【第4回】データで読み解く最近の新⼊社員

⽭盾する周囲の期待

最近の新⼈に対する現場管理者の評価では「指⽰待ちの傾向がある」「察して動くことが苦⼿」とよく聞く。産業能率⼤学が上場企業の課⻑に若⼿社員の傾向を尋ねた結果でも、マジメだが貪欲さや帰属意識に⽋け主体性が低いと認識されている。

貪欲さは前々回、帰属意識は前回に扱ったので、今回は主体性が低いと評される状況を整理したい。
これからはグローバル化とダイバーシティの時代だと⾔われる。
価値観が異なる⼈が同居し活性化につなげ、海外市場で企業の成⻑を実現することは必要だ。内需企業でも非正規雇⽤の拡⼤などで構成員の価値観は多様化している。

⽇本⼈は、価値観が同質化した環境での『あうんの呼吸』など、「ハイコンテキスト」のコミュニケーションが得意と⾔われているが、価値観が異なる環境では、細かな説明や⽂字を通じた「ローコンテキスト」の情報伝達が必要になる。このため社会や企業の総意としては、価値観が異なる⼈たちと円滑にコミュニケーションできる⼈材を求めていると考えられる。

⼀⽅、冒頭であげた最近の新⼈に対する評価の声は、「察して動く」振る舞いを期待するものである。
世の潮流としてはローコンテキストの情報伝達⼒の向上を期待しているにもかかわらず、現場の最前線ではハイコンテキストの情報伝達⼒を欲している。
相反する期待で彼らを拘束してしまっている状況が⽣まれていると考えられないか。新⼈という弱い⽴場上、どちらの期待も応えようとしてしまい、精神的に追い込まれやすい環境にあるのかもしれない。

ここでは、現場のコミュニケーションにおいてローコンテキストの情報伝達を徹底すべきだと主張したいのではない。察するコミュニケーションの⽅が双⽅の⼿間もかからないことは確かだ。まずは、新⼈たちを取り巻く「周囲」が、⽭盾する期待を寄せてしまっている側⾯を⾃覚する必要があるのではないか。

⼈を受け⼊れるためには、相⼿を知り、⾃分を知ることが前提だ。できる限り新⼈たちと⾃分たちを⼆元的に切り分けないように意識するだけでも、姿勢が異なってくるはずだ。

最近の若⼿社員を総じてみた傾向

産業能率⼤学「上場企業の課⻑に関する実態調査」(2011)

(本コラム担当:企画広報部 企画広報課 秋⼭ 和久)



※繊研新聞(繊研新聞社)での連載(2/26~3/19、毎週⽕曜⽇)を⼀部修正して掲載しています。
データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月05日(水)

【第1回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月05日(水)

【第2回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月13日(木)

【第3回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月19日(水)