【第3回】データで読み解く最近の新⼊社員

SNS時代の新⼈

よく『最近の若者』について、「仕事に取り組む意識が意欲的でない気がする」「仕事上の⼈間関係を深めようとしない」「急に飲みに誘うと断られ、飲みに⾏ってもスパッと帰ってしまう」といった声を聞く。今回はこの背景を考えてみたい。

『最近の若者』が育ってきた背景として情報環境の激変は⾒過ごせない。
携帯電話のネット通信「iモード」は99年に開始された。新⼈が5歳~9歳の頃だ。⽇本でのSNSの先駆け「mixi」の利⽤者数が1千万⼈を超えたのは07年で、新⼈たちが中学⽣から⾼校⽣のときである。

これに伴い新⼈たちを取り巻く『ネットワーク』が変化している。
モバイル端末やSNSの台頭にともない、起きた瞬間から寝る瞬間までスマートフォンを握る⼿の中で友⼈とつながり続けている。時間は有限なので、「⼀⼈」の時間は必然的に少なくなる。総務省調査では、「いつも友⼈や知⼈とつながっているという感覚が好き」が新⼈世代では顕著に⾼い。⼈とつながり続ける環境に育った世代の特徴と⾔えそうだ。

情報機器やSNSが浸透する以前(ほんの数年前)は、いったん社会にでると、⾃⾝を取り巻くネットワークはいったんリセットされる状態に近く、平⽇は仕事上の⼈間関係(会社の上下左右の関係と取引先との関係)が⾃分をほぼ占拠した。学友と平⽇に会うことは少なく、週末に集まる程度。就職して家を出ることも当たり前だったため、必然的に「組織の構成員」として過ごす時間が⼤半となり、時間の経過とともに仕事や組織との結びつきが強くなっていった。

⼀⽅、現在では、簡便なコミュニケーションツールにより、友⼈関係も⽇常⽣活の中で⼀定割合を占め続ける。中学・⾼校・⼤学の友⼈関係がリセットされずに蓄積かつ継続されながら、これに仕事上の⼈間関係が加わっていく。限られた『パイ』のなかで、組織の構成員としての時間・意識の『シェア』が下がっていくのは当然のことなのかもしれない。『上の世代』とは、育ってきた背景も、社会に出たときの状況も、⼤きく異なるのである。
総務省「⽇本⼈の情報⾏動調査」2010

(本コラム担当:企画広報部 企画広報課 秋⼭ 和久)



※繊研新聞(繊研新聞社)での連載(2/26~3/19、毎週⽕曜⽇)を⼀部修正して掲載しています。
データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月05日(水)

【第1回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月05日(水)

【第2回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月13日(木)

【第4回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月26日(水)