となり、公式な形として開催しています。

今年度からは、社内の中継システムを利⽤して、メインの⼤阪会場と東京、福岡の中継を始めました。これまでに74回を開催し、延べ1,206名に参加いただいています。

新たなネットワークの構築

社内外問わず、消費⽣活アドバイザーのネットワークをもっと広げていければと考えています。勉強会の⼀環として、⼤阪市内のあるメーカー様を訪問し、お客様相談室の室⻑にお話を伺ったり、別のメーカー様のアドバイザーの⽅にご来社していただき、お話を頂戴したりしています。

また、個⼈レベルになりますが、NACS(公益社団法⼈ 消費⽣活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会)会員としても活動しています。

今後に向けて

社内の有資格者がさらに活躍していただくために3つの内容を考えています。

1つ目が、消費⽣活アドバイザー活動の“⾒える化”の推進です。距離が離れていてもスムーズに情報交換ができるよう、イントラネット内にもっと交流ができるようなシステムの導⼊を考えています。
加えて、以前の「消費⽣活アドバイザー会議」のように、「消費者⽉間シンポジウム」でも消費⽣活アドバイザーの活動報告などができたらと思っています。

2つ目は、⾃主勉強会のさらなるレベルアップです。
2014年9⽉に有資格者に対して⾃主勉強会に対するアンケートをとりましたので、この声を活かしていきたいと考えています。また、今は業務終了後に⾃主勉強会として開催していますが、活動の⼀部は、業務時間内の開催に向けて取り組んで参りたいと考えています。

3点目はネットワークです。社内のネットワークをもっと強固にすることはもちろんですが、このフォーラムのような場などを活⽤させていただいて、社外の消費⽣活アドバイザーの皆様との交流もしていきたいと思っています。

(2014年10⽉14⽇公開、所属・肩書きは公開当時)