【第2回】データで読み解く最近の新⼊社員

最近の若者論を疑え

今春⼊社の新⼊社員は、ストレートに進学しているなら、⼤卒は90年度、短⼤・専門卒は92年度、⾼卒は94年度に⽣まれた。
バブル景気は91年2⽉頃に終わったとされるので、「右肩上がりの経済環境を肌で感じた」ことは⼀切ないといえる。90年代後半には⼤⼿証券会社が倒産、⽇本を代表する⾃動⾞メーカーが外資の傘下になり、⼈員削減の全盛期を迎える。新⼈たちは5歳~9歳の頃だ。地域によっては同級⽣の親族の誰かがリストラ対象になっていても不思議はない。2000年代に⼊ってもITバブルはすぐに崩壊、14歳〜18歳の多感な時期にはリーマンショックを経験した。その後は不況が続き、近年は政治も不安定な状態が⽇常だった。

失われた20年を⽣き続け、「⾃分もこうありたい」、「この⼈を目指したい」と思えるような目標を⾒出しづらい時代に育ってきた。

最近の新⼊社員や若者の評価では「夢を抱くことがない」「安定志向すぎる」「守りの姿勢が目⽴つ」などをよく聞く。たしかに、産業能率⼤学が毎年、新⼊社員研修の受講者を対象に実施している意識調査では、将来の進路の⽅向性を尋ねた質問で「独⽴志向」は10年前の半分に満たず、「管理職志向」が増え続けている。終⾝雇⽤を望む割合も⾼⽌まりし、最終目標の地位を尋ねても 「部⻑」が最も多い。⼀⾒すると『最近の若者論』を裏付けるもののようだ。

⾒⽅を変えると、現実を直視していることの表れでもあろう。
2~3年前まで世界有数だった家電メーカーでさえ経営に苦しむ環境において、そもそも、「ひとつの会社に⻑く勤めて管理職になり部⻑で終わる」というのは、夢のような会社⽣活かもしれない。 不安定な時代だからこそ安定を望む。上の世代からすると『意欲的でない』と感じるかもしれないが、厳しい現実を目の当たりにしてきた彼・彼⼥らにとっては、現実から目を背けることの⽅が虚 無感を抱くことなのではないか。

筆者も上の世代の⼀⼈としてこうした『夢のなさ』が良いとは必ずしも思わないが、少なくとも、⾃分たちの世代と最近の若者を安易に切り分けずに、背景を考えることは⼤切だろう。

管理職志向が2倍になる反⾯、独⽴志向は半減

(本コラム担当:企画広報部 企画広報課 秋⼭ 和久)



※繊研新聞(繊研新聞社)での連載(2/26~3/19、毎週⽕曜⽇)を⼀部修正して掲載しています。
データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月05日(水)

【第1回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月05日(水)

【第3回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月19日(水)

【第4回】データで読み解く最近の新⼊社員

公開日:2013年06月26日(水)